本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
page2012 のテーマは「PAGE からpage へ ―― ePower で新領域へ」だ。
DTPの登場時にPAGE展が生まれ、共に成長してきた。つまりDTPの歴史そのものがpage展で、デジタル化の歴史=pageの歴史とも言える。
page(DTP)の歴史はダウンサイジングの歴史ということができる。演算出力に時間と高品質が必要だったため、初期のDTP 出力にはメインフレームに当たるCEPSが使われていた。それがエンジニアリングワークステーションになり、さらにパソコンになるというようにダウンサイジングが進んだのだ。パソコンの高性能化も著しく、今やノートブックでDTP作業をおこなうことも容易になった。
ましてや最近ではクラウドまで登場している。しかしクラウドになろうと最終生成物の印刷媒体はあくまでマスを対象としたもので、これに関しては変わることはないと思われていた。つまり印刷業界ではマスこそ正義だったわけである。それが2010 年あたりから変わり出し、3.11の大震災でマスから多品種小ロットという流れを決定づけた。
印刷業界以外でも4マスが見直されたりしていたときなので、2011 年は価値観が大変革した年として位置付けられる。「PAGE からpage へ」と小文字にしたことは、「既存の価値観が通用しなくなる」「価値観の大変革が訪れる」ということを言外に込めたかったからである。
時代はマスから個、パーソナルやバージョニングというキーワードに変革しようとしている。今回の小文字のpage はこんなイメージを表しているのだとご理解いただくとありがたい。もともと印刷はマスに向いているので、小ロット対応ができれば印刷の意義は飛躍的に増大する。
「ePowerで新領域へ」とは、本来得意でないはずの小ロットへの対応をデジタルの力、つまりePowerを最大限に生かしていこうという意味である。デジタル印刷の場合はePowerで小ロットから中ロットくらいまでカバーしていくのが新領域ということになるだろう。しかしオフセット印刷の場合でも、小ロット化の要求は強くあり、そのソリューションとしてギャンギングという付け合わせソリューションに注目が集まるようになってきた。
ギャンギングは以前からオフセット印刷の効率を上げるために行われてきた手法だが、かつてはオペレーターの勘と経験でまとめるジョブを選択していた。色が近いもの同士を付け合わせて、捨て版的な要素も入れつつグルーピングしていくのだが、実に大変な作業であった。それを自動化したのが昨今のワークフローRIPで、JDFデータも考慮して断裁までリンクするようになっている。
このような非マス的な価値観の世界が新領域であり、非マス的な仕事を正当な価格で正当な利益を確保しながらこなしていくためには、ePowerに頼るしかない。Web to Print等のソリューションで営業コストを下げていくのがePowerである。
このように価値観の変革は営業的な展開にも影響してくる。今まで顧客の要望を叶える(言うことを聞く)のが第一の仕事と思われていた営業から、顧客に対して「お客様からの注文はこうですが、むしろこの方が効率アップは図れるのではないですか?販売効果があるのではないですか?」というように提案ができることが良い営業という時代になろうとしている。そのためには営業マン自身のスキルも求められるが、それが可能になればソリューションプロバイダーへの道も現実的になってくるに違いない。
紙の印刷に集中して生き残りをかける会社にも、印刷ビジネスを中心にはしているが、その周辺にビジネスを展開していこうという会社にも、クロスメディア展開してビジネス領域を拡大していこうという会社にも、「page2012 に来れば必ず何かしらのインプレッションを受けられる」ことを目指していろいろなコンセプト展示・カンファレンスを企画している。企画提案の参考になる事例・ソリューション展示がたくさんあるというのがpage展の意義なのであろう。
DTP と共に歩んできたpage は今後「デジタル印刷」「電子書籍」の比重を高めていくつもりである。page2012 はその第一歩として来場者に最低3 つは「なるほど」と唸らせる内容にしていきたいと考えている。その「なるほど」が人によって千差万別だったら主催者冥利に尽きる。個にフォーカスし、小文字のpage にした意義もあるというものである。
(研究調査部 部長 郡司秀明)