本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
東日本大震災後、生活そのものの見直しを含め、様々な価値観が転換してしまっている。印刷業界の価値観にしても、この辺で原点に返って見直してみるべき良い機会だ。
印刷業界ではクロスメディアが必要だといわれ、ブームになっては萎んでしまったという繰り返しを何度となく経験している。
同じようなことがデジタル印刷にも言えるわけで、上手くいったデジタル印刷ビジネスモデルがあるとそれに群がって、その挙句今までの御用聞き営業と同じ手法を取ってしまい、失敗するというパターンが多かった。
デジタル印刷機をオフセット印刷機と同等の価値観で考え、採算ライン500枚(これ以上だとオフセット印刷のコストが安い)などという発想からはデジタル印刷の成功は望めないだろう。
印刷業界の成功例を学ぶより、他業界がデジタル印刷を始めて成功している例を冷静に分析し、そこから何かを学び取った方が得策である。
少々宣伝臭くなって恐縮だが、今回JP2011で開催する「JAGATカンファレンスin JP」 の二日目「デジタル印刷DAY」の前半「デジタル印刷で成功する条件」 では、
* 対象:印刷会社の経営者、デジタル印刷サービスご担当者
* 目的:特徴あるデジタル印刷サービスで成功するためのヒントを得る
にフォーカスして、今までのトランザクションや、One to oneという考え方から脱却して、印刷業界以外の人間がデジタル印刷ビジネスをどう捉え、どう具現化するか?について徹底的に掘り下げる。
デジタル印刷サービスの成功に当たっては、デジタル印刷機など機材の選定・導入に加えて、デジタル印刷サービスの企画や社内の人材育成、パートナーとの提携など、様々な点を考慮することが必要になる。
本セッションでは、スピーカーにデジタル印刷サービス提供者(ネットスクウェア 浦上氏)を起用、印刷業界外の立場から議論し、デジタル印刷成功の条件を明らかにしたい。特徴あるデジタル印刷サービスで成功を目指す印刷会社の経営者、デジタル印刷サービスご担当者は必聴である。
ネットスクウェアでは採算ライン何百枚というオフセット印刷の代替え的なビジネスを諦め、徹底的にPODにこだわった内容になっている。
1.必要な時に
2.必要な枚数
3.必要な場所で
を突き詰めた結果として、現在のオフィス文書専門の印刷コンビニになっていった訳である。「必要な時に」を突き詰めれば出張中の途中で発注し、出張先で印刷物をピックアップし、プレゼンに臨むということだ。つまりネットスクウェアがやっているWeb受注と駅のコンビニ、キオスクデリバリーそのものがこれに当たる。
今、日本の中心が西に移動しつつある状況で、関西でPODというキーワードはかなりの重さを持ってくる。オフィス文書のPODが、この先西日本で需要が高まるのは容易に想像できる。
後半の「POD その場で出来る印刷・製本」 は、まさしくその場で印刷するということなのでPODの極致のようなものなのだが、三省堂の場合は絶版本をなくしたいという発想でエスプレッソマシン (自動印刷・製本マシン)を導入したということであった。
出版だから関西は関係ないということでは決してなく、東京で50冊、大阪で50冊というのは不可能な話ではない。「出版印刷も関西から」を実践するのは、この辺からやっていけば、関西の印刷会社が東京の出版社の仕事を受注するのも現実味を帯びた話である。
こんな話を中心に二日目の「デジタル印刷DAY」を考えているが、この二社のビジネスは一般企業のドキュメント関係を丸ごと抱え込んでしまうというアウトソーシングに非常に近い位置にいる。ネットスクウェア では、現実に大企業のドキュメント部門のアウトソーシングを引き受けている。
印刷会社のビジネス拡大、特にデジタル印刷の場合は、このようなビジネス展開は外せないと考える。印刷会社の仕事の中に、ドキュメント部門のアウトソーシングというビジネスは、よく似合う。またエスプレッソマシン の場合、印刷会社側がこのようなアウトソーシングビジネスを提案・運営するというのも悪くない。
(文責:郡司秀明)
■関連セミナー
●「デジタル印刷で成功する条件」
2011年5月13日(金) 13:00-14:30
ネットスクウェア株式会社 代表取締社長 浦上義久氏
●「POD その場で出来る印刷・製本」
2011年5月13日(金) 15:00-16:30
株式会社三省堂書店 企画室長 児玉好史氏