本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
7/27講演(最新クロスメディア手法ARGの概説)内容から、AR心得的なものが示唆に富んでいたためご紹介する。
ARは、本やPCに貼り付ける付箋のように、モノや空間に情報を貼り付けて、その情報を読み取ることで付加価値を与える技術。現実世界を補う「何か」を追加することにより、目の前にある現実以上の情報を提示したり、その技術によって表される環境そのものを含めたものである。
ARは使うだけで夢が叶う魔法の道具ではない。
「ARを利用すれば人が集まるのではないか」
「ARを利用すれば売上が上がるのではないか」
「ARを利用すれば商品の認知が向上するのではないか」
これらを実現するためには、最適な手法(ARが効果を発揮するために必要な条件)を一つ一つ考えていく必要がある。
利用者がARを活用できるハードウェアを持っていることを確認する。アプリの企画だけ先行して、ターゲットをしっかり絞り込んでいなかった、ということだけは避けなければならない。
スマートフォンでARを利用するためにはアプリケーションが必要。せっかく素晴らしいARアプリを開発しても、そのサービスが認知されて、なおかつユーザの欲求を満たさなければダウンロードをしてもらうことは難しい。当然だが、ダウンロードされなければ何も始まらない。
AR機能を具体的に落とし込む前に、ARのメリットを理解してユーザへ提供したいサービスとマッチするかを考える。ARアプリ開発に限ったことではないが、「手段はサービスを運ぶためのツール」であり、「ARはサービスを運ぶためのツール」とも言い換えられる。サービスにとって大切なのはARなのではなく、ユーザに提供したいサービスは何か、その価値は何か、ということである。
ユーザにスマートフォンARを活用してもらうには、アプリをダウンロードしてもらう必要がある。そのためには、利用ユーザのARアプリを活用したいモチベーションを提供する必要がある。
ダウンロードしたいARアプリとは、以下のようなものである。
・拡張して表現されるコンテンツ(キャラクターや有名人の動画、3DCG)に興味がある。既に存在するファンに対してのアプローチ
・テキストとは異なる拡張表現で体験できる(教育、道案内など)。ニーズのある既存媒体(紙など)を利用する必要があるユーザへのアプローチ
・表現されるコンテンツのクオリティが非常に高い。リッチコンテンツを楽しみたいコアユーザへのアプローチ
・ARならではの楽しみ方に興味がある。既存コンテンツ(紙媒体)に付加価値をつけられた、新しい遊びに興味があるユーザへのアプローチ
・ARを利用することで、日常の問題が解決できる。
(「紙メディアを効果的に活用しクチコミを誘発する」レイ・フロンティア 田村建士氏のプレゼンより)
(文:JAGAT 研究調査部 木下智之)