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本の感想やコメントなどを電子書籍上で共有するソーシャルリーディングが広がっている。
「読書体験を共有する」と表現されることも多いが、簡単にいってしまうと本の感想や評価、コメントなどをネット上で共有するサービスのことだ。
いままでも掲示板に感想を書き込んだり、書評ブログを閲覧するなどのかたちで存在していたが、電子書籍の普及に伴い、新たな機能を付加した専用サービスとして発展した。
現在では、「レビュー」(ミクシィ)、「booklook」(ブックルックチーム)、「SHARE READER」(NHK出版)、「ブクログ」(paperboy&co)、「Qlippy」(スピニングワークス)、「ニコニコ静画(電子書籍)」(ドワンゴ)など数多くのサービスが登場している。評価や感想をリアルタイムで共有したり、電子書籍上に書き込んだコメントをtwitterへ投稿できる機能などを持つ。
なかでも、「ブクペ」は順調に利用者数を増やしているソーシャルリーディングサービスである。2011年4月より運営を開始し、現在会員は20万人、月間アクセスは40-50万PVを超える。
ソーシャルリーディングサービス 「ブクペ」
同サービスは本の内容まとめに特化しており、他のソーシャルリーディングサービスが持っているような感想・コメント共有は持たない。利用者は2000字以内(著作権に配慮してこの文字数だという)で本の要点を投稿する。利用者にとっては投稿者の主観を交えないで書籍の概要を知ることができるサービスとなっている。
開発した鳥羽氏に話を伺ったところ、自身が読書をするなかで「本の要点をまとめる」サービスがあれば便利だと思ったことが開発のきっかけであったという。
ブクペでは、利用者の登録ハードルを下げるためにtwitterアカウントをIDに使ったり、献本をfacebookグループ上でやりとりするなどソーシャルメディア活用に力を入れている。また書店や読者とのつながりも積極的に持つようにしており、リアルでのつながりがコミュニティ強化の一助となっている。
著者を招いたリアル読書会は、実施結果をWebに還元することが理想だが、現状は同サービスを知ってもらうことが目的で開催しているという。ジュンク堂、ダイヤモンド社など書店・出版社との共同キャンペーンも実施しているほか、2011年9月には店頭POPを投稿・共有する「ブクPOP」というサービスも開始した。実書店で利用されている手書きポップをブクPOP上で公開したり、投稿したPOPが実際に書店に並ぶキャンペーンを実施している。
ソーシャルリーディングは、読書体験の共有や新たな価値の気づきなどを利用者に提供する。さらにブクペのような「本のまとめ」コンテンツは、書籍購入を後押しする販促ツールとしての可能性も持っているようだ。鳥羽氏にブクペの今後を尋ねたところ、「販売促進機能を持てばいいと思います。アマゾンで本を購入する前にブクペで内容をチェックするようになってもらいたいです。」とのことであった。
印刷会社にとってはなかなか接点が見えにくいソーシャルリーディングサービスではあるが、電子書籍ならではのサービスとして、今後の広がりが期待される。
(研究調査部 中狭 亜矢)
電子書籍企画・制作に積極的に取り組むほか海外向け電子書籍販売にもチャレンジを行っているCMパンチの取り組み事例と、「ニコニコ静画(電子書籍)」など数多くのサービスが登場し話題となっているソーシャルリーディングソ(読書体験共有サービス)について、第一人者としてプラットフォーム確立を目指す同社の取り組みと業界全体の動きについてお話いただく。