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メーカーの“売りたい気持ち”と消費者の“買いたい気持ち”を直接つなぐ折込広告は、消費マインドを醸成する装置であると共に、私たちの日々の暮らしの有りようを映し出す鏡のような存在ともいえるでしょう。
月刊『プリバリ印』2011年6月号の特集は、「折込広告の底力!」。座談会では、オリコミサービス 川岸利男氏、読売インフォメーションサービス 柴山靖氏、サンケイ アイ 中山浩一氏、朝日オリコミ 曲田栄之氏、同 松本和久氏をお迎えし、最も身近な紙メディアである折込広告の魅力や優位性について、熱く語っていただきました。
(本誌特集記事より)
―― 折込は販促のツールであると同時に地域の情報誌でもある折込広告の魅力、底力については、皆さんはどのように捉えていらっしゃいますでしょうか。
曲田氏 折込広告はよくポスティングと比較されますが、ポスティングで投げ込まれたチラシはそのまま捨てられてしまうことも多いのですが、新聞に挟まれる折込はとりあえず茶の間まで届きます。家族全員が見るかどうかは分かりませんが、折込広告というのはやはり到達率が非常に高い。ネットの時代になってもそうした優位性は不変であり、それが折込広告の強み、底力ではないかという感じがしています。
川岸氏 媒体費を比較するとポスティングの方が高いわけですし、そもそも新聞を読んでいない人たちに高いお金を掛けて届けることに意味があるのか、効果が期待出来るのかという問題もあるでしょう。メディアとして見た時、折込の方が相対的に価値が高いということがひとつあると思います。最近では、「詳しくは明日朝刊の折込広告で……」と言って、翌朝の折込につなげるテレビコマーシャルもありますし、チラシからネットへという形もあります。そうした動きのベースには、やはり折込広告の力があるのだと思っています。
中山氏 折込の基本は、広告主の思いを紙に載せて生活者に伝えるというところにあります。広告の機能が価格競争的、価格訴求的な意味合いだけになってしまうと、折込本来の魅力からはどんどん離れていってしまうのではないか。これからは、ある商品を買うことで自分の生活がどのように変わるのかが思い描けるような広告が注目されるようになるのではないかと思っています。
松本氏 朝日オリコミで全国の折込広告の出稿量を集計している関係で、震災以降、仙台の広告を見ていたところ、ある新聞販売店がお米屋さんと協力して「どこそこのお米屋さんは営業しています。お米を届けます」という告知をされていました。それは、このような状況だからこそ、そういう地域だからこそ伝えなくてはいけない情報であり、その役割を担った折込広告の底力を感じました。
柴山氏 折込は基本的に販売促進のツールではありますが、同時に地域の情報紙でもある。折込が地域情報を知るメディアであることもきちんとアピールしていかねばならないと思っています。折込を見れば大体近所の様子が分かります。東日本大震災で避難場所に集まった被災者の方々の元に新聞が無料で届けられた所もありました。被災者によっては地元から遠く離れた地に避難された方もいます。その方たちは避難場所周辺の折込が見たいとおっしゃっていたそうです。我々もそうした原点に戻って、地域のことをきちんとインフォメーションする必要があるのではないか。紙メディアの真骨頂というか、PCもスマートフォンも停電したら見ることが出来ませんが、チラシは大丈夫です。
そういう意味でも、地域の皆さんが知りたい情報を的確に伝えるメディアとして折込メディアを見直してもいいのかなと思います。奥さんが旦那を送り出した後にお茶でも飲んで、「今日の広告は何かな」と眺めるといった習慣は幅広く根付いています。もともと、そういう魅力があったわけですが、自然に伸びてきた業界なので改めて認識することもなく(笑)。今になって「やはりPRしなきゃいけなかったのか」と(笑)。魅力があったからこそ折込市場がこれだけの規模になったわけで、それをきちんと認識して、改めて折込というメディアの価値を生活者にも企業にもアピールしていかねばならないと思っています。
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本誌では、座談会のほか、折込作業の取材レポートや歴史的な資料から読み解く折込チラシの原点と変遷などを掲載しています。一部を電子ブックでもご紹介していますのでよろしければご覧ください。
『プリバリ印』2011年6月号
特集: 折込広告の底力!最も身近な紙メディアの魅力を再発見
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印刷物をつくる人・つかう人の虎の巻 『プリバリ印』