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論述試験については、提案書の体裁に関しては以前と比べ数段に良いものとなってきていることが感じ取れた。「タイトル」「はじめに」「問題点の提示」「ターゲット」「提案の核」「効果」「スケジュール」「費用」と殆どの方が、項目自体を埋めていた。
今回の試験問題の構成は、問1が「○○の問題点を3つ挙げよ」、問2は「○○の改善点を3つ挙げよ」というものであった。全5問のうち、問5では、提案書にまとめるという内容のものである。
提案の元となる「問題点の提示」でつまづいてしまい、後の提案内容がボヤけてしまい合格点に達しないケースが多く見受けられた。
問1の解答を見てみると、とりあえず問題と思われるものを3つ挙げているものの、「顧客の問題」のみを3つ挙げたり、「マーケティングの問題」、「プロモーションの問題」、「従業員教育の問題」と区切り、3つの問題点として挙げるなど、バランスを無視した解答のケースが見受けられた。「プロモーション」は、少なくとも「マーケティング」の一部であるのだから、「マーケティングの問題」の説明として取り上げるべき内容である。
試験の解答では、ここで解答として提示した「問題点」については、提案書にまとめた段階で、解決する提案が明確になされていなければならない。また、論述試験の与件には、「顧客の問題」、「自社の問題」、「競合の問題」といった3Cの問題だけでなく、「財務の視点」、「顧客の視点」、「業務プロセスの視点」、「学習と成長の視点」といったバランスト・スコアカードの視点といった様々な分析手法に対応できる問題が散りばめてある。少なくとも「顧客の問題」のみが与件企業の問題ではない。様々な角度で与件企業の問題点を洗い出し、その解決すべき優先順位を定め、問題点から的確な提案を導いていただきたい。
「改善」という言葉を国語辞典で調べると「物事をよい方に改めること。」とのことである。ここで問題となるのが「点」という言葉である。「点」という言葉の意味のひとつに、「特に取り上げるべきところ。」というものがある。すなわち、改善点とは「物事をよい方に改めるため取り上げるべきところ」という意味になる。
実際に問2の多くの解答は、改善点ではなく、「改善策」を記述してしまっていた。特に改善策が記述してあるからといって大きく減点する採点基準は設けていないが、ここで「策」を記述してしまうことで、問5の提案を記述する時間が減ってしまっていることはないだろうか。もし、これが原因で中途半端な提案書になってしまうのであれば、出来る限り問題文の言葉の意味を汲み取り答案の作成に取り組んでいただきたい。
解答に共通して見られた内容として、「新規顧客の獲得」が第一の目的になっているものが多かった。確かにビジネスを発展させていく上で、新規顧客の獲得は売上を高めていくためにも重要であるといえる。しかしながら、発展させていくためには、それを下支えしている「既存顧客」の存在を忘れてはいけない。与件文には明確に社長の思いとして、「今までの主要顧客の対応をしつつ、その家族同士が参加して交流を深め、良い人間関係が醸成される場に・・・」と記載してあった。一般的にも顧客生涯価値を考えていく上で、1:5の法則に示されるように、新規顧客を獲得するコストは既存顧客を維持するコストの5倍必要であると言われている。一般的な学識だけでなく、提案される側が期待しているものは何かを考えつつ、与件文を読んでいただければ、おのずと「既存顧客の満足度向上」が大切であると理解できる。期待はずれの提案は、明るい結果をもたらせてくれる可能性が極めて低いものである。与件に記載されている「言葉」を大切にしていただきたい。