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【第17回】 UVインキ
UVとは、紫外光(Ultra Violet)のことで、可視光線より短波長で100~400nmの光を指す。太陽の紫外線は肌の日焼けの原因となり、日焼け対策関連製品としてのUVという言葉を目にする。
■UV印刷とは
UV印刷とは、UV光(紫外光)のエネルギーを照射することにより硬化(乾燥)するインキを使用した印刷方式である。UVインキは、短時間で強制的にインキを乾燥させるタイプの紫外光硬化型インキである。通常の油性タイプのインキと異なって無溶剤のため、揮発性有機化合物(VOC)を大気中に排出して環境を汚すことが少なく、大気環境保全に優しいインキとも言われる。一方、油性タイプのインキは、溶剤が紙に浸透して蒸発し、油性と酸素が反応する酸化重合によって乾燥が行われる。場合によっては乾燥のためにオーブンが用いられることもある。硬化するまでに数時間かかり、乾燥が十分でないと、重なった紙同士がくっついてしまうブロッキングなどの不具合が発生する。そのために十分な乾燥時間を要し、それを防止するために通常パウダーを使用したり、紙の積み重ねの枚数を考慮したりという対策を取ることが必要となる。こうしたことが環境に影響を与えてしまい生産性を落す結果にもなる。
UVインキは、乾燥時間は短いためにインキ表面が平滑になる前に硬化してしまうので、表面の平滑性が十分でないことが起こり、光が乱反射されるために光沢が劣化してしまう可能性がある。耐性では、UVインキは、油性インキに比べて摩擦などが優れているので媒体用途の範囲を広がる。被印刷体も広く、牛乳、ジュース、酒等の紙パックをはじめに化粧品のプラスチックケース、プリペード、ペットボトルのキャップなど印刷用紙だけに限らずいろいろ被印刷媒体での展開が可能になる。
色再現領域は、油性インキの方が若干広いとも言われる。色インキの発色も若干異なるのでグレーバランスの違いなども注意しなければならない。一つの仕事で両方のインキを媒体ごとに使い分けを行う場合は色合わせなどのカラーマネジメントが必要で、それぞれICCプロファイルも必要となる。ICCプロファイルの測色においても厳しく管理するのであれば、乾燥時間が異なるのでのでドライダウンの差の考慮することが考えられる。
■UV印刷を行うには
UV印刷を行うには、UV光が照射できる光源装置が印刷機に必要になる。UV硬化の光源には、従来の焼き枠や殖版機に用いられたUVランプ方式(主にメタルハライド光源)が使用される。今話題になっているLED方式の光源装置も製品化され、LED光源の特徴は長寿命、瞬時点灯・消灯、低消費電力などが挙げられる。さらに波長域が限定されているので硬化反応によってオゾンが発生する波長域帯も含んでいない。ランプからの発熱が少なく、オゾンや熱を排出するためのダクト設備が不要になる。
一方、波長域が限定されたり、そのUV光に対する感度を十分に持たせたりするためにLED光源用のUVインキが必要となる。現状まだ通常の油性インキと比較してあまり使用されていないのでインキ自体まだ割高である。今後、LED光源自体の出力アップも期待されつつあるが、そうした状況を踏まえつつ、LED-UV用インキを使用しながらオゾンレスで従来のUVランプを改良したものを使用する仕組みも提案されている。
UVインキにはいくつかの特徴があるので十分に理解してその活用方法を考えていなかければならない。
問 UVインキ
次の文の[ ]の中で正しいものを選びなさい。
印刷インキは、色々な成分から構成され、その主な要素は、色を支持体に付け色再現に重要な役割を果たす色料(有機、無機顔料等)、色料を分散し、印刷素材に転移、固着させる働きをする
[1: ①ピクセル ②ビヒクル ③パウダー ④硬化剤](合成樹脂、油脂類、溶剤等)、インキの性能で乾燥性や流動性といった、印刷適性や印刷効果を調整・維持・向上させるために補助剤(滑剤、硬化剤等)から構成される。
色料は、染料と顔料に分類され、染料は水・油・アルコールに可溶性であるのに対して、顔料はそれらに溶けずにただ粒状のままで[2: ①拡散 ②分散 ③分解 ④結合]するという性質がある。現在の印刷インキでは、大部分の色材に顔料が使用され、無機顔料と有機顔料に分類される。無機顔料はもともと天然の色の付いた土や石を砕いて粉にしたもので、2~3万年前には赤土・黄土・草木、あるいは貝類を燃やして得られた煤を用いていた。色に安定性がなく、粒子も粗く、技術の発達も相伴って人工無機顔料へと移行した。有機顔料は有機化合物を成分としその化学構造は、主にアゾ顔料と多環顔料に類別される。
インキ中の溶剤や乾燥硬化方式による分類から水性インキや熱乾燥インキ、紫外線硬化インキなどがあり、平版インキの中でも油性インキとUVインキがある。油性インキの乾燥は酸化重合による[3 : ①瞬間 ②自然 ③強制 ④硬化]乾燥なので、乾燥には通常[4: ①数秒 ②数分
③数時間 ④数週間]を要する。油性インキは乾燥が十分でないと、重なった紙同士がくっついてしまう[5: ①ブロッキング ②トラッピング ③ピッキング ④裏抜け]などの不具合が発生する。それを防止するためにパウダーが通常使用されたり、紙をあまり数多く重ねないという対策をとることもある。
UVインキは、紫外線のエネルギーを与えることにより硬化(乾燥)するインキである。紫外光は、可視光線(光の波長:400nm~700nm)より短波長の波長が100~400nmの光で、人の眼では見ることができない。紫外光を照射することで短い時間で強制的に乾燥させるので紫外光硬化型インキとも言われる。無溶剤のため、[6: ①揮発性有機化合物(VOC) ②二酸化炭素 ③活性酸素 ④不活性酸素]を大気中に排出して環境を汚すことが少なく、大気環境保全に優しいインキとも言われている。乾燥時間が短くインキ表面が平滑になる前に硬化し光が乱反射されるために
[7: ①光沢 ②濃度 ③インキの膜厚]が劣化する可能性があるので留意しなければならない。耐性では、UVインキは、油性インキに比べて摩擦などの耐性にも優れている。一般的な色再現領域では、油性インキの方が若干広いとも言われ、発色自体も油性インキとでは若干異なっているので、同一の仕事を油性インキとUVインキで行う場合には[8: ①色合わせ ②見当合わせ]が必要である。
UVインキを使用する場合は、印刷機には、UVインキに照射する光源装置が必要となる。UV(紫外線)硬化の光源には従来のランプ方式(主にメタルハライド光源)のほかに長寿命、瞬時点灯・消灯、低消費電力などの特徴を持つ[9: ①LED ②CCD ③C-MOS ④高演色]方式の光源を使うものも製品化されている。また、光源にはオゾンレスタイプのランプ方式とLED-UVインキを使用するタイプの印刷機もある。
解答
1:② 2:② 3:② 4:③ 5:① 6:① 7:① 8:① 9:①