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いつも土俵に中にいる努力を!でなければ「印刷は面白い、印刷会社に相談してみたい」などとは思わないであろう。【西部支社だより(20)】
最近、社内報事業を手がけている方にお会いする機会があった。私も長年社内報には興味がありいろいろ情報を収集していたが、民間企業の社内報については、数年前から時が止まったように記憶から消えていた。なぜなら印刷物としての社内報は終焉を迎えた、と思っていたからだ。ところが印刷物の社内報が少し復活しつつあるという。大きな潮流とはいえないようだが、電子メディアは低コストで発信が手軽ではあるのだが、手軽である分、受け取った人も「使い捨て」感覚で、いま一つ印象が希薄で情報を大切に扱ってもらえない傾向があることから、印刷物が復活した企業がいくつか見られるという。常時携帯して繰り返し確認するものや全社員で共有するような情報などは印刷メディアの方がより強く「伝えられる」のも事実。メディアは伝えることが基本で、伝わらないメディアでは役に立たない。印刷物の制作プロセスの大変さが「情報の重み」として伝わるとすればうれしいことである。
大阪の北摂地域(高槻・茨木・摂津・吹田・豊中・箕面・池田・川西)と阪神地区(宝塚・西宮・芦屋・東灘区)で60万部のフリーペーパーを発行するシティライフ編集長にお会いしたときの話である。「印刷物60万部の戸別配達の労力・コストは大変なものですね」と質問したところ、「本当に大変です。でもこの大変さが強みで、今ではだれも参入しなくなり、反って強みです」という返答にちょっと驚きました。インターネットだけで勝負をしようとしても、強みが出せず退場する企業が多く、「印刷+ネット+イベント+セミナー」といったバーチャルとリアルを組み合わせたクロスメディアの信頼度は高いようだ。なぜならネットだけでは「地元密着度」が希薄で信頼度を高めるのは難しいという。信頼はまさに「印刷物を作り、戸配する『汗の賜物』」であるかもしれない。
シティライフの編集方針はLOHAS(ロハス・Lifestyles Of Health And Sustainability) つまり、健康と持続可能性の生活・環境に関心の高い生活スタイルを提案するフリーペーパーであるだけに、地元との密着度と信頼度が生き残りの第一条件である。同社が発行する土地探しやリフォーム情報の「Lifeプラス」も地元工務店と読者を結ぶフリーマガジンとして人気がある。また、今年の夏で17回を迎えるロハスフェスタ(万博記念公園)を開催し、その動員や協賛は広がっている。3年前からは東京にも進出(練馬・光が丘公園)でも開催している。ロハスな考え方の読者、住民と企業、商品の出会いの場を演出している。これが大きな信頼を育んでいる。
この活動が認められて、大阪・箕面公園の活性化のための公園の管理運営委託を受託するなどシティライフとしての理念を具体的ビジネスとして拡大している。
印刷メディアは電子メディアに比べてスピードもコストも不利ではあるが、一人一人への「伝達の重み」や「地元密着や信頼」のメディアとしては、決して劣るものではなく、場合によって「不利なスピードやコスト」が強みや信頼に繋がることもある。前述の2例は嬉しい事例であるが、「だから印刷はなくならない」といった単純な過信は禁物で、そのことの理由や背景をよく研究し、提案や開発に活かす努力が必要である。
シティライフ誌が印刷メディアをコアとしながらも新しいメディアを積極的に取り入れているのは、読者の拡大・深化を続けるには電子メディアが必要であるからだ。しかし、クロスメディアを印刷側から後押しをする最新技術や橋渡し技術などの動向や印刷会社の新しいサービス情報などはほとんど伝わっていないことには落胆した。残念ながらこれでは「印刷は面白い、印刷会社に相談してみたい」などとは思わないであろう。
「質問があればお応えする」の姿勢では、自ら土俵の外に降りて待っているようなものである。なぜお客様は印刷を選択したか、重要なメディアであると評価してくれるのか、どのようなクロスメディア支援が必要なのかなどお客様目線で問い直せば、新しい視点の価値が見えてくるのではないだろか。
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