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誰でもが知っている標準資料の新たな活用が、従来の概念を超えるMIS構築のキーになる。【PAGE2009 MIS/JDFトラック E2紹介】
皆さんの会社では、経営管理のコンピュータシステム(MIS)への投資対効果をどのように見ていますか? どちらかといえば費用を掛けなくて済むなら済ませたい、システム自体か古くなったから新しいものに変えなければならないが、変えたからといって掛けた費用に見合うプラスは得られない、といったことではないでしょうか? これは、ほとんどの印刷会社に共通の見方ですが、MISとは本当にそのようなものなのでしょうか?
MISに求める機能を、既に散々使ってきた販売管理、原価管理といった範囲に限定して考えているならば、答えは「Yes」である。そのようなことは、10年、20年前から行なってきたことで、多少のバージョンアップをしたところで100万円の投資でも惜しいと感じるのはもっともなことである。しかし、本来のMIS、特にこれからのMISを考えるならば、先の問いへの答えは「No」である。
ネットワークやコンピュータといったIT技術が進歩する中で、MISが果たしえる役割は従来のものとは格段に大きくなってきている。従来のMISは、それぞれに孤立したコンピュータを、まさに計算機として使って集計処理や伝票発行を行なうための道具に過ぎなかった。しかし、いまは、機能、性能が向上したパソコンとデータベース、インターネット、Webを組み合わせて使うことによって、顧客や外注先を含む組織、担当者間のコミュニケーションの改善、向上、そしてさまざまなシミュレーションによる事前の見える化が可能になった。ただし、そのようなことは今までにやっとことがないことだから、その具体的な内容、特にその効果が想像しにくい。そのために、多くの印刷会社のMISが、大幅なリニューアルをした後でも、従来の機能の範囲を脱しきれない大きな原因になっている。
Webの利用によって、各種の情報を必要などころでリアルタイムに共有することができる。例えば、工務が持っている作業予定や進行に関する情報を、営業、生産の各現場、外注先、さらには顧客でも見ることができるようにする。そのことによって、今まで伝言ゲームのようにしてきた各種の連絡、確認、問い合わせなどのコミュニケーションが手間を掛けずにリアルタイムで行なうことができ、営業マンや工程管理担当者をこれらの煩雑な業務から開放する。営業マンの例では、販売活動以外の業務の1/3は削減できる。その削減分を、新規拡大や顧客への提案のために使うことで売上向上に寄与する。工務担当者に関しては、余分なストレスをなくすとともに残業時間の大幅な削減を可能にする。また、顧客側でも、印刷会社の担当営業に連絡することなく発注した仕事の進行状況や納期の確認がいつでもできる。これは、顧客の満足度、信頼度向上に大いに役立つ。さらに、必要な情報がリアルタイムで漏れなく正確に伝わるので、指示ミスによるトラブルを保母ゼロにすることができる。
これらの効果の実例は以下のようなものである。
* 営業のマンパワーの50%を削減
* 工務担当者の残業時間を85%削減、さらに指示ミスをほぼゼロにした。
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オフ輪を含む十数台の印刷機を持つ3つの工場の工程管理を3人でこなすようになった。
経営管理に必要な情報をデータベースとして一元管理し、各担当者がいつでも必要なデータを取り出して使えるようにすることで、非定型な判断業務を手間を掛けずにすぐにできる。このことによって、利益を出せる機会を失ったり、不適切な判断のために赤字を出したりすることを防ぐことができる。また、各種の改善策をより客観的、合理的に計画、実施することを可能にする。コンピュータの能力を各種のシミュレーションのために使えば、より的確な計画策定ができる。計画とは、価格政策に関することから日程計画、さらには手配業務にも及ぶ。
これらの効果の実例には以下のようなものがある。
* 年間2000万円強の非生産業務のコストを削減
* 工務の日程計画作成時間を1/3に削減
* 納品物の配送経費を年間7000万円削減
Page2009 コンファレンスのMIS/JDFトラック「E2 標準資料を使ったMIS」では、上記のシミュレーション機能に関して、誰でもが知っているふたつの標準資料(「アワーコスト」と「標準工数」)を使うことによってさまざまな機能を持つMIS構築について話し合う。、まずは原価管理から始めて、そこで使われた標準資料を使って、利益管理、工程管理、見積もり管理といった利益に直結する管理を行なうことができることを、印刷会社の実例、MISの具体的機能の点から紹介する。
Page2009 コンファレンス 「E2 標準資料を活用したMIS」では、収益性確保のための標準原価の利用事例から、そのデータを活用してさまざまな効果を生み出すMISについて、具体的システムを紹介しつつディスカッションする。