本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
今回のdrupa2012では、新技術がたくさん発表されている。その代表がnanographyであり、インキジェットのmemjetもそれに当たるだろう。ソリッドタイプのインキジェットも目についたし、ラテックスやソルベントインキも華やかだった。そしてインキジェットヘッドのシェアも大きく変化している。
ここ10年デジタル印刷は技術的なことよりもマーケティング的な話題に終始していたが、ここに来て今までの常識をもう一度整理し直す必要も出てきたようである。といっても長期的な設備投資をじっくりやっていては今の時代、ビジネスなど出来るわけはない。今まではメーカーに言われるとおり、スペックを信じざるを得なかったのだが、これからは「とりあえずあと4年はこれで頑張って、その先はこれに置き換えよう」というような明確な指針を自分の判断(要するにリスク)ですることが必要になってくる(に違いない)。
昔話ばかりするつもりはないのだが、印刷関連技術というのは、基礎的な素養として機械工学的の基礎知識(工場の設置環境、メンテナンス、総合精度)、インキ物性の基礎知識(ドットゲイン、乾燥、表面強度、温度の影響)、製紙工学の基礎知識(抄紙技術や繊維、湿度と伸び、コーティング剤)、水に関する基礎知識(PHや添加剤)、色彩学の基礎知識(CIE、光学、顔料)、電気工学の基礎知識、等々といった各学問の集大成が印刷技術ということが出来るので、ありとあらゆることを勉強したものだった。
それは印刷技術というのが基礎工学ではなく、いわゆる目的工学に分類されるために必要ということなのだったのだが、印刷技術に合う人というのは趣味人というか、アマチュア無線をやったり、カメラが趣味だったり、絵画をやったりと何にでも興味を持つ人が多かったような気がするし、それはあながち間違いではなかったような気がする。
昔の各印刷会社の技術部は独自の技術、特に機械テストのためには独自のチャートやテスト方法をノウハウとして持っているのが普通だった。機械のメンテナンスも独自に基準値を定め、メーカーの人と相談しつつも一定水準以上のものを実現していた。
しかし、デジタル印刷になってしまうとオフィスにあるコピー機のように、紙が詰まろうものなら大ブーイングで、機械に対する愛着や大切に使おうなどという思いやりなど消し飛んでいるようだった。
お父さん達(私もこの世代)が若かりし頃、自動車を買うのにカタログをたくさんもらってきて、自動車雑誌の比較欄を何種類も観ながら、何を買おうか検討したと思う。オーディオもそうだったはずである。それがデジタル家電になると基本的に値段や色やデザイン(変わり映えはしないが)だけで、適当に選択するようになってしまった。
デジタル印刷機などまさしくその部類に入り、「どれもこれも大差ないじゃない」ということで、「デジタル印刷のポイントはマーケティングにあり」と、技術論は二の次にされ、もっぱらビジネスモデル構築に話が費やされるということになっていた。確かにビジネスモデルは大事なのだが、このdrupa2012ではデジタル印刷の技術面が再度クローズアップされてきたのは大きな変化である。
これは喜ばしい限りで、デジタル印刷も液現技術やインキジェット技術(各方式)、紙に対する前処理の有無、乾燥の問題(UVや熱乾燥)、枚葉 vs. ロール、Landaのnanography、memjet、ソリッドインキジェット、等々の新技術が目白押しで、印刷会社の技術部も久々に整理に大わらわという状態である。後工程も入れるとたくさんの新技術が登場している。インキジェットはどれも皆同じ、電子写真方式はどれも皆同じという感じの風潮がここ何年か続いてしまったが、これからはデジタル技術を理解することが、まず第一という時代になってくるワケである。
JAGATでは2012年6月12日のテキスト&グラフィックス研究会で「drupa2012に見るデジタル印刷テクノロジー最前線-深堀り編- 」と題して、今後必要になる技術を徹底解剖する。メーカーの目から見た評価ではない、ユーザー目線から見るということにこだわってみたい。
また関西地区の方にはJP2012において昨年のようにJAGATカンファレンスを開催する。同じく6月14日の「2012-2013印刷市場展望とdrupa2012報告 」では、技術だけではなく、印刷市場展望についても深掘りしてみたい。
(文責:研究調査部 部長 郡司秀明)
drupa2012が始まった!
drupa2012開催レポート
「drupa2012に見るデジタル印刷テクノロジー最前線~drupa2012報告 第2弾 深堀り編」
2012年06月12日(火) 14:00-16:10(受付は13:30より)
JAGATのdrupa2012報告・第2弾として、デジタル印刷テクノロジーの最新事情を解説する。
講師:サカタインクス 堀本邦芳/プリンテクノ 木村哲雄/JAGAT 郡司秀明
「2012-2013印刷市場展望とdrupa2012報告【JAGATカンファレンス in JP】」
2011-2012年の印刷ビジネスの現状把握と展望、drupa2012の報告と分析をおこない、今後の印刷ビジネスについて考える。
2012年06月14日(木) 11:30-13:30
講師:JAGAT 郡司秀明、藤井建人