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デジタルプリンテイング時代に「マーケットイン」の視点に立ちユーザーニーズを汲み取ってより良いアプリケーションを提供出来るのは、お客様との接点が多くある印刷会社が一番有利なはずである。
マーケティング用語で「プロダクトアウトとマーケットイン」とか、「テクノロジーセントリックとユーザーセントリック」といった言葉を多くの人が聞いたことがあると思う。
「プロダクトアウトやテクノロジーセントリック」はメーカー主導で新規技術をコアにして、新規市場を創造するような製品を開発し世に送り出すことを言う。従って、大成功して世界中に普及することで人類の未来すら変えてしまう製品(例えば、iPod, iPhone, iPadがその代表であろう。)も有れば、失敗して知らない間に消えてしまうような製品もある。
対比する言葉として「マーケットインやユーザーセントリック」はすでに基礎技術や類似製品が出ているが、同じ技術を使って新規市場や新規顧客を開拓する場合に、市場の声、すなわちユーザーニーズを徹底調査してアプリケーションやソリューションを決めて製品開発を行う手法を指す。マーケットインで最も重要なポイントは、「キラーアプリケーション」を見つける事である。
昨年末(12月27日)に日本ヒューレット・パッカードとミューラーマルティニ・ジャパンからプレスリリースが出たように、講談社が導入を決めた「HP T300とMuller Sigmalineを結合させた小ロット書籍印刷システム」は、まさに業務用高速インクジェットプリンターの「キラーアプリケーション」に他ならない。
月刊誌、週刊誌、コミックなど、ほとんど全ジャンルの印刷物書籍販売数が減少し、電子コンテンツ化してゆく中で、出版会社が生き残っていくためには、一つのコンテンツをあらゆる方法で配信していくしかない。しかも膨大な数のコンテンツをタイムリーに出していかないと、価値はどんどん下がってしまう。コンテンツ配信の一手段が印刷物書籍だとすると、価格、日程、コストを考えると講談社自らが書籍内製化をするのがベストと判断したのであろう。この発想が「マーケットイン」の発想と言える。
実は、デジタルプリンテイング時代に「マーケットイン」の視点に立ちユーザーニーズを汲み取って付加価値が高くより良いアプリケーションを提供出来るのは、お客様との接点が多くある印刷会社が一番有利なはずである。しかし、ほとんどの印刷会社がアプリケーションに対するアイデア創出、付加価値の有無判断とROI(Return On Investment)予測などの根拠を明確にする為の、メーカー各社のデジタル印刷機に関する情報収集力と分析力が無いのではないかと危惧している。
オフセット印刷機の印刷原理やオペレーションに関しては、各印刷会社はかなりの時間を費やして使いこなしノウハウの蓄積や、オペレーター教育をしてきたと思う。しかし、デジタルプリンター(印刷機)に関してはどうであろうか?10数年前のPODブームの時にメーカーの表面的な説明を聞いただけで、簡単に購入してしまった電子写真方式の業務用カラープリンターがお荷物になっていないだろうか?
page2012カンファレンスでは、これから主流となっていくであろうインクジェットプリンティングの技術動向、製品動向を分かり易く解説していくつもりである。また、プリントエンジンと同じくらい重要なDFE(Digital Front End)やJDFワークフローについても解説し、近い将来に印刷会社の皆様がデジタルプリンター導入をしようとした時に、参考となるお話をしたい。
株式会社プリンテクノ 代表取締役 木村 哲雄
登場セッション
開催日時:2月8日(水)15:15~17:15
最新デジタルプリンティング技術の潮流