本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
前回 は、ブランドの世界観をつくるものとしてトーン&マナーを紹介した。ブランド表現では、ブランド・アイデンティティの一貫性と明確性が求められる。トーン&マナーとは、ブランディングにおけるデザイン・クリエイティブの表現をルール化したものである。広告・販促物のデザイン表現の意味・理由付けの根拠となるとともに、関係者間での意志統一や共通認識を得ることができる。
ブランド・アイデンティティからデザイン・クリエイティブ表現に落とし込むには「クリエイティブジャンプ」と言われる発想の転換が必要で、経験や感覚によるところが大きい。ただし、これだけではデザイナーなど制作者自身が納得できても営業や関係者との意思統一やクライアントへの提案には不十分である。多少のクリエイティブ・ジャンプは必要としても、トーン&マナーの構築による理論づけが不可欠となる。
トーン&マナーでは、まずは以下の3つをデザイン・クリエイティブのルールとして設定することをお勧めする。
・キーフォント:広告・販促物のメインになるフォント(書体)
・キーカラー:メインになる色、または配色
・キービジュアル:メインになるイメージ写真やキャラクター
ある媒体では「このフォントでこの色」、別の媒体では「あのフォントであの色」などと担当者によって異なる表現をしてしまっては、ブランド・アイデンティティは分断されてしまう。まずはこれら3つの要素を関係者全員で共有することが第一歩である。
デザイン・クリエイティブ表現を考えるうえでは、ブランディングの戦略構築の様々な過程を踏まえた発想が求められる。例えば、『ターゲティング』では、ブランドのターゲットはどのようなクラスのライフスタイルなのか、どのようなタイプの趣味趣向・感覚を持っているか、これらを確認していく。ターゲットのクラスやタイプから、どのようなフォントやカラーが候補として出てくるのかが見えてくる。
(これは9月に開催の『ブランド価値をつくり表現するデザイン習得講座 』にてワークを交えながら解説をします)
また、ブランディングの戦略構築ではターゲットの心の中で自社がどのような位置を占めるかという『ポジショニング』という過程も紹介した。いくつかのフォントやカラー、ビジュアルといった候補から自社のポジショニングに合わせたものを採用していくことでデザイン・クリエイティブ表現がしやすくなっていくのである。
次回は、ターゲティングとポジショニング、そしてブランド・アイデンティティから具体的にどのようにトーンア&マナーを決定していくのかを見ていきたい。
連載第1回 印刷会社に求められる顧客ビジネス支援のブランディング
連載第2回 印刷会社がクライアントに提供すべきもの
連載第3回 印刷会社が取り組むべきブランド戦略構築の流れ
連載第4回 活動の軸になるブランド・アイデンティティとは
連載第5回 顧客の心の中で自社の占めるポジショニング
連載第6回 印刷会社ができるクライアントのブランド価値の表現
連載第7回 ブランドの価値は世界観とトーン&マナーでつくる
小澤 歩(おざわあゆむ)
有限会社グレイズ代表取締役 http://ozawaayumu.com/
(財)ブランド・マネージャー認定協会マスタートレーナー
http://www.brand-mgr.org/
東京都江東区出身。広告販促制作会社等でのグラフィックデザイナー、アートディレクターを経て、2002年に広告制作会社として
(有)グレイズを設立。様々な企業の広告販促物の企画デザイ
制作を手がけ、さらにブランディングやマーケティング、心理学等を踏まえたデザインの戦略を使いクライアント企業の成果を出す。現在は企画デザインだけで
なく、デザイン戦略を軸にした企業全体の課題解決、価値を高め差別化をするブランディング、販売促進のコンサルティングのサービスも提供。
また(財)ブランド・マネージャー認定協会トレーナーはじめ全国の企業・団体等で、デザイン表現の戦略やブランディング、マーケティングを伝える研修や講師としても活動。