プリンティングコーディネータに求められるもの
掲載日: 2013年09月03日
デジタル化によりブラックボックス化した工程と広がるメディア領域に対し、仕事をスムーズに進行させ顧客満足を提供するには、幅広いスキルと視点を持ちコーディネーションを行う人材が求められる。
ブラックボックス化していく「印刷」
日本国内にMacintoshによるDTPが根付いてから、そろそろ20年近くになる。
この間の社会経済情勢は「失われた20年」と称されるように、かつての勢いを失い閉塞感を抜け出せないでいる。しかし印刷技術を取り巻く環境は20年前とは大きく変貌し、プリプレスのDTP化はもとより、印刷とクロスメディアの融合、その結果として携帯端末の普及による電子書籍への移行が始まっている。紙だけでないグラフィック・メディア台頭の時代となった。
しかしその一方で、印刷・製本加工はどう変化したのだろうか。CTPや両面印刷機の普及、加工機の高速化など、工程ごとの革新は続いているが、基本的には印刷・製本加工は紙にインキを着ける生産工程は変わらない。
近年の傾向を見ると、プリプレスがDTP化した結果、文字通りブラックボックス化しており、データの加工だけで下版まで持ち込まれる。データ作成者に印刷・製本加工の知識が無くとも、「とりあえず」入稿データは出来上がる。あとは印刷・製本加工現場で何とかしてもらえる、という流れができあがっている。これはプリプレスと印刷・製本加工という一貫した流れの中で作成されてきた印刷物が、今や大きなギャップを持った流れとなり、川下で多大なストレスとリカバリが強いられる結果となっている。
求められるコーディネーション
このように印刷物作成の工程だけを見ても、営業対応とプリプレス工程、そして印刷・製本加工工程という二つの断絶してしまった流れがある。この流れを取りまとめ整流化していかなければ、「良い印刷物」を作ることは難しい。さらに印刷物だけでなく関連メディアとのリンクを含めると、その範囲は広大なものとなり、この領域をそれぞれの工程間でカバーするというのは不可能だ。そこで求められるのは印刷の基礎的なセオリーを身に付け、さらに新技術や新領域にまで知識を広げたコーディネータが、この広いメディア領域(横軸)と印刷物などの作成工程(縦軸)をカバーし、整流化していくことだろう。
ブラックボックス化した流れは止められないと同時に、断絶化した工程間でお互いをサポートし合うことにも限度がある。このような横軸・縦軸の空間で随時仕事をコーディネーションし、顧客満足を追求する役割が「プリンティングコーディネータ」である。
コーディネーションの裾野を広げる
これまでのような「専門職」としてのコーディネータも必要だが、各工程内においてもこのような人材育成が求められている。なぜならば工程間の断絶を防ぎ整流化するためには、外部からのコーディネーションだけでなく、内部からのサポートも必要だからである。自分の所属している工程の専門知識を深めることだけではなく、幅広いスキルと視点を身に付けることでイノベーションを行いスピードを上げることが最も重要な課題だ。
そのためにはまず工程間サポートを目的として中堅社員に対するコーディネータ知識の付与と、工程内では入社3~5年ほどの「光る」人材をピックアップし養成することの両面で進めていくことが、自社内のコーディネーションの領域と裾野を広げる大きな推進力となると思われる。
「当社にはそんな人材はいない」という声は昔からあるが、「人がいない」のではなく「養成していない」という意味としか思えない。人は教育することで「人材」となる。人材の有無こそ自社の将来を見通す試金石ではないだろうか。
株式会社サンエー印刷 吉川昭二
(JAGAT専任講師)
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