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月刊『プリバリ印』2月号では、特殊印刷を大特集!インタビューでは第一人者である冠文隆さんに、特殊印刷との出会いとかかわり、その現状と展望についてお伺いしました。
書籍のカバー、雑誌の表紙や付録、広告、食品や化粧品のパッケージなど、身近なところで特殊印刷は大活躍しています。そして、人々の夢が無限であるように、「あったらいいな!」「びっくりさせたい!」を実現する特殊印刷・加工の世界に終わりはありません。
※本文より
―― 入社から約7年後、技術部に異動されて、いよいよ冠さんと特殊印刷が出会うわけですね。
市谷事業部の技術部は基本的に工場の支援をします。例えば、新技術・新設備導入、得意先から依頼された技術テスト、紙とインキの基礎的な生産技術の問題、新製品開発などが主なテーマです。
当時は、インスタントラーメンの袋などのフレキシブルパッケージのグラビア印刷、フィルムや布などへの印刷が「特殊印刷」と呼ばれていました。その後、セロハンテープによる銀はがしや鉛筆でこすって出す印刷など、グラビア平台印刷による特殊印刷がコストも安く、多用されました。また、オフセット印刷によるアイロンプリントもよく見掛けましたが、綿素材には向かないという欠点がありました。雑誌の付録も盛んで、『主婦の友』には「ワンタッチ型紙」が付きました。これは、軟質インキを使ってオフセット輪転機で印刷した型紙で、とがったもので押すと布地に線が付くという便利な付録でした。
技術部では、先輩たちがそれぞれに得意な分野を研究していました。僕も先輩たちを見習いながら、自由に研究させてもらったのですが、そのうちに光る特殊印刷が面白いと思うようになりました。光を当てて蓄積しておくと、暗くすると光ります。ペーパーバッテリーを組み込み、LEDと音声モジュールを組み合わせ、「扉を開くと光と音の出るカード」を開発しました。それが、後にNTTに採用された「メロディー電報」「メロディーカード」の前身で、その時既に実用新案を取得していました。
「扉を開けると光と音が出るカード」は科学技術庁が選定した「注目発明105」に選ばれ、「メロディー電報」などは全国的なヒット商品となって数十億円の売り上げにつながりました。
また、そうした新商品の開発に大きく貢献したのが、オフセット輪転印刷機に連動しインラインで紙を折ったり、切ったり、貼ったりするインラインフィニッシングシステムという米国の機械でした。大日本印刷が1980年に日本で初めて導入したのですが、当時の製造本部長から「機械はお金を出せば買えるから、ライバル会社がまねすればすぐに追い付かれてしまう。しかし、ソフトは人間が考えるものだ」と言われ、僕が音頭を取って、白い紙を切ったり貼ったりしながら、先輩も同輩も一丸になって新商品の開発に明け暮れました。
そうして、綴じ込み式の小冊子、はがすと香りが出てくる広告など、様々なソフトを開発して実用新案を50件ほど取得しました。特に反響が大きかったのが香りです。香りが入っているカプセルにのりを混ぜゴムパットでくっ付けるのですが、インラインシステムですからあっという間に出来ます。香水の広告をある女性誌で300万部で始めると、各誌が追随しますから、8倍くらいのボリュームになります。それも実用新案を取得して僕らの独壇場になりました。
ただし、そうしたサンプル広告でもコスト的には結構厳しく、例えば1つ10円以下とかでした(笑)。また、パレットを3段積みにしますので、3トンの加重に耐えられるかといったテストもします。容器が壊れ液体が漏れてしまうと雑誌がダメになってしまいますから、これが一番重要なのです。
本誌では、特殊印刷との出会いとかかわり、魅力や最近の特殊印刷事情、今後の展望について6ページにわたるイインタビューを掲載しています。是非チェックください!
月刊『プリバリ印』2月号
特集:特殊印刷なう ビックリさせる!思わず手が出る!美しさに涙する!
■ プリバリインタビュー
冠 文隆〔かんむり・ふみたか〕大日本印刷株式会社
「君が特殊印刷の道を拓いてくれた」と言われたことが一番うれしい
■ 特集
【特別寄稿】
パッケージ制作における制約とチャレンジ
小澤充也 大日本印刷株式会社 包装事業部
【特殊印刷の現場を訪ねる①】
印刷の仕事がこの世からなくなることはない
◆日本文化精工株式会社
【特殊印刷の現場を訪ねる②】
手で触ってみた時のアピールの強さは圧倒的です
◆ツジカワ株式会社 東京デザインセンター
【特殊印刷の現場を訪ねる③】
体験すれば、もっと楽しい特殊印刷!
◆金羊社×オールライト工房企画「印刷のいろは」展 vol.2