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厳しい経営環境であっても将来のため新卒を採用したい人材確保がこれからの命題

掲載日: 2009年02月14日

新卒募集の窓口、担当と言えば総務・人事と相場が決まっているが、JAGAT「新入社員定着度と採用予定に関するアンケート」でも100人以上の規模の企業では93%が総務・人事で「経営者・役員」という回答はゼロであった。しかし100人未満の企業では総務・人事が69%、「経営者・役員」が22%であった。小企業の必死さが表れた数字ではないだろうか。中小企業の人材確保・育成は人事に丸投げしないことが大切である。


来期は新卒採用企業は増えるが、採用人員は減少
企業の将来、組織の活性にとって新入社員の採用と定着は大変重要である。ここ2年ほどのJAGAT調査では、採用企業にとっては相思相愛の傾向が出ており、比較的いい人が採れているとの意見が多いが、若年層減少の中でその傾向を維持するのはかなり困難であろう。JAGAT人材教育を考える会が2007年度末に実施した「今年度新入社員定着度と来年度の採用予定に関するアンケート」を見てみよう。
回答企業95社の2007年度新卒採用状況は72%であるが、規模別で見ると、100人未満企業では56%にとどまり、採用人員は5人以下が80%(1~2人が44%)を占めている。100人以上の企業では89割が新卒を採用し、採用人員は5人以下が47%、6~10人が39%である。
諸資材高騰で厳しい経営環境であるが、2008年度の新卒採用計画は前年度を上回る81%の企業が採用予定と回答。100人以上の企業では95%が予定。人員計画は1~5人が54%、6~10人が32%。一方100人未満の企業でも今年より多い69%が予定。人員計画は73%が1~2人と回答。規模にかかわらず新卒採用予定は増加しているが、採用人員は全体に減少傾向があるようだ。つまり人員は減らしても将来性のある新卒者は採用していきたいという経営者の姿勢が読み取れる。
では人材確保の基本方針を尋ねてみると、新卒採用を基本にする企業が26%、中途あるいは第2新卒が22%、圧倒的に多いのが新卒と即戦力採用の混合型で51%、現実的対応であろう。新卒へのこだわりが多いのが100人以上の比較的規模の大きい企業で40%が新卒が基本と回答している。


新卒社員の評価は高い
2007年度に採用した人材への満足度を見ると、満足とやや満足合わせて85%で総体的に満足度は高い。満足と回答した企業を規模で見ると100人以上が26%、未満が19%で規模が大きいほうがやや満足度が高い。
2007年度新入社員の能力評価を聞いてみると、「コンピュータ活用能力」「人間関係を円滑にする力」「常に新しい知識・経験・学力を身に着けようとする力」「熱意・意欲を維持する力」の4つの能力が規模の大小には関係なく共通して高い評価を得ている(図1-1参照)。
規模別で対照的なのが、「情報を収集する力」「論理的に考えられる力」である。100人以上の企業での評価が高いのに対して、未満の企業ではその傾向は見られない。また「専門能力」でも100人以上の企業では評価が五分五分に分かれているが、未満の企業では評価する企業は少ない。規模別で評価が分かれているところに採用された人材の質の違いがありそうだ。
新入社員の能力評価を「ビジネスの基礎・基本能力」という視点に変えた設問と比較してみると面白い結果が出た。新入社員の評価のトップが「コンピュータ活用能力」であるのに対して、ビジネスの基礎・基本能力としては必要度が低く、下位になっている(図1-2参照)。このギャップは驚きである。ほかの「人間関係を円滑にする力」「常に新しい知識・経験・学力を身に着けようとする力」「熱意・意欲を維持する力」については評価同様、必要度も高い。
「コンピュータ活用能力」は、意欲、向上心があればどうにかなり、入社後に力を付ければいいと考えるためであろうか。ほかの力はビジネス上、大事な資質能力として備っててほしいという思いからか必要度が高くなっている。「コンピュータ活用能力」以外は、必要度と能力評価が合致していることが新卒評価を高くしている要因である。「問題を発見する力」「状況の変化に柔軟に対応する力」も必要度は高いが、新入社員の評価では今一歩である。このあたりが今後の経験と教育ということになるのだろう。


新人に不安感を抱かせないようなコミュニケーションが大切
では次に2007年度の新入社員の定着率を見てみよう。100%定着と回答した企業が65%、75%が定着と答えた企業が27%、半分の50%以下との回答が8%であった。規模別で見ると100人以上の規模で75%以上が定着した割合は97%と非常に高いが、100%定着では59%にとどまり、100人未満の企業の71%が100%定着しているのに比較すると定着率が低い。しかし、100人未満では50%以下という定着率の悪い企業が16%あり、総体としては100人未満企業のほうが定着率が悪い結果となっている。
では定着率の悪い原因は何か。規模にかかわわらず、「本人の期待と業務にズレがあった」が多い。ほかには「健康および家庭などの個人的事情」「先輩・上司の指導がうま手くできていない」「賃金や残業など労働環境、条件への不満」「自己のキャリア形成に対する不安感」などとなっている。個人的理由から企業内の問題までさまざまであるが、新入社員への不安感を抱かせる要因は企業にとって大きなマイナスであり、至急に改善する必要があろう。
新卒社員の定着促進のために行っている取り組みについて聞いてみると、規模別で特徴が出た。100人以上の企業で最も多い対策が「定期的に上司と面談を行って目標を設定・管理している」に対して、100人未満では「若手社員に新人育成のための教育を行っている」となっている。規模の大きい企業では組織的対応として上司を持ってきているのに対して、規模の比較的小さい企業では、年の近い先輩をOJTとして指導に当たらせているようだ。これは今回の結果であって、どちらが適切であるというものでもなく、あるいは規模的にみて妥当であるということも言えない。前者は目標を設定して定期的に話し合う「目標管理制度」であり、後者は身近な先輩が指導する「ブラザー・シスター制度」も広く行われている。いずれも自社の風土・社風に合った取り組みが大切であり、他社のまねごとでは新卒社員の定着促進にはならないであろう。(杉山慶廣)



人材教育を考える会では、2008年9月19日(金)15:00-18:00
「これからの技術・技能系人材の育成について」http://education.jagat.or.jp/modules/eguide/event.php?eid=13を開催いたします。