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印刷会社のWebサイトを見ると、会社概要と社長挨拶、事業案内程度のものがかなり多い。印刷会社は、Webサイトでどれだけのメッセージを伝えているのだろうか。
■印刷会社のWebサイトの現状
印刷会社のWebサイトを見ると、会社概要と社長挨拶、事業案内程度のものがかなり多い。また、設備一覧を掲載しているようなものも少なくない。
このような内容では、誰に向けたメッセージなのか、顧客に何を伝えたいのか、本当に考えて吟味したものなのか、疑問と言わざるを得ない。
また、最終の更新から数ヶ月、または1年以上過ぎているようでは、どれだけ見向きされていないかが、明白である。
現在、Webサイトは企業の顔でありメッセージであることは、疑いのない現実である。
顧客を始めとして企業活動に関わるほとんどすべての人が、Webサイトを閲覧している。その際、最新の情報や社会的に影響の大きなニュースへの対応が掲載されていなかったり、簡単な事業紹介だけでは、企業活動やメッセージが伝わることはあり得ないだろう。
■印刷通販サイトのユーザーサポートとメッセージ
印刷会社のネット戦略を考える上で参考になるのが、成長が著しい印刷通販である。
印刷通販のグラフィックが市場で受け入れられた要因として、次の点が挙げられる。
まず、DTPのテクニカル情報を公開した。一般コンシューマ向けに完全データの作成方法、起こりやすいトラブル情報を公開した。さらに、名刺やハガキなどIllustratorのデザインテンプレートを公開し、使ってもらった。
また、顧客が自分のモニターだけで色の確認を行うのではなく、自社作成の標準カラーチャートを配布した。Japan Colorベースで印刷の標準化を実現しているため、それを反映することで、品質に対する信頼を得ることができた。
「送料無料」や「年中無休・24時間サービス」は、通常のネットショッピングでは当たり前だが、印刷分野ではグラフィックが先行して始めたサービスである。
さらに、「マイページ方式」を導入した。これは、最初に会員登録してもらうことで、お客様の専用ページを用意し、そこから注文する方式である。注文履歴や進捗状況を見ることができ、請求書や納品書を自動発行する機能も備えている。
Web上の掲示板(BBS)を開設し、ユーザーの意見、問合せや感想を掲載している。
この中から印刷サービスのためのヒントを得たり、改善策として反映させている。このやりとりを見てグラフィックを利用されるというユーザーも少なくない。ブログやTwitterも活用している。
このように営業マンのいない印刷通販であるからこそ、ネットを通じて顧客に伝わるメッセージや品質・納期への信頼を重視していることが判る。
■期待される印刷会社のネット戦略
ネットを経由した印刷サービスは、不特定多数の顧客、未知の顧客に対して印刷サービスを提供するビジネスである。そのためには、頻繁な情報発信、サポート情報の公開、品質・納期などの明示化など、ネットならではの対処が重要となる。
それに対して通常の印刷ビジネスは、得意分野や地域に特化することで固定客を獲得し、継続的に印刷物を受注することで成り立ってきた。
しかし、今後はネット上でさまざまな情報発信をおこなうことで、品質・サポート力をアピールしたり、地域や社会への貢献を謳うことが、ますます重要となってくるのでないだろうか。
(JAGAT 研究調査部 千葉 弘幸)
■関連イベント : 2010年05月14日(土) 15:00-16:30