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社員のメンタル面のSOS、早期把握と正しい対応
その2:復職に関して
株式会社メディカルトラスト 取締役 事業部長 佐藤 典久
氏
前回は2007年9月12日(水)に行われた「社員のメンタル面のSOS、早期把握と正しい対応」セミナーから企業における健康管理の現状をまとめましたが、今回は同セミナーから株式会社メディカルトラスト取締役事業部長佐藤典久様の「復職時の問題点」についてまとめます。
復職までのステップ
休職期間満了後に復職可能かどうかという判断を迫られる場合があると思いますが、その時、主治医の診断書によるかどうかという問題があります。
通常、主治医による復職許可の診断書の提出がある場合は、会社側は産業医による面接ないしは会社側で面接して復職可否を決めると思います。産業医は、あくまでも医的意見を会社側に出し、最終決定は、主治医の診断書、産業医の意見書、職場の上長の意見も含めて会社側が判断し決定します。つまり、主治医の診断書だけでの判定ではだめなのです。
復職後の最大の問題=再休職すること
前回もまとめましたが復職後の一番の問題は、再休職者が多数発生しているということです。では、なぜ再休職者が多数発生しているのでしょうか。それは復職時にさまざまな問題が隠れていることに気がつかず、完全な状態ではないのに復職させていることが考えられます。
復職時の問題点とは
①主治医側の問題
以前うつの人は、休むしかありませんでしたが、ここ15
年で薬が非常に良くなり、今では、完治はしてないが5 割から7
割くらいの力で一応出社することもできるという薬がたくさん出ています。また、ほとんどの主治医は、会社はリハビリの場だと思っているので、少しずつ会社で慣らし運転すれば大丈夫だという診断書で本人は職場に戻ってきます。さらに、患者に頼まれると、簡単に復職可という診断書を書くこともあります。しかし多くの場合、企業の実情を主治医が理解していません。以前、会社には窓際族と呼ばれ、新聞を読んでいればいい人もいるくらい、社内にまだ余力がありましたが、その後、リストラクチャリングの中で、正社員はぎりぎりまで絞られ、正社員以外の人でできる仕事は、非正社員(派遣・パート・契約社員など)がやるようになっています。このような環境の中に復職して社内リハビリをやれと言われても、実際にはそんな余力や場所がありません。また、会社側の復職基準が以前より引き上げられていますし、復職者も増加してきていますので、復職を受け入れる企業側のスペースもだんだん減ってきています。
②本人・家族側の問題
本人側の問題として一般論ですが、「割と人に頼まれると断れない」「人に仕事を頼んだり振ったりできない」「何か事件が起きると自分が悪かったのだと思ってしまう」というような非常に真面目な性格の人が、その性格を持ったまま、薬でうつを治して復職して、また前と同じ環境の中に現職復帰することが、果たしていいのでしょうか。もしかすると、本人も少しだけ自分の性格を変えて戻ってこなければいけないのではないでしょうか。さらに、家族も含めて、主治医が復職許可を出すということで、それで復職できると思い込んでいる人が多くいます。最終的には会社の判断になるのですが、そのことをきちんと家族や本人に説明し切れていないという問題もあります。そして、本人が復職したい一心で、主治医の前で「ここのところ睡眠もきちんと取れているし、毎日図書館に行って何時間もいることができる」などとうそを言ってしまう場合もあります。
③社会的資本の問題
中小企業の場合、肉体的な復職準備が整ってから、つまり、9
時から17 時までとか、週40
時間きちんと働ける体力、生活リズムが戻ってから、初めて復職ということが可能になると思います。本来、会社は復職後の頭のリハビリを行う場所のはずですが、肉体的な復職の準備を支援する施設が整っていないので、会社にその部分の負担も掛かってきています。
④会社・産業保健スタッフの問題
休職・復職の制度が未整備なところが非常に見受けられます。そのため、場当たり的な対応になってしまったり、また制度があっても、あいまいな制度の場合は、逆にそれをずるく使う人が出てきて、個人間の不平等が起きることになります。休職・復職などの制度は厳しく作って運用をやさしくしたほうが、社員の不満が出なくていいのではないでしょうか。また、企業側にメンタルヘルスの専門家が少ないのが現状です。さらに産業医の先生も内科系が多く、メンタルヘルスに不慣れな人が多いのです。そのため従業員援助プログラム(EAP)と契約しているところもあると思います。EAP
はセーフティネットとしていろいろな悩みを聞いてくれたりするのに有効ですし、教育をしたりするのも有効だと思いますが、こと復職に関して言えば、個人の情報を会社とつないでうまく復職させていくという面ではあまり期待ができません。そして、会社の問題で最も大きいのは、マネジメントの人が、どちらかと言うと成功体験者で、ガッツで今まで挫折なく社内で成功を遂げてきた人が多いので、メンタルヘルスの問題について、そこに予算を掛けたり、理解してくれることが少ないということです。
中小企業での具体的な対応方法
ここまで復職に関していろいろな問題点をまとめましたが、では、具体的にどのように対処をすればいいのでしょうか。具体的な対処方法として、厚生労働省から、「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き※
1
」というものが出ていますが、これは産業保健スタッフが充実している事業所でのみうまくいくことで、普通の中小企業で厚労省が絵に描いたようなことがうまくいくという保証はありません。では、中小企業の場合どうすればいいのでしょうか。例えば、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構が行っている「職場復帰支援(リワーク支援)」があります。これは平成17
年10
月から、全国の地域障害者職業センターが精神障害のある方および精神障害のある方を雇用しようとする、または雇用している事業主の方に対して、主治医との連携の下で、雇用促進・職場復帰・雇用継続のための専門的な支援を行おうというものです。またクリニックで行う、精神科デイケア、さらに民間の復職支援施設も徐々に立ち上がってきています。
| ■健康管理に関する問題■ 休職期間満了後に「復職可能かどうか」の判断は、主治医の診断書による・・○か×か? |

次回では、「うつの早期発見方法」などをお伝えする予定です。
(文責:JAGAT 印刷会社の人材教育を考える会事務局)
※1「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」は厚生労働省の
ホームページ http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/10/h1014-1.html
に掲載されています。




