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印刷業を取り巻く環境が厳しい中、後加工業(製本業)の現状と課題
JAGATでは、2ヶ月間に1回の割合で印刷関連の業種の方々との情報交換、共有を目的とした「印刷技術情報交換会」を開催している。今回は、「これからの製本業ついて」と称して芳野マシナリー(株)の鈴木取締役にお話をいただいたので、その内容を報告する。
■製本業界の厳しい現状
昔、製版はなくなっても印刷物(紙)は残る、更に印刷物はなくなっても後加工は残る、最終成果物は後加工がなければ製品(商品)にはならない、つまり後加工は絶対なくならない、とよく言われていた。しかし、現実は全く異なり、後加工の製本業も印刷関連業種と同様にかなり厳しい状況にある。
2000年前後(景気下降期)より、2012年現在の方がさらに厳しい状況にある。製本専業者は、現在7百数十社ある中で毎年100社程度減少している。印刷会社とは比べものならない数字である。
そうした中で製本業の生き残り策はどのようなものがあるのか。
■衰退する可能性のある企業
(1)経営基盤の脆弱
(2)不良債権
(3)1社集中の受注形態
(4)従業員人の入れ替わりが激しい
(5)設備のメンテが滞る
製本業に限らず印刷業を始めとする製造業の衰退の原因は、ほぼ同じように上記の項目が挙げられる。製本業は、印刷会社の状況よりさらに顕著である。いかに受注をいかに取ってくるか、もともと単価が安いとされる製本加工代が不要な価格競争に陥り、強いては資金繰りまでに影響を及ぼしかねかない状況におかれ、その悪循環が繰り返されている。
■製本業の生き残り策
(1)企業間の共同組合の発足
(2)優良企業によるM&A
(3)設備、規模縮小による安定化
(4)営業展開を強化し、受注の増大
(5)低価格による生産体制の構築
■さらに具体的に生き残る為には
(外部企業から魅力を持たせるためには)
(1)企業価値を持たせる(知名度)
(2)営業展開(受注の確保)
(3)品質の裏付け(他社との差別化)
(4)技術力の水準
共同組合を形成し、個々の仕事の種類別のやり取りを行なうことで受注の安定化をはかる動きがある。営業力の強化で、安定受注を確保していきたいともされている。
その中で製本業は個々の出版社との結びつきが強固であり、出版社との関係を保つことも仕事の安定受注につながる。
人件費の増大が大きな問題となっており、いかにパート、アルバイトで対応していくのか。また仕事量の増減に対応した人員をいかに確保できるか、その経験、能力の有無、人材の割り振りなど生産体制の対応が重要である。その結果がクライアントに安定した製品、品質を提供することにつながる。
資本力のある印刷会社に吸収されることも、ある意味で生き残り策の一つである。いずれにしても対外的に魅力のある会社と思わせることが重要である。
■製造メーカーに求められること
(1)失敗しない製本設備の提案
(2)企業間の紹介
(3)オペレータの斡旋
(4)製本業務の技術的提案 品質管理も付加価値のして面倒をみる
その会社に適した規模の設備投資を提案することが重要である。さらに導入後にいち早く立ち上げるために外注先あるいはオペレータの斡旋が多く求められる。
■設備による可能性
(1)モーションコントロール機能化
(2)JDF・CIP4 対応
(3)セッテイングレス化
(4)インクジェット機への対応
先のドルッパ2012の展示にもあるように、後加工の機器をインクジェット印刷機(デジタル印刷機)とどのような形でつなげるのか重要になる。インラインで印刷機の中に組み込むだけでなく、場合によっては全くのオフラインも考えられる。
デジタル印刷機との連動では、やはり全自動にできるかがポイントであり、JDFに基いて川上から川下まで全自動で流せる可能性がある。その中でマニュアルでの調整を排除した仕組みが求められ、モーションコントロールの機能化が重要となってくる。