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Facebookを使って儲かるのか?を考える
~国内および海外の利用事例から学ぶソーシャルメディアの実態~
開催レポート
2011年6月2日に開催されたクロスメディア研究会セミナー「Facebookを使って儲かるのか?を考える」では、Facebookの何が凄いのか、今後の利活用の可能性とは、などを考察した。
講師は株式会社情報通信総合研究所の水野秀幸氏。
まずFacebookの基本情報であるが、Facebookは2011年6月現在、アクティブユーザ数は7億を超える世界最大のソーシャルネットワークである。会場で実際にFacebookに登録している人に挙手をお願いしたところ、ほとんどの人がFacebookに登録していることがわかった。しかし、毎日Facebookにアクセスする人となると、かなり少ない状況であった。
Facebookにおけるアクティブユーザ数は、MAUという呼び方で表現される。MAUはMonthly Active Usersであり、一ヶ月に一度でもアクセスしたユーザをカウントする。通常、他のWebサービスにおけるユーザ数とは、登録ベースで数えることが多い。Facebookにおけるユーザ数は強気の数字とも言える。この、一ヶ月に一度はアクセスするユーザが、実に世界で7億以上いるわけである。
Facebookは元々、ハーバード大限定のコミュニティとしてスタートし、少しずつターゲットを拡げ接続できる大学を増やしていった。広く一般から登録できるようにした後、2007年5月にプラットフォームをオープン化した。これは世界初のことで非常に話題になった。オープン化により、様々な企業がアプリを制作できるようになった。そして2008年12月頃にアプリが出揃ってきたことでユーザ数が急激に増加。2009年12月にはユーザ数が4億、2010年7月にはユーザ数が5億を超え、今もなおユーザ数は増えている。
現在、北米の50歳以下インターネットユーザの98%はFacebookユーザであり、北米のみならず英語圏の諸国、欧州主要国やアフリカ、南米などで最も利用されているSNSとなっている。
SNS利用者数の傾向として、勝ち組が勝ち続け、いったん抜かれた側は次第に伸びなくなるということがある。インドではそれまでOrkutがメジャーSNSだったが、Facebookが抜いた。ブラジルも現在はOrkutだが、これも伸び率からFacebookが有利との見方がある。日本はというと、ミクシィ、グリー、DeNAの3強状態であり、なおかつTwitterも盛んということもあって、他の国と異なる状況にある。
アメリカは1億5千万ユーザを誇っているが、現在はユーザ数が減っている。これは既に飽和状態であるということでもある。人口に対して50%にも到達すると飽和するということを示している。インドなどは、まだ人口に対して2%ほどのシェアに過ぎないが、それでもFacebookユーザ数ランキングでは5位につけている。このあたりは今後ますます増えることが予想される。
日本はユーザ数が340万ほどで、Facebookの全体から見るとまだまだ少ない。しかしユーザ増加率が10%ほどであり、前月比で10%も伸びている国は珍しく、今後は日本でもFacebookがメジャーSNSに近づく可能性がある。
ソーシャルゲームの盛り上がりも、ユーザ数増加の一端を担っている。ソーシャルゲームを利用する目的でFacebookなどのSNSへアクセスするユーザは全体の98%にのぼり、さらに40%のユーザは「2回に1回以上」がゲーム目的だという。
Facebookのゲームにおいて、一番MAUを獲得しているのは「CityVille」で、MAUは8,800万人である(2011年6月)。二番目は「FarmVille」であり、これも4,600万人を獲得している。これらはジンガ社開発のもので、いわゆる育成系のゲーム。日本のSNSでもお馴染みだが、都市の発展、農場の発展という目的のもと、自分の領地を開発していくゲームである。ゲーム自体はカジュアル系で実にシンプルかつ短時間で済むものだが、ユーザ同士の交流を絡めているところが肝である。
SNS上の友達が自分の領地を訪問し、育成の手伝いをしてくれる。そのお返しとして相手を訪問したりとコミュニケーションが生まれる。また、育成を効率的にするアイテムなどがデジタル販売されている。小額決済であることやコミュニケーションの糧としているこれらの課金も好調で、その資源がFacebook内に広告投下され、さらにユーザを獲得する循環となっている。
ゲーム内における「協力」「手伝う」「見栄」「プレゼント」などをコミュニケーションと絡めることで発展している。
Facebookは、「ヒト」や「モノ」の関係性を示す「ソーシャル・ウェブ」の構築を狙っている。
これまで、グーグルやヤフー!がやろうとしていたウェブは、無限に広がるネットワークに対して、階層化された紹介や検索によって情報提供を行った。ここにキーワード広告収入を絡めることで収益をあげた。しかし、Facebookはユーザ同士の関係性によるネットワークを構築し、友人関係(ソーシャルグラフ)がベースとしている。ユーザの趣味志向、行動履歴はFacebook上の行動から蓄積・分析され、そのユーザによりマッチした広告展開も可能となる。一番の特徴としては、これまでのWebでは掴むことのできない、そのユーザと他人との関わりを数値化して取り込むことができていることである。
「いいね!」ボタンを外部サイトに組み込めることで、Facebook外のユーザの志向もFacebook内に収集される。
「いいね!」ボタンについては、ソーシャル・ウェブ実現の鍵を握っているといえる。このボタンを自社サイトなどに設置する側としても、訪問ユーザがただページを見てるだけなのか、気に入ってくれているかのマーケティングデータが取得できる。しかも、手軽に設置でき、「いいね!」ボタンを押したことはそのユーザの友人に波及していく。この「いいね!」ボタンを採用しているサイトは250万以上に及んでいる。統計によれば、Facebookの平均的なユーザは130人の友人がいるという。あるユーザが「いいね!」を押したことにより、その友人130人に波及する。そしてその130人のなかでまた誰かが「いいね!」を押したら、さらに130人に波及していくというわけである。
「いいね!」ボタンを設置した企業サイトは、トラフィックが大幅に増加。中には2~5倍の導入効果があらわれることもあるという。
Facebookを企業がどのような目的で利用するのだろうか。それは4つの目的が挙げられる。
(1)販促プロモーション
(2)顧客サポート
(3)コラボレーション
(4)ブランディング
顧客サポートは、Twitterでも良く使われる手法である。コラボレーションというのは、新商品企画などに使われる。発売前にアンケートを取るなどのマーケティングにも活用される。
ブランディングについても、Facebookは親和性が高い。いわゆるその企業その商品のファンを作るということだが、「いいね!」ボタンは気軽に押せることや、友人から波及することで信頼性が増すこともある。いわゆるエンゲージメントを構築することは、「なんとなく気に入る」という行動の「いいね!」ボタンは効果的であると言える。
現在、さまざまな企業がFacebook上にサイトを作り(Facebookページ)、プロモーションを展開している。デジタルアイテムを配布してファンを獲得したり、多言語対応により世界にアピールしたりといった具合である。Facebookは日本語より圧倒的に英語圏ユーザが多いため、グローバルに販売したりブランディングしていく手段としては有効であろう。
Facebookを活用したいと考えている企業は、下記5つのポイントをおさえるべきだろう。
(1)更新頻度を高くすること
(2)「いいね!」ボタンを押してもらう仕掛けをつくる
(3)ユーザが投稿しやすい雰囲気をつくる
(4)アンケートやコンテストの実施
(5)他メディアの活用
更新頻度を高くすることで、訪問率があがり、結果的に他ユーザへの波及が進む。Facebookページの入り口で「いいね!」ボタンを押してもらう仕組みや、「いいね!」を押してくれたユーザに対する返事なども有効だろう。
TwitterやYoutube、Ustreamなどもあわせて活用することで、より波及が進み、ファンを獲得できることになる。
日本のユーザ数はまだこれからだが、上述したように増加率は非常に高い。ミクシィなどの日本の主要なSNSに迫ることも予想されるが、重要なのは単なる人気のあるWebサービスと捉えるのではなく、ソーシャルグラフそのものが体現されているということ、そして、現実のクチコミよりも波及にかかる時間とコストが少なく済むということであろう。