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デジタルファーストへのスモールスタート、ゆるやかな移行を目指して、何をすべきか?
「Webファースト」とは、新聞や出版において誌面用に作成したコンテンツをWeb版に流用するのではなく、Web版を先行して制作・配信し、その後そのデータを流用して誌面制作する方式を指す。
現在では、新聞に限らず、カタログ、マニュアルなど多くの紙メディアに当てはまる考え方となった。さらに、雑誌・書籍のデジタル版(電子書籍)と印刷物を想定して、より広義に「デジタルファースト」と言われるようになっている。
少し前まで、新聞・雑誌、書籍、製品カタログ、マニュアルなど、ほとんどの分野で「印刷(プリント)ファースト」がごく普通であり、いかに効果的に印刷データを流用するかが重要とされてきた。
また、多くの場合、デジタルと印刷の二刀流(並行作業)をおこなっており、人的・時間的なコストの問題があったり、二重マスター(二重校正)となるなど、効率的でないこともあった。
しかし、世の中はスマートフォンやタブレットが急激に普及しており、ビジネス・シーンでも急速に普及してしまった。例えば、1,000人単位のセールスパーソンにiPadを配布し、電子カタログで営業活動すると言う話も、珍しくなくなりつつある。年に1回しか改訂しない印刷物のサイクルでは、対応できないと言える。
「Webファースト」や「デジタルファースト」の最も重要なポイントは、メディア公開やコンテンツ制作の順番ではなく、ワンソースマルチユースという考え方である。つまり、1つのコンテンツから公開するメディアに応じて加工することが、最も低コストで効率的だということである。
スマートフォンやタブレットを想定したデジタルコンテンツ制作と印刷物制作の両方を、各々の発信サイクルにしたがって効率的に制作するには、コンテンツ管理の仕組みを構築して、ワンソースマルチユースを実現しなければならない。
つまり、校正済みの最新コンテンツが常にデータベース上に保存され、Webや印刷物、スマートフォンやタブレットなどのデバイス向けに自動的な仕組みで発信することができる。このような最新情報を発信する仕組みがなければ、顧客のビジネス自体が成長できない。
印刷会社の使命である顧客のビジネス支援を実現するには、「Webファースト」や「デジタルファースト」への移行を支援し、推進しなければならないと言える。
デジタルファーストを実現するには、コンテンツをデータベース化すること、各メディア向けに自動生成(自動組版)して校正を最小限(不要)にする仕組みを構築しなければならない。
しかし、これは従来の制作ワークフローを根本的に変革することを要求するようなもので、時間的にも費用的にも大がかりなプロジェクトとならざるを得ない。大手企業がトップダウンの方針で取り組むならばともかく、社内の同意や予算を取り付けるのは容易ではないだろう。
アイディアや構想をまとめるだけでも相当な作業量であり、通常の業務の片手間に実現できるような話でも、外部のパートナー会社が簡単に提案できるようなものでもない。
大きなトラブルを発生せずに、順調に移行できる保証もない。
むしろ、スモールスタート、ゆるやかな移行を目指して、費用や手間を最小限にしてデジタルファーストに取り組むことが、現実的と言えるのではないか。
(JAGAT 研究調査部 千葉 弘幸)
page2014カンファレンスでは、「デジタルファースト時代のコンテンツ管理」をテーマに取り上げる。
最新の環境を揃え、最新技術を導入すると言った理想論を振りかざすのではなく、トラブルやリスクを回避し、現実的な解決のために何をすべきか、議論する場としたい。
■pageカンファレンス:
「デジタルファースト時代のコンテンツ管理」 2014年2月7日(金)13:00-15:00