本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
大元の画像データがデジカメデータとなり、RGBでハンドリングせざるを得なくなり、瞬く間にRGBワークフローが当たり前になってしまった。
RGBワークフローが注目され出したのはデジタルカメラの実用とともにということができる。その前にも「ワンソースマルチユース」という言葉だけは一人歩きしていた。RGBデータで最適化し、そのデータを各メディアのデータに変換するというワークフローがさまざまなところで何度ともなく、提案されていたのである。これも大元の画像データがデジカメデータとなり、RGBでハンドリングせざるを得なくなり、瞬く間にRGBワークフローが当たり前になってしまった。
このようにデジカメは最重要デバイスなのだが、印刷業界ではこのデジカメのことが意外に分かっていない。今までの銀塩カメラの単なる置き換えとしか考えていないようだが、これでは大変危険なのである。
例えば代表的な一眼デジカメ2機種で撮影されたRGBデータを比較していただきたい。撮影チャートは「色相環」と呼ばれているもので、このチャートを使うとカメラの特性が手に取るように分かるのだ。色相環を撮影したデータをCIExy色度図上に分布してやると図1、図2となる。図1のカメラは放射状に各色相が真っすぐ伸びているのが分かると思う。放射線の始点(中心)がグレーであり、彩度の高い方向に真っすぐ伸びているということになる。図1のカメラは真っすぐに色が伸びているので、色を素直に正確に再現していることであり、このカメラは色を濃度計(測色計)のように捉えているので「測色的な色作り」をしているという。
対して図2をご覧いただきたい。右下部分の線が入り交じっているのがお分かりいただけると思う。右下部分は色で言えば暖色系、つまり肌色部分の色をデジカメがレタッチしているということなのだ。このようなデジカメを「演色的な色作り」をしているという。スナップ写真ならこれでも構わないだろうが、印刷原稿に使用する場合は、ストレートに使う場合以外はトーンジャンプなど、トラブルの原因になってしまうので注意が必要である。DTP工程でレタッチを前提とする場合は、素直な測色的な色再現データが向いており、演色的なデータだと色が反転してしまったりするのである。
RGBワークフローでは前述したようにRGBデータ自体の品質が大事になる。しかしRGBデータと同じくらい重要なのが、マルチユース用の各データにするための変換品質である。ICC方式のカラーマネジメント、もっと具体的に言えばAdobe方式のカラーマネジメントの場合は、品質の7割くらいはICCプロファイルに依存するということができる。CMYK変換の基本は素直な品質のICCプロファイルを使用してCMYK分版することなのである。くどいようだがRGB to RGBの場合も変換品質は重要だが、RGB to CMYKの場合は相当繊細にプロファイルが作り込まれていないとトラブルを発生するので細心の注意が必要なのだ。
特にICCプロファイルはあらゆるパラメーターを包括的に一つにくるんでしまっているので、印刷のような変動要素の大きいデバイス向きとは言い難いものなのである。
インキの顔料が異なれば発色そのものの特性が変わるので、ICCプロファイル自体を新らしく作り直さなければいけないことは容易に理解できるだろう。しかし、ドットゲイン量がたった2%異なっても異なるプロファイルを使用しなければいけないのだ。印刷でドットゲインを1%以内に収めることなど、不可能に近い。ドットゲインに関して言えば、印刷機のセッティングやインキが同じならドットゲイン特性の傾向は似通ってくるはずで、量だけが変化するという線形的な特性を有しているものだ。従って「パラメーター的な扱い」や「キャリブレーション的な処理」のほうが適しているし、印刷が変動することを考慮してICCプロファイルを作らないとデジタル的な四角四面なプロファイルになってしまうのである。
例をお見せしよう。例えばGCR(UCRと考えていただいて結構である)が決まっていた場合、数式どおりにプロファイルを作ってしまうと図3のようなCMYKカーブになってしまったりする。この元になる印刷基準はJapanColor2001であるが、GCRの扱い方一つでこうなってしまうのである。欧米では総インキ量が低くGCRを多用するので、プロファイル作成ソフトにはデフォルトでGCR量やポイントがセットされているため、日本向けのプロファイルでもデフォルトではこうなってしまう。
図3のプロファイルはコメントのしようもないのだが、百歩譲って「もしドットゲイン変動がゼロならこれも使用できなくもない…」とコメントしておく。しかし本来図4のようなプロファイルが求められるものなのである。図4はPhotoshopにオマケで付いているものなのだが、DTPに一日の長があるアドビシステムズはJapanColor2001に対して、安心して使えるプロファイルを提供してくれている。図3まで極端ではないが、ある大手メーカーが提供しているJapanColor2001プロファイルを使用すると図5のようにダンツキ(トーンジャンプ)だらけになってしまう。
トラブルをいかにしてチェックするかがポイントということだが、こういうトラブルが多いということを常に意識しながら、モニターをチェックすることが第一である。モニターも安物ではなく、グラフィック用のキャリブレーションモニターを使うべきであり、現在は値段も下がり20万円程度なので、得られる効果に比べれば決して高いものではない。(郡司秀明)
(『JAGAT info』2009年1月号より)