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人材教育の費用は、コストではなく投資である。企業で長く働く社員という人材への投資と位置づけ、有効な長期投資と考えるべきだろう。
印刷産業の出荷額が落ち込む厳しい経営環境のなか設備力の効果は薄れ、営業力・企画力が求められるなど、人材が果たす役割、重要性は高まっている。企業が求める優秀な人材の確保と、早期戦力化のための教育、ステップアップの仕組みの良し悪しが今後の業績を左右する。
■OJTとOffJTが補間しあう教育体系
教育には、OJT(On the Job Training、仕事上指導)、OffJT(集合研修など)がある。日本では、従来終身雇用が前提となっていたため、社内における業務遂行能力がより求められ、OJTが主流となっていた。しかし現在では、終身雇用の前提も崩れ、OJTによる教育は時間や労力など大きなコストがかかる点から、OJTとOffJTが補完しあう教育体系も増えてきた。またOJTは、従来若年層教育が主流と考えられることが多いが、近年は上層部教育のOJTも人材育成のテーマとなっている。
OJTは、上司の力量に左右されやすく、思うような結果が得られない場合、OffJTによる集合教育が重視されるようになる。指導者は、内部、外部講師に分けられ、それぞれメリット、デメリットがある。これらは、社員の能力向上、業務を適正にこなす目的として行われる。しかし、現在のような経済環境では教育研修予算は削減されるが、逆に必要な知識・スキルは増加する。
■2009年度から増加しつつある教育研修費用
2009年度にOffJTを実施した事業所割合は67.1%である。企業規模別では、100人以上の企業において7割を超え、1,000人以上の企業においては8割を大きく超えている。また、人材育成に関して「問題がある」とする事業所は67.5%である。問題点の内容(複数回答)は、「指導する人材が不足している」(48.1%)、「人材育成を行う時間がない」(46.6%)の割合が高く、以下「人材を育成しても辞めてしまう」(35.8%)、「鍛えがいのある人材が集まらない」(27.4%)と続いている(厚生労働省 能力開発基本調査)。
2010年度従業員1人当たりの教育研修費用は、36,797円(2009年度実績34,633円)となり、前年度比6.2ポイント上昇した(株式会社産労総合研究所 教育研修費用の実態調査)。企業の教育研修費用は、景気動向に左右されやすくバブル期の1991年には、1人あたり43,217円を記録した。その後は景気の波を受け増減を繰り返しリーマン・ショック(2008年9月)で大きく落ち込んでから2年連続増加傾向にある。従業員1人当たりの教育研修費用額は、前回調査同様に「4万円台」を割り込んだ額となったが、規模別、産業別実績をみると大企業や非製造業では4万円台を回復している。
人材教育の費用は、コストではなく投資である。投資は、短期的投資もあるが、企業で長く働く社員という人材への投資と位置づけ、有効な長期投資と考えるべきだろう。
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