本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
クラウド、ソーシャルに続く潮流「ビッグデータ」。これからの時代に生き残る企業には必須知識といえよう。前回 に引き続き、ビッグデータビジネス・コンソーシアムの企画委員 池田敬二氏に伺った。
―――ビッグデータを活用し、効果を上げている企業の成功ポイントはどこだとお考えですか?
(池田)
ビッグデータというと分散処理を可能にするHadoop(ハドゥープ)やRDBの進化系としてのNoSQL(ノー・エスキューエル)といった技術的な側面に注目が集まりがちですが、会社として経営に活用するには全社的にビッグデータを活用していくのだという意識改革が徹底しているところが成果を上げていると思います。例えばHadoopは高速処理を可能にするので短時間でのトライ&エラーを可能にし、迅速な経営判断やコストの最適化に活かすことができます。
―――Hadoop、NoSQLについてもう少し詳しく教えていただけますか?
(池田)
Hadoopとは、膨大なデータを汎用品のサーバで高速に処理できるソフトウエア技術で、NoSQLとは、拡張性と柔軟性に優れたデータベースのことです。
これらにより、従来なら大きな企業しかなし得なかったビッグデータの蓄積、分析が、コストや時間を掛けることなくできるようになりました。
―――ありがとうございました。では最後に、今後の動向と、私たちが最低限知っておくべきこと、注意しておくべきことがありましたら、お願いいたします。
(池田)
ビッグデータをビジネスに活用しようとする潮流は世界的なものです。米国政府は、ビッグデータの利活用を目的とした研究開発に2億ドルを投じると発表しました。印刷業界と親和性が高い広告業界にもビッグデータの波が押し寄せていて、これまでの広告枠を売るという広告からビッグデータ時代に対応し、多様なメディアを横断してオーディエンスへの配信をリアルタイムに取引するRTB(Real Time Bidding)という手法やDSP(Demand-Side Platform)と呼ばれる配信先(人)を特定できるプラットフォームが新たな潮流になってきております。
日本では、この7月にビッグデータビジネス・コンソーシアムが設立されました。定期的に国・公共データの開示と、民間データも含めた多種多量なデータを利活用するための環境整備等、官民におけるビッグデータによる新たな市場の創出に向けた取り組みをフォーラムの形で提供しています。
10月10日に開催されたフォーラム「ビッグデータによる新たな市場の創出に向けて」では、印刷業界にとっても大変示唆に富む内容でした。特に印象的だったのは情報通信総合研究所の岸田重行氏が講師の「Wi-Fiで広がるビッグデータ」というセミナーです。
スマートフォンやタブレット端末の普及によりWi-Fiはモバイル通信の主役になる可能性を秘めていると紹介。さらにWi-Fiスポットは狭いエリアをカバーするために場所の特定、集客効果などにつなげることができるとし、まさにEコマースの分野で用いられる概念O2O(オンライン・トゥ・オフライン)を実現させ、さらにWi-Fiによってユーザーの行動が把握できるのでビッグデータビジネスへの活用が見込まれます。
オンラインからオフラインへの誘導が実現し、デジタルとアナログをつなぎ、融合する「クロスメディア」という視点からみて、印刷業界との関わりは深いと言えます。
これまで印刷物であるチラシやポスター、または雑誌が担ってきた機能をお互いに高め合うように進化させる意味でもビッグデータビジネスを制するものが印刷業界を制すると言っても過言ではないと考えております。
テクニカルな側面の研究をすることももちろん大切ですし、印刷業界においてもビッグデータをビジネスに活かすデータサイエンティストの人材育成も重要だと思います。既存の印刷業をビジネスとしてより成熟させていくためにもビッグデータへの取り組みは印刷業界にとっても必須だと確信しております。