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これからの企業経営は、新事業の開発等、成長戦略を描くことが重要である。しかし新事業開発は、多くの要因が絡み合いなかなか進まない。何が弊害になるのか、一歩先へ進むにはどうすべきなのか考察していきたい。
■これからの経営に新事業開発は重要か
今日の企業経営は、ニーズの多様化、商品(サービス)ライフサイクルの短縮化により、企業間の競争が激化し、ビジネスの入れ替わるスピードが速く、既存事業の維持だけでは企業経営が成り立たなくなっている。しかし、このような状況下であっても、小回りの利く中小企業にとっては、新しいニーズに対応できる新事業を構築できれば、大きなビジネスチャンスになる可能性がある。そうした背景からか、「中小企業白書2012」の統計によると、中小企業が経営の基盤強化に向けて注力する分野として“新商品・サービスの開発、新規事業の立上げ”を上位に掲げている。
印刷経営においても例外ではなく新事業の開発が重要だ。JAGATでは毎年、印刷会社の経営動向を調査しているが、本調査の中でこの不況下においても好業績を上げている印刷会社の特徴が浮かび上がった。
その特徴は製造業的な性質よりも、“情報業的・サービス業的な性質のビジネスを展開している”。つまり、印刷を核にしながらも、顧客のニーズに合わせその周辺サービスをも包括的に支援する“仕組み”を構築しているのである。勿論、印刷会社やその顧客に応じて、個々のビジネスの仕組みは違うが、共通しているのは顧客のニーズに応じた新規事業の開発を手掛けていることである。
■新事業開発を推進できる人材の確保が急務
多くの経営者はその重要性について理解しつつも、中々進まないのが現状である。では、なぜ進まないのだろうか。新事業開発をする上での問題点について考えていきたい。
日本政策金融公庫総合研究所が調査した「中小企業の新事業への取り組みに関する調査結果」によれば、新事業開発の主な問題点として以下を挙げている。
①質的な人材の確保が難しい
②製品・サービスの開発に必要な専門知識・ノウハウの不足
投資資金が無い等の理由ではなく、新事業を開発していくリソース(ノウハウ、人材等)が無いことが大きな弊害となり、着手できないでいる企業が多いのである。確かに、資金面では、新事業の計画が新規性、実現性等(勿論これだけでは無いが)、成長性が見込める内容であれば、金融機関からの融資、あるいは経営革新計画等の各種制度の認定による補助金の活用等が考えられる。しかし、新事業開発成功の鍵となる計画策定、事業の推進をできる人材がいなければ、スタート地点にも立てないのである。だからと言って諦めていては、開発ノウハウも社内で蓄積できず、人材も育たないため企業の成長戦略は描けず、縮小均衡に陥るので、外部採用あるいは社内人材の育成等、新事業開発ができる人材の確保は急務なのである。
■人材育成のポイント
外部採用による人材の手当も一つの手段だが、新事業開発力を自社の長期的な企業の競争優位の源泉にするには、人材育成の仕組みづくりは非常に重要である。ただし、新事業開発ができる人材育成にはいくつかのポイントがある。
①顧客視点を意識する
新事業開発はどうしても、自社の思い、自分の思いが先行しがちだが、まず意識すべきなのは顧客がどうしたいのか?何に困っているのかを考える必要がある
②マーケティング+開発のセオリーをセットで学習する
ビジネスとして成り立たせる必要がある。その為には最低限のマーケティングノウハウは必須である。成功するためには必ずセオリーが存在するが、小手先の開発手段だけでなく、実践で使えるマーケティングは最低限身につけるべきである。
③実践の場(機会)を与える
いくらノウハウを学習しても、実践で活用する場が無ければ身につかない。組織あるいは教育担当者としては、ある程度失敗することも許容した上で、挑戦するステージを与えるべきである。
以上、今回は「新事業はなぜ進まないのか?」について簡単ではあるが考察した。特に人材育成については上記以外にもポイントはあるが、実際にある印刷会社様の新事業開発の人材育成を支援した際、上記三点を意識しながら一年間教育を実施したところ、組織風土が急速に変化し、様々な事業開発が従業員から自発的に生まれていた。時間は多少かかるかもしれないが、あらためて人材育成の重要性について認識した次第である。
(JAGAT 教育コンサルティング部 塚本直樹)
JAGATでは印刷会社のための新事業開発ノウハウを実践的に習得していただくために、コンサルティングをご用意しております。何社か合同で実施するため、1社当たりのコンサルティング料を抑えております。ご興味のある方は下記をご覧ください。
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