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企業にとって中堅社員に求める役割は「後輩の育成」としているが、それを遂行しているのは、わずか2.9%にとどまっている。
20世紀末から21世紀初頭にかけては、バブル崩壊後の長期不況による教育投資や採用の抑制、また人員構成の不均衡のなか、組織の中核となるリーダーが育成できなかった状況が少なくない。とくに、現在中堅層(ここでの中堅層とは新入を過ぎ、役職前の社員をいう)の人材はいわゆる就職氷河期の世代と重なり、多くの企業で教育投資が抑制された時代でもあり実際に人材不足感もあるだろう。
具体的には、採用の抑制等で新入社員が入らないなど、各部門の人材供給に歪みが発生した。したがって、部下育成の機会が乏しい中堅社員が増加し、キャリア形成にも影響を及ぼしている。中堅社員は、個々に業務が専門化していく環境にあり、全体に共通した問題、課題が設定しづらい現状がある。上司、同僚、部下がいる環境のなか、実務リーダーという自信と意識が強くなり、よくも悪くも個性が発揮されつつあり、やる気や協調性の面でも個人差が大きくなる。また、個人的にも今後の方向性を見つけ出す機会が必要な時期でもあるだろう。
終身雇用や年功序列が崩れた現在、若手や中堅社員は、以前のような会社への忠誠心や帰属意識は薄れたが、自身の客観的価値を高めることには貪欲だ。また、中堅社員は現在のプレイングマネージャーである管理職の負担の重さを間近で見ていることもあり、自身が昇進してリーダーになることには必ずしも積極的ではない状況がある。
このような環境のなか、中堅社員教育は新人のような手をかけたカリキュラムや、管理職層のように組織力を重視する必要もないためOJTのみに依存しがちで重要視されないことも多い。その結果、全体として成長がとどまる傾向に陥るケースが多々見受けられる。しかし中堅社員は、組織の活性化や業績向上の実践部隊であり、組織の中核、次世代の組織を担う人材として貴重な存在であり、この層の活性化は業績向上に直結する。
また、将来の幹部候補として従来とは異なる資質も求められ、伸び悩む人材と伸びる人材の格差が顕著になる世代だ。この時期にいかに主体性を確立するか、キャリア形成にも大きな影響を与える。企業における中堅社員育成の現状や、役割の遂行状況等に関する調査(人事担当者対象)では、「中堅社員(入社5~10年、20代後半から30代前半の社員)」に求める役割は、「職場の後輩を計画的に指導・育成する(後輩の育成)」が72.5%で最多である。
一方、自社の中堅社員の役割の遂行状況の評価では、最も重要な役割と考えられている「後輩の育成を遂行している」はわずか2.9%、「やや遂行している」とあわせても約3割である((学)産業能率大学総合研究所調べ)。
この結果から、中堅社員に求める役割は「後輩の育成」であるが、それを遂行しているのは、わずか2.9%にとどまり後輩育成への期待と現実の取り組み状況には大きなギャップがある。
人材を発掘、育成する仕組みづくりには、社内教育体系の構築、すなわち新人から中堅、管理職、幹部、経営層へと連携する生涯のキャリアデザインが必要だ。前述のギャップを埋めるためにも、モチベーション向上のためにも、中堅社員のスキル、能力を磨き、企業全体の活性化に結びつけることが重要である。
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