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2012年3月16日、クロスメディア研究会ではAR(拡張現実)をテーマにセミナーを開催した。スマホ普及により今後多くの企業がキャンペーンやプロモーションなどにARを採用していくと思われ、印刷業界でも関心が高まっている分野である。
ARは、提供方法から見るとカメラや被写体を使ったビジョンベースのものと、GPS、電子コンパスを使ったロケーションベースのふたつに大別できる。印刷業界に馴染み深いマーカーを使ったものは前者となる。いずれの方式もスマートフォンベースであり、端末の普及に伴い昨年後半頃から採用企業が増えている。
今回のセミナーでは、ARに実際に取り組んでいる各社より自社で開発しているソリューションや、販促キャンペーン・来店促進などにARを用いた事例を紹介いただいた。
当日は満席状態。印刷会社の営業・企画系の方を中心に80名以上に参加いただいた。
ロケーションベースのARアプリを開発しているレイ・フロンティア 田村建士氏からは、iPhone向けのARソーシャルアプリ「ララコレ」や、ARと位置ゲーを組み合わせた集客事例などを紹介いただいた。
群馬県みなかみ町の地域活性化を目的としたゲーム「ぼくらの選択」は、3ヶ月以上の長期にわたりTwitterやYoutube、実際の町役場・観光地などを舞台に展開したARG(代替現実ゲーム)で、実際にゲームを体験するために100名ほどが現地に足を運び、約5万人がWeb上でゲームの情報に触れるなど「みなかみ町を知ってもらう」という目的に対して一定の効果をあげた取り組みである。
レイ・フロンティア田村氏。ほか映画館の集客促進キャンペーンなどの事例も紹介いただいた、
ビジョンベースの事例としては、QRコードでARコンテンツをダウンロードさせるスマホ向けARソリューション「ARAPPLI」を開発するアララ 石古暢良氏より、ARメッセージつきのギフトカードや来店促進のための店頭プロモーションなどの事例を紹介いただいた。
ARポスターに印刷されたQRコードを読み取るとエアバスの3DCGが出現するというエールフランスのキャンペーンでは、AR写真をTwitterやFacebookに投稿できるようになっておりクチコミで広がりやすい仕組みづくりがされている。同キャンペーン(チケットがあたるキャンペーンを含む)により、エールフランスはフォロワーを1万近く獲得したという。
キャドセンター西氏。コンビニ来店促進キャンペーンや配置シミュレーションツールなど3DCGと
ARを組み合わせた事例を紹介いただいた。
キャドセンター 西謙次氏からは、印刷会社のグループ企業という立ち位置から自社の取り組みを紹介いただいた。
CGやVRコンテンツなどに強みを持つ同社では、2010年に印刷受注の拡大を目的とした「ARプリントカメラ」をリリースした。これは手軽にARを体験できるアプリとして反響が多かった反面、なかなか実際の案件には結びつかなかった。この経験から、西氏は、「印刷物だけ」「ARだけ」を目的にするのではないコンテンツづくりの重要性を感じたという。
ほかARに関連した技術としてビー・ユー・ジーよりNFCについてを、またアンビエントメディア 町田聡氏からはプロジェクションマッピングについて紹介いただいた。
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今回紹介いただいた各社いずれの事例でも、ソーシャルメディアで拡散しやすい仕組みづくりがされているのが印象的であった。印刷会社でARを使ったキャンペーンやプロモーションを提案するにあたっては、いかにそれを広めていくかの仕組みづくりも忘れてはいけないポイントとなるのではないだろうか。
(研究調査部 クロスメディア研究会 中狭亜矢)