デジタル販促の技術・サービスの導入意向が強く、リモートプルーフの満足度が高い
掲載日: 2014年07月29日
「JAGAT印刷産業経営動向調査」より新技術、サービスの導入状況、満足度、導入意向を紹介する。
JAGATが毎年、会員企業を対象に実施している「印刷産業経営動向調査」の2013年度の調査結果から新技術/サービス/システムの導入状況、今後の導入意向についての結果を紹介する。本調査回答企業の平均従業員規模は119名、1社当たりの平均売上高は26億円であり、中堅クラスの印刷会社が中心である。
【表1.現在導入率の高い順】
表1.現在導入率の高い順
表1は現在導入が多い順に並べたものである。第1位はカラーマネジメントシステムで73.7%、第2位がバリアブルデータ印刷の64.6%、第3位が高精細/高色域印刷で55.6%、以下電子出版/電子カタログが43.4%、メディアユニバーサルデザイン34.3%となっている。
上位5つの項目は昨年から変わりがない。ただし、バリアブルデータ印刷、高精細/高色域印刷、メディアユニバーサルデザインについては、昨年から導入率が約10ポイント増えている。
デジタルメディア関連については、電子販促(デジタルサイネージや電子ちらし、ARなど)が昨年から4.1%増、動画制作が同6.2%増と導入が進んでいる。一方で、電子出版/電子カタログの導入率は昨年から若干減少。スマホ/タブレット対応アプリ制作は微増となっている。
【表2.満足度の高い順】
表2.満足度の高い順
導入した結果の満足度は、A:大変満足、B:やや満足、C:普通、D:やや不満、E:非常に不満の5段階評価で回答してもらい、A:5点、B:2点、C:0点、D:-2点、E:-5点という重みづけで点数換算して満足度を数値化している(表2)。
導入率が10%を超えているもので、平均満足度が高いのはリモートプルーフ(1.56点)、カラーマネジメント(1.22点)、高精細/高色域印刷(0.96点)、バリアブルデータ印刷(0.86点)の順となっている。特筆すべきはリモートプルーフの満足度が昨年の-0.20点(前年順位は6位)から大幅に評価が高まっている点である。小ロット化がさらに進むなかで、営業効率の向上が大きな課題となっている。例えば、デジタル印刷で100部というような仕事で、営業担当が何度も校正のやり取りで通っていてはとても採算が合わない。Webを活用したリモート校正のシステムは決して新しいものではないが、お客様が画面で校正することの抵抗感が強く、なかなか普及しづらい傾向にあった。しかし、お客様に使ってもらうまでのハードルは高くとも、いったん定着すれば印刷会社の業務効率だけでなくお客様の業務効率まで改善することも可能で、お客様との関係性をより強化できる。競合他社へのスイッチングコストを高めるという意味でも有効で、それが満足度の高さにつながっていると思われる。
一方で、デジタルメディア関連は、電子販促の満足度が-0.10点、スマホ/タブレット対応アプリ制作が-0.74点、電子出版/電子カタログが-0.23点と昨年同様、導入はしたものの期待したような効果を得るまでには至っていないという状況である。
【表3.今後3年以内に導入予定の高い順】
表3.今後3年以内に導入予定の高い順
表3は今後3年以内に導入を予定しているとの回答が多い順に並べたものである。第1位は電子販促の14.1%となり、4年連続のトップだったWebtoPrintを上回った。デジタルメディアを活用した販促の技術、ノウハウを身につけ同業他社との差別化を図ろう、あるいは印刷メディアと組み合わせることで、より高い付加価値を得ようという意図が感じられる。リモートプルーフの導入意向も強い。お客様の校正担当者の世代交代が進み画面での作業に抵抗感がなくなりつつあることも追い風になるだろう。また、3Dプリントサービスの導入意向が急上昇していることも注目される。
(CS部 花房 賢)