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スマートフォンは誰が使っているのか
~ユーザ像とスマートフォンアプリ制作の今後~
講師
株式会社エル・カミノ・リアル
代表取締役社長 木寺祥友氏
株式会社アスキー・メディアワークス
アスキー総合研究所 所長 遠藤諭氏
開催レポート
iPhoneとAndroidの開発コンセプトの違いとして、iPhoneは電話のできるiPodと捉え、音楽プレーヤーの延長であると考える。対してAndroidはクラウドのフロントエンドと捉える。ハードウェア視点かインターネット視点かの違いである。Appleはハードウェアでの収益があり、そのためサービスは無料に近い状態で提供する。Androidの背景としては、Googleは検索の機会を増やしたいという意図があり、今後モバイルコンピューティングが活発になればなるほど、Googleの利用シーンが増えるだろうという読みがGoogleにはある。
コンピュータ及びサービスについてのトレンドとして、エンターテインメントからビジネスへ移行してきたことがある。ゲームなどの隙間時間つぶしからブラウザベースのビジネスアプリへ、ソーシャルアプリも出会い系からビジネスマッチングへ移った。スマートフォンもビジネス主体のモバイル機器としての性格が強くなってくる。ドラッカーによれば「21世紀の革命はホワイトカラーの真の生産性をアップさせること」であり、スマートフォンこそがホワイトカラーの隙間時間の生産性をアップさせると考える。
なぜAndroidなのかというポイントは以下の通り。
・ハードウェアの選択が可能
・オープンソースであり、コスト削減が期待できる
・FLASH対応(Android2.1以降)
・いわゆる勝手アプリが作れる=クライアントサーバーのフロントに使える、受託アプリが作れる
・サーバーサイドJavaとの連携も可能
Androidの未来像としては、二極分化が予想される。かつて日本の携帯端末は海外に進出しようとして失敗してきた。その原因はキャリア主導で規格を縛っている状況があり、それに沿った端末を作らざるを得なかった。しかしスマートフォンになり端末メーカーが主導で端末を開発し、キャリアがそれに合わせる形になった。そのため高機能な日本製Androidスマートフォンが世界を席巻する可能性は十分にある。
対して、低価格なタッチ端末は台湾製、中国製などがシェアを握る。このことで世の中の生活にタッチ端末が行き渡る。今までパソコンが普及していなかった業界ほど浸透する。高価格で専用言語でプログラムしにくい既存ターミナル端末が衰退していく。
また、Androidが生活家電のOSの主流になっていく。セットトップボックスやデジタルサイネージ、カーナビなど、ユーザにとっては何が入っているかは問題ではなく、次々にAndroidに置き換わっていくとみられる。
現在はiPhoneアプリからAndroidアプリへの移植が旬である。そのため複数機種の対応が迫られる。そうなるとワンソースマルチユースというわけではないが、効率化を考えると単体アプリはWebアプリへ移っていくことになる。そこで本命になるのがHTML5である。
野村総研のレポートによれば、2011年でモバイルソリューションがモバイルコンテンツを抜く。ここでいうモバイルソリューションは、モバイル端末に依存するアプリ開発や保守、運用市場を指す(グループウェア、CRM、ERPなど)。そしてモバイルコンテンツは、モバイル端末向けの有料コンテンツサービス全般を指す。つまりこれまではエンドユーザー向けの音楽、動画、電子書籍などのコンテンツが隆盛だったが、今後はモバイル活用のBtoBが躍進するということである。これがエンターテインメントからビジネスへ移行用途が移っているということである。
アスキー総研の行うMCS(メディアコンテンツサーベイ)は、「日本のネットの1万分の1モデル」と言える。ネット人口構成比にあわせ全国で老若男女1万人に536設問(総選択肢約7,300)のアンケートを取り、そこから自由にかけあわせて集計・閲覧が可能なマーケティングツールである。
ネット利用動態、コンテンツ消費の傾向、様々なプロフィールから自由にクロス集計が可能。スマートフォンや携帯関連で専門項目も充実している。スマートフォンの利用状況やケータイサイトの利用状況、利用端末や契約状況などから利用スタイルを知ることができる。ソーシャルメディアについても同様である。
この調査をもとにiPhoneユーザ像を浮かび上がらせると以下のようになる。
・iPhone所有率は3.2%である(昨年11月時点の調査)。一般の携帯端末に比べると少ないが、おそらく現状でiPhoneは500万台くらいであり、妥当な数字である。
・年齢構成は、20代女性が高い。初期は30代から40代がiPhoneを買ったが、現状では20代にヒットしている。また、2割ほどがMacユーザーである。
・地域分布では大都市が強い。
・所有台数ではiPhoneユーザーの約3割ほどが2台所有(一般携帯端末と併用)。
・月額利用料金の平均は、iPhoneが6,335円なのに対して一般の携帯端末は5,268円。
・パケット定額を促進した。それまでソフトバンクではパケット定額の利用が32%ほどしかなかったが、iPhoneになり75%がパケット定額に加入する。
・iPhoneユーザは結婚願望が強い。また主婦層は決して多いわけではないが成長率からみると非常に有望なマーケットである。
・ソーシャルメディアの扱い方もそれぞれで、30代はコミュニケーションを重視しているが20代は情報発信を重視しているか。
・TwitterはiPhoneと相性がよく、一緒にユーザ数が増加した。ミクシィの利用者像も重なるところがある。
・60%の人がiPhoneでゲームをしている。
・ニコニコ動画よりはUstream。20代はネット動画をかなり観ている傾向。
・20代後半の女性が、iPhone購入意向が高い。10代女性も多い。