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年功型の給与は労使双方にとって良い制度
年功型の給与は、若いうちは給与が低いが、経験と年齢が加算されることによって、給与が上がっていく仕組みです。この仕組みは生活のサイクルに合わせて設計されています。
一般的な生活のサイクルは、27~28歳で結婚し、30歳前半で子供が誕生し、子供の成長とともに生活が拡大していきます。年功型給与は、この生活の拡大に合わせて給与が増えていく仕組みです。
一方、会社側からすると若いうちは給与は低いが、経験を重ねることによって、給与が上がっていく仕組みですので、定着率も良くなるし、会社に対するロイヤリティも高まり、会社にとっても良い給与制度です。
このように、年功制度は労使双方にとって良い給与制度です。
こんな良い制度がなぜ崩れてきているか
年功制度が崩れてきている理由は、この制度が維持できなくなってきているからです。この制度を維持していくには、3つの条件があります。
第1の条件は、社員の年齢構成が若年層が多くて高年齢者層が少ないというピラミッド型であることです。しかし現在はほとんどの会社はピラミッド型の年齢構成になっていないと思います。
2つ目の条件は、会社が毎年右肩上がりに成長していくということです。会社が右肩上がりに成長していくので、給与も右肩上がりに上げていくことが可能なのです。しかし、バブルが弾けて以来、右肩上がりに成長しなくなってきています。
3つ目の条件は、経験と能力が連動するということです。経験を積めばそれだけ能力も伸びて、仕事も良くできるから、給与も上がるという考え方です。しかし近年は必ずしも経験と能力が連動しなくなってきています。最近は環境の変化が激しく、若い方が仕事が良くできるという例も多く見られるようになってきています。
このように3つの条件が満たされなくなってきたので、年功型の給与が崩れてきて、成果型の給与になってきているのです。
成果型給与とは、年功型と違う給与なのか
年功型給与と対比して言われているのが成果型給与です。しかし今各社で導入している成果型給与というのは、年功型と違う給与ではなく、年功型の良さも取り入れた給与制度です。成果型の給与のしくみは、入社して15~16年は従来の年功型の仕組みで、毎年定期昇給があって、管理職クラスになると成果主義で毎年の成績で給与を決めていく仕組みです。すなわち成果型給与は年功型の良さを残した給与と言えます。
菅野篤二(現代マネジメント研究会/株式会社エム・デー・シー 代表取締役)
菅野篤二
人事考課制度の設計、職能給制度の設計、目標管理制度の導入、管理職研修などのコンサルティング業務で活躍中。最近は、政府関係の金融機関の融資先である中小企業の賃金制度の設計コンサルタントとしても活躍。 厚生労働省の「中小企業賃金制度モデル等作成委員会」、「均衛処遇に配慮した賃金制度に関する調査研究委員会」委員を歴任。主な著書は『人事考課様式集』、『人事考課実例集』(日本法令)、『わかりやすい職能型業績給の導入と手順』(経営書院)、『超かんたん目標管理』(中経出版)、『目標管理実践マニュアル』、『成果型賃金導入マニュアル』(すばる舎リンケージ)などがある。 |
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2013年11月20日(木)
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