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試験のキーワードをワンポイント解説 「第3回 ハイブリットワークフロー」
ハイブリッドとは、2つ以上の異質のものを組み合わせて一つの目的を達成するという意味があり、狭義の意味ではハイブリッドカーとして自動車の動力源を指すことに多く使われ認知されている。印刷機メーカーもUV硬化の仕様のコンセプトで使用している。
今回は、印刷物の出力のワークフローとしての意味を説明する。ここでは出力物の部数、種類(固定データ、可変データ)、納期などに応じてデータ出力を管理し、出力先の切り替えを簡便に行って出力機を選択して、効率よくオフセット印刷とデジタル印刷(POD)の組み合わせによる高付加価値印刷を目的したものをハイブリットワークフローとする。
オフセット印刷とデジタル印刷を効果的に運用する事例として、
・表紙の差し替えで、冊子の表紙をデジタル印刷を使用し個別またはグループ対象別に作成し、本文はオフセット印刷で同一の内容
・部分的な差し替え印刷(高付加価値として)で、オフセットで出力した印刷物(固定データ)に、デジタル印刷で店名、地図、特別価格、個別メッセージ、2次元コードなどの差し替えコンテンツ(可変データ)を追加印字する
・短納期の見本版をデジタル印刷で、その後オフセット印刷で本番を納品。同様に不足した小部数の追い刷りはデジタル印刷で納品(この必要部数のPODでの追い刷り納品はオンデマンド印刷のコンセプトにも通じ新しいビジネスモデルになる可能性がある)
・小部数はデジタル印刷、大部数はオフセット印刷
などが挙げられる。
■実際に実現するためには?
同じ出力物であれば各種出力機間の品質が同じで、同一の出力結果が求められる。出力データは同じシステム(RIP)で処理されることが好ましい。CTPでの運用と同様にフロー内のやり取りでも同一のRIPで、かなりRIP処理の進んだ状態のデータでのやり取りの運用や、各工程の情報交換にはJDFでのやり取りの構築が望ましい。おのおの出力機間の出力サイズが異なるので、どのような出力の仕様で面付けするのか、いつ面付けの処理を行うのかを考慮しなければならない。
さらに、出力機間での出力解像度が異なるので階調表現の方法が出力機間によって異なる。オフセット印刷では網点による階調表現であるが、POD機では連続調のデータを受け取り誤差拡散やディザ拡散などで出力時に階調表現を行うので、印刷物とは異なる階調表現がなされてしまう。例えば、印刷物上でのモアレの発生したものがPOD出力では起こらないことも想定しておかなければならない。
■ではカラーマッチングの精度は?
色に関しても、同じものが常に求められ、カラーマッチングが必要となる。複数での出力機間では、どの出力機に合わせるのか、何を基準の出力にするのか決めなければならない。広い色再現領域を基準にするのが理想ではあるが、すべての出力機が、その再現領域に対応できない。現在のPOD機の実力を考慮するならば、色再現領域はオフセット印刷機と同等もしくはそれ以上の色再現領域を十分備えているのでJapanColorなどの標準印刷を全体の色のターゲットにするのが妥当であろう。こうした色合わせもCMYK→CMYKの色変換になることがあり、場合によっては品質の劣化(不用意なトーンジャンプや不自然な色のつながりなど)が発生することがあるので留意しなければならない。
こうした色合わせには、RIP内で行うか別途CMS用の変換システムが必要となる。変換方法もICCプロファイルベース、ディバイスリンクプロファイル、独自の色変換テーブルで行われる。そのプロファイルの構築の精度がマッチング精度に反映される。POD機では、トナーの色材の色相、ハイライトやシャドウの調子再現カーブがオフセット印刷とは全く異なる。さらに総インキ量(トナー量)やベタ濃度もオフセット印刷とは異なるので、その色変換にはかなりのノウハウが必要であるとも言われている。
例題 ハイブリットワークフロー
工程の中で出力機の選択、出力機に応じたデータ仕様の変更では、入稿データには[1 : ①PS
②PDF ③JDF ④PPML]、各工程の情報交換には[2: ①CIP3 ②CIP4 ③JDF ④MIS]、可変出力データは[3: ①HTML ②XML ③SGML ④PPML]など、標準フォーマットが利用されることが一般的である。入稿データを一般的には多機能なRIPをメインとしたシステム内で、プリフライト、面付け設定、色変換、プルーフ出力などを、オフセット印刷機やデジタル印刷機の仕様・能力に応じていつでも変更できるような仕組みが必要になる。
出力物のロット数で出力機の使い分けを行う場合、部数の多いものはオフセット印刷機などの通常印刷機で、最小出力部数が1部から対応できる少ない部数はPOD(プリントオンデマンド)機で出力する。
例えば、クライアントから数ページのカタログの仕事を想定した場合、
○初版10,000部には、[4 : ①オフセット印刷 ②POD機 ③大判IJプリンタ ④デジタルサイネージ]
○面付け校正には、[5 : ①オフセット印刷 ②POD機 ③大判IJプリンタ ④デジタルサイネージ]
○頁校正/バラ校には、[6 : ①オフセット印刷 ②POD機 ③大判IJプリンタ ④デジタルサイネージ]
○追加発注200部には、[7: ①オフセット印刷 ②POD機 ③大判IJプリンタ ④デジタルサイネージ]
○特集頁の抜き刷り500部には、POD機
○広告頁のポスター出力には、CMS済みでの
[8: ①オフセット印刷 ②POD機 ③大判IJプリンタ ④デジタルサイネージ]
など、出力デバイスで対応して効率化が図れる。
可変情報の印刷への利用では、ダイレクトマーケティングでのパーソナライズされた宛名やクーポン券、入場券へのID 番号のナンバリング、バーコード、2次元コードなどの[9: ①可変データ ②固定データ ③2値データ ④多値データ]の宛名印字がある。さらに月次の請求者や利用明細書のドキュメントに取引情報とプロモーション広告を組み合わせて印刷する[10 : ①トランザクション ②プロモーション ③トランスプロモ ④トランスレーション]もある。こうした可変情報のある印刷物の作成では、パーソナライズされた可変データは[11 : ①通常印刷 ②デジタル印刷]を使用して、テンプレートやロゴなどの固定データを[12: ①通常印刷 ②デジタル印刷]でプレプリントした印刷物に追い刷りされることもある。
セレクティブバインディングでは、デジタル印刷機で可変情報出力された折丁と、オフセット印刷などで固定情報を印刷した折丁を一緒に製本して冊子したものができ、おのおの顧客の嗜好にあった個別のカタログを提供できる。
解答
1:② 2:③ 3:④ 4:① 5:③ 6:② 7:② 8:③ 9:① 10:③ 11:② 12:①