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日本語組版「JIS X 4051」を理解するためのドキュメント(英語版・日本語版)が公開された
Web技術の標準化機関であるW3C(World Wide Webコンソーシアム) は、2009.6.4、「日本語組版処理の要件」ドキュメント(英語版、および日本語版)を公開した。
このドキュメントは、W3Cが近い将来、CSS、SVG、XSL-FOなどの技術に本格的な日本語組版機能を反映させるために記述されたものであり、「JIS X 4051」のほぼ全体をカバーしている。また、日本語を理解しない海外の専門家のために、図版が豊富に例示されており、判りやすい記述となっている。
Requirements of Japanese Text Layout
W3C Working Group Note 4 June 2009
日本語組版処理の要件(日本語版)
W3C 技術ノート 2009年6月4日
(※図版の例)
■W3Cが日本語組版の要件を検討した背景
W3CはWeb技術の標準化機関であり、XMLやHTMLなどWeb関連技術の標準化を進めている。
XMLには、CSS、SVG、XSL-FOなど、表示や印刷をコントロールするレイアウト関連規格がある。これらの規格でも日本語を扱うことは可能であるが、日本国内で発行されている書籍や新聞・雑誌を制作するレベルの日本語組版機能は実現していなかった。
実際、規格策定に関わっているメンバーのほとんどは、海外に在住し、「日本語」や「日本語組版」について理解していない。また、日本語組版に関する英文ドキュメントは公には存在していないのが実情である。
「JIS X 4051」は、「日本語文書の組版方法」を規定したJISの規格で、日本語で記述された文書である。しかし、この文書は難解な専門用語に溢れており、日本語組版の専門家でなければ、なかなか理解できないと言われているものであった。
そのため、W3Cメンバーであるジャストシステムやアンテナハウス、およびJAGATや日本国内の有志が、Web技術に正しい「日本語組版」を反映する活動をおこないたいとW3Cに提案を行った。
■W3C 日本語組版タスクフォース
2007.2、W3Cの正式な活動として「日本語組版タスクフォース(JLTF:Japanese Layout Taskforce)」が発足した。
このタスクフォースは、新しい規格を策定するのではなく、レイアウト規格に日本語組版機能を取り入れるための要件をまとめ、ドキュメント化することを目指している。このドキュメントは、「JIS X 4051」に相当する解説書であり、日本語版・英語版の両方を同時に作成する。日本語に堪能でない海外の方でも理解できるような解説書となることを想定している。
W3CのCSS、SVG、XSL-FOのグループメンバーもレビューやメーリングリスト等で参加しており、近い将来、これらの規格に「JIS X 4051」の内容が反映されるだろう。
■今後の展開
日本語組版タスクフォースのリーダーである小林龍生氏(ジャストシステム)は、今回のドキュメント公開と今後について、以下のようにコメントしている。
「このテクニカルノートは、CSS、SVG、XSL、I18Ncoreという、 W3C傘下の複数のワーキンググループの横断的なタスクフォースによって策定されました。
タスクフォースには、JIS X 4051(日本語組版規則)の実質的編者である小林敏氏と小野澤賢三氏、およびW3Cの組版・国際化の専門家であるRichard Ishida氏、Felix 佐々木氏、またマイクロソフト・アンテナハウス・モリサワなど日本語組版に関わる企業の専門家という、まさにドリームチームと言っても過言ではないメンバーが参加しました。
今後、このテクニカルノートの内容は、CSSやXSL-FO、SVGなど、W3Cのテキストの視覚的表現に関わるレコメンデーションに反映されていくことになります。
また、テキストレイアウトに関わる多くのシステムやアプリケーションの開発実装において、このテクニカルノートを参照することが不可欠になると思われます。
タスクフォースでは、引き続き、残された課題である図版の扱い、見出しや注の扱いなど、ページレイアウトに関わる問題についての章の作業に取り組みます。
このテクニカルノートをより完全なものに近づけるためにも、さまざまな機会にこのテクニカルノートをご参照いただき、小さなミスタイプや思わぬ誤謬などのご指摘も含め、多くのご意見やご質問をいただければ、これに勝る喜びはありません。」
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(JAGAT 千葉弘幸)