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試験のキーワードをワンポイント解説 第8回 画像修正(レタッチ)
画像修正は、印刷物上(もしくはその他のメディア)で画像が適正に再現されることを目的に行われる。標準データ(従来は標準原稿と呼ばれ適正露光されたポジ原稿を指し、見た目で十分な階調がある)であれば、適切なプロファイル変換で印刷用のデータとしてはそれなりに使用できる。一方、その画像データにクライアントが希望する仕上がり再現の意図があったり、適正な階調でない場合には、画像修正が必要となる。
■修正のいつ、どのように
画像データは撮影から始まる一連の工程で、印刷用に加工されていく。どの時点で階調修正の修正を行うかが重要で、できるだけ素材に近い段階で修正できることが望ましい。加工処理は、CMYKモードへの変換、諧調レンジ圧縮、拡大縮小、シャープネス、カラーマッチンング、スクリーニングなどが挙げられ、加工されるに従ってデータの再現情報は少なくなっていく。その結果として、印刷の直前での網点化されたデータでの画像修正はほとんどできなくとなってしまう(多少は修正は必要に応じて行うこともあるが)。
階調を調整することで、調子再現が十分でなかったところを強調したり、明るさを適正に調整したりすることができる。しかし、階調は限られたレンジしかないので過度な階調の修正を行うと他の部分の階調が失われてしまったり、全体にスムーズな階調再現されなかったりして、トーンジャンプの原因となる。特に印刷では、階調がかなり圧縮されているので少しの修正で大きく変化してしまう可能性が高い。ハイライト部とシャドウ部などの明るさの違いによってその修正も異なることも人間の眼の感度に関連する。明るい方で眼は敏感なので修正もそれなり注意が必要となる。
よくある画像修正の間違いを挙げみると、
・調子のないフラットな部分(言い換えれば、真っ白やベタ部分)で調子を求められることがあるが、階調を出すことは不可能である。
・色彩を修正する多くの場合は、クライアントの主観的な意図するもので、その指示や印刷を含めたより客観的な仕上がりの確認は重要となる。例えば、「肌を健康的に」「機械に重厚感を」「シズル感を出す」など主観的な指示では実際にどのように修正していいものなのかわからない。
・RGB画像で、「肌の赤みを増してほしい」の要求に「Rを増やす」と指示することがあるが、これは大きな間違いで、RGBは加色混合でRを増やすことはR光を強く(白っぽくなる)するところなので、異なった結果となってしまう。
■HDRとは?
人間の目でその画面(画像)を認識する場合、目は視野を合わせた場所での明るさを調整し続けながら画面の認識にする。そして意識の上での画面は、それらの各々の場所での複数の適正な明るさで認識したものを合わせて記憶、認識している。この記憶、認識にある画面を再現するのがHDR(high dynamic range imaging)にあたる。例えば、被写体の明暗の差が大きい場合、1つの適正露出でカメラ撮影では、ハイライト部が白く飛んで階調がなくなったりシャドウ部が潰れて階調がなくなったりする。つまり1回の撮影では問題文中にある白昼の海岸のようなコントラストの高い風景の階調全て再現するのが難しい。デジタルカメラのHDRの機能では、1回の撮影で露出を変えて複数回撮影し、合成することで白飛びや黒つぶれの少ない画像(HDR)を生成する。ちなみにiPhone 4(iOS 4.1)のカメラ機能には、HDR撮影の機能が搭載されており、露出オーバー(明るめの写真でシャドウ部の階調を強調撮)、適正、露出アンダー(暗めの写真でハイライト部の階調を残す)の3枚を連写し、瞬時に合成してダイナミックレンジが広い画像を合成している。つまり1回のシャッター音の中で3回連射して内部合成して写真(画像)を作成している。PhotoshopCS2でも、段階露出で撮影した画像を統合してHDR画像を作成する機能がある。こうした人間の画面の認識に近付けた自然な画像(従来の写真で比較すると違和感が感じられるかもしれないが)が、既に新しいデジタルカメラの中では行われている。こうした背景は、画像レタッチにも必ず要求されてくる。
【例題】画像レタッチ(露光アンダー、露光オーバー)
次の文の[ ]の中の正しいものを選びなさい。
適正な画像とは、「明るいところから暗いところまで十分な[1 : ①解像度 ②濃度 ③密度 ④階調レンジ]を持ち、画像の色相や彩度、輝度、コントラスト、カラーバランスなどが適切な画像」である。例えば、画像を印刷に利用する場合、「撮影→色モード変換・レタッチ→編集&リサイズ→(フィルム出力)→刷版作成→紙に印刷」という一連の工程で、利用可能な階調範囲は後工程にいくほど[2: ①拡大 ②適正化 ③圧縮 ④網点化]されていく。このことからも、入り口部分での画像の品質が重要であることがわかる。
画像の階調レンジを調整することで、ハイライト部は明るいニュートラルに、中間調は濁らず濃くならず、シャドウ部は暗く濃くなるが、細部は維持されるような画像処理を行うことが望まれる。
具体的な例として、白いウェディングドレスの画像は主に[3: ①キャッチライト ②ハイライト ③ソリッド ④シャドウ]に調子があり、黒い車の画像などは[4: ①キャッチライト ②ハイライト ③ソリッド ④シャドウ]に調子がある。これらは印刷で調子を失いやすいので、慎重に画像処理する必要がある。
明部も暗部も多く含まれている白昼の海岸風景のような画像は、一般にコントラストは[5: ①弱い ②最適 ③強い ④ない]。仕上がり画像のシャドウ側の調子を強調するには、中間調を[6: ①減らす ②シャドウとともに増やす ③ハイライトとともに増やす ④増やす]とよい。
写真原稿は適正露光で撮影することがもっとも大切である。撮影時に露光量が多すぎると
[7 : ①ハイコントラスト ②露光アンダー ③露光オーバー ④ローコントラスト]になり、全体の調子が[8: ①バランスよく ②明るく ③強く ④暗く]なる。極端な場合はハイライト側の濃淡変化がなくなる。それらの写真原稿は、Photoshopなどで調子を復元することは[9 : ①ほぼ可能 ②容易 ③難しいが可能 ④ほぼ不可能]である。
商業印刷物ではクライアントの望む色彩に仕上げることが重要である。すなわち、実物に忠実ではなく、適正な画像に仕上げるということでもなく、あくまでもクライアントが望む色彩になるように画像をレタッチするということである。人物の肌色や食肉の赤色などは、実物に忠実にデータを作成しても見栄えのする写真にならないことの方が多い。撮影者や編集側では自分達が描いている色のイメージがあり、印刷側もそれらを考慮して色を作り込む必要がある。このような場合、[10: ①共通的 ②主観的 ③妥協的 ④客観的]要素がかなり入り込んだ画像を作る必要がある。よって、表現力と訴求力を膨らますこのレタッチ処理は、画像補正とは異なるテクニックが必要である。具体例としてRGBレタッチの一例を挙げる。たとえば、肌モノで人物の赤みをあげたい場合、肌部の[11: ①R値を上げる ②G値を下げる ③B値を下げる ④R+G値を上げる]ことで赤みを増やすことができる。
また、画像の合成もレタッチの一つである。たとえば、従来現物を実写していたテレビCMも現在では[12 : ①クロマキー ②合成写真 ③精巧な模型 ④CG]で作られることが多く、今後このような作業が増えてくるであろう。これらの画像データをいかに印刷上で再現するかというのは、今後の新たな課題でもある。
解答
1:④ 2:③ 3:② 4:④ 5:③ 6:① 7:③ 8:② 9:④ 10:② 11:② 12:①