リーダーは背中で語れ 望月印刷~新規開発事業チームの挑戦
掲載日: 2014年05月13日
一歩先に新規マーケット開発に取り組んだ印刷会社からリーダーの育成、組織・体制づくりなど“変わるための”歩みを聞いた。
前回 に引き続き、page2014セミナー(
新商品サービス開発に挑んだ会社の「困難」そして「変化! 」)から望月印刷 の事例を報告する。以下は代表取締役社長 望月 諭氏と、執行役員 井澤 博氏、製造部製販管理課係長 桝本 欽章氏のお話の要約である。
地域への想いを胸に新チーム発足
望月印刷 (本社 さいたま市)は、1950年創業の老舗の会社である。取引先の9割以上を地元顧客が占め、創業以来『地域への思い』が代々の経営者を始め、社員の一人ひとりに受け継がれている。2010年11月には埼玉の魅力を発信し、埼玉に住む家族を応援するコミュニティサイト「
絆アベニュー 」をオープンした。
ちょうどその頃、印刷の受注生産以外に柱となる事業が欲しいと願い、「新規開発事業チーム」が誕生した。このチームのミッションは「自分達で価格を決めて売れるもの、売れるビジネスモデルを作る」だ。
「印刷業界の価格競争、納期などから逃れるために自分達で価格を決め、人が欲しい、買いたいと思う商品を作りたい」(井澤氏)
最初の1年間は14名で始まった。社長自身がリーダーとなり、いろいろな部署を回って、候補者をピックアップした。その時に気をつけていたのは、なるべく部署が偏らないようにすることだという。
「後ろ向きな発言は禁止し、
何のためにやっているのかということを、メンバー皆で共有して、それを地道に続けることで、少しずつメンバーの意識、知識、取り組む姿勢が、変わっていった」(望月社長)
井澤氏と桝本氏は、2013年JAGATの「
新商品・新事業開発実践塾 」に参加した。
「この講座に参加したことが意識を変えるきっかけになった。
まず自分が矢面に立ち、動くことが大事だと思う」
お客様からの相談が増え、社員のモチベーションが上がる
新規開発事業チームで最初に完成した商品は「彩祝(さいわい)」である。埼玉県産手漉き和紙に県の花であるサクラソウと花の種を漉き込んだ御祝儀袋。埼玉県立羽生実業高等学校とのコラボレーション商品だ。周囲からの評判も高く、新聞3社に取り上げられた。
「チームの取り組みはまだ売り上げに貢献していない。しかし、取り組んでいることが少しでも世間に認められればチームの士気が上がる。小さい成功を積み重ねていくこと大切だと感じている」(井澤氏)
売り上げ直結ということよりも、
お客様からの相談が増えたり、社員のモチベーションが上がることこそ、プロジェクトチームにとっては1つの成果として大きい。
新規開発事業チームを立ち上げたことで、商品企画はもちろん、そこに至るまでの道筋での人材育成、そしてクライアントからの見方に変化が表れた。
「『うち、実はこういう商品を作ってるんですよ』と話すと『望月さんは印刷会社なのに面白いことやっている』『デザインもできるんだね』とブランディングの一つになっている」(望月社長)
「これを相談したら、あの会社なら応えてくれるかもしれない」とクライアントとの関係が変わりつつあるのがすごく大きな収穫だという。
最後に望月社長に今後のチームの方向性を伺った。
「この3年間は、メンバーの教育、意識の共有に重きを置いてきたが、これからは、新商品開発のスピードを上げること、販路を広げることに注力したい。新商品として大きく花は開かないかもしれないが、会社のブランディングに必ずつながってくるはずだ」
(2014年JAGAT info5月号より 教育コンサルティング部 小須田紀子)
●関連セミナー
2014年の「新商品・新事業開発実践塾」の詳細は下記をご覧ください。
http://www.jagat.jp/content/view/2971/380