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試験のキーワードをワンポイント解説 「第2回 校正用途でのインクジェットプリンター」
印字方式の仕組みは?
汎用の大型インクジェットプリンター(~B0サイズ)は、主に校正用途で使用されている。そのカラーマッチング精度はよく話に挙げられるが、プリンター自体の印字方式はあまり話題に及ばない。インクジェットの印字方式は、メディアに直接接触せず、メディアへの加熱もないので非常に安定して出力できる。ヘッドからインクの微粒子を噴出して媒体に吹き付ける仕組みである。ヘッドの種類にはインク微粒子の噴出しの仕組みの違いで主にサーマル方式とピエゾ方式がある。それぞれ特徴はあるもののどちらも品質として特に校正用途では問題ないレベルになっている。その反面、ヘッドへの媒体の接触や、紙粉などでの目詰まりなどに、十分にメンテナンスなど注意を払わなければならない。
カラーマッチングの精度は?
インクは、大別して顔料系と染料系があり、染料系の色再現領域が顔料系より広いとされているが、経時変化による大きな色の変動があった。顔料の色の再現領域もかなり改善さており現在は顔料系のインクが主に使われている。何色インクであるのか?色再現領域はどれくらいあるのか?とよく問われるが、6色、8色、10色の多色のタイプがあるが、インクの色数が多ければ色再現領域も広くなるというわけではない。ライトシアンやライトマゼンタは、主にハイライトの淡い色の調子再現を向上するために用いられている。現行のほとんどの大型プリンターではJapancolorより十分広い色再現領域を持っており色校正の能力は十分に備わっている。しかしそれだけで十分に活用できるわけではなく、きちんとしたカラーマッチングのシステムが必要となる。カラーマッチングの良し悪しは、そのシステムの能力によって決定される。その仕組みにはICCプロファイルベースやメーカー独自の色変換テーブルを用いてマッチングが行われている。中には、ターゲットの印刷物のチャートと校正出力のインクジェットの出力チャートを測色してそれぞれのチャートの色差(⊿E)を自動演算で最小にするように追い込んで色変換テーブルを構築していくシステムもある。そのチャート内の平均⊿Eで2以下を実現できるマッチング精度の高いものもある。ただしカラーマッチングと同時に階調再現にも注意しなければならない。単にカラーマッチングだけを優先すると階調にトーンジャンプが発生してしまう可能性もあるので、十分注意しなければならない。出力可能なデータでは、連続調のデータや印刷出力と同じ1bitの網点データに対応しているものもある。ハイエンドのDDCP並みにより印刷物に近い諧調表現や細線文字の再現向上やモアレのシミュレーションをプリンター出力で対応できる。ただしプリンターの出力解像度が、刷版出力解像度同じではないので全く同じ結果が得られるわけではない。
専用用紙は?
印刷本紙が用紙として使用できれば問題ないのだが、ヘッドから噴出されたインク粒子は、メディアの上に付着し、表面にコーティングされた定着層に常温で浸透していくので専用用紙が必要となる。プリンターメーカーによってインクの組成が異なるので、同じ汎用のインクジェット専用紙であっても各々のプリンターによって、インクの総受容量・発色は異なる。そのため必ず印字確認することやカラーマッチングのテーブルの再構築が必要である。校正用途の専用用紙では、紙白や手触りの感触を重視する目的で印刷用本紙にコーティングしたものとか、コーティング層の地色を印刷用紙に合わせたりしている。また非常に微細なコーティングを施してインクの速乾性を向上したり、より多くのインクの受容総量にして広い色再現領域や安定した色再現を対応した用紙もある。
以上を踏まえた上でインクジェットプリンタ関連事項を下の設問で再確認してみよう。
例題 インクジェット
次の文の[ ]の中で正しいものを選びなさい。
インクジェット方式は、インクを細かいノズルから噴射して写真や文字などをプリントする方式である。電子写真方式による特有の現像・転写に起因する画像の不安定性もなく、[1:①高速化が可能である ②高精度化が可能である ③色の安定性が高い ④機構も非常にシンプルである]という大きな特長を持っている。これらの特徴に加え、インクはヘッドから1mm程度の距離を隔てて紙に付着するという非接触式プロセスであるため、インク粒子を[2:①まっすぐに飛ばすこと ②極微細にすること ③高圧力で処理すること ④高速で処理すること]ができれば、精度の高い画像を印刷できる。このように、画素の高密度化や印刷速度の向上、ワイドヘッドなどで新聞などの商業印刷分野にも活用範囲が広がってきた。
インクジェット方式は、大別するとオンデマンド方式とコンティニュアスに分けられる。オンデマンド方式は、さらに電気機械変換方式(ピエゾ型)と電気熱変換方式にはサーマルジェット型(バブルジェット型を含む)に分けられる。ピエゾ型は、電圧を変化させてピエゾ素子を[3:①変位 ②膨張 ③インク粒に付着 ④帯電]させ、ノズルから微小なインク滴を噴出させる方式である。電圧制御することでインク噴出量を比較的簡単に制御できるので、ピエゾ素子を何層にも重ねた積層型ピエゾヘッド方式を採用しているエプソンなどは、より精密な制御によりインク粒の大きさを制御させて[4:①濃度域 ②階調表現 ③印字速度 ④色域]を高めている。
サーマルジェット型は、ヒーターに通電すると瞬時に高熱となり、ヒーターに接した部分が核沸騰という沸騰現象を起こす。核沸騰により瞬時に発生した気泡がノズル近傍のインクを押すことで、インク滴となりノズルより吐出される。ノズルより吐出されるインク粒を制御することはできないが、[5:①高濃度 ②高速 ③高彩度 ④高解像度]印字を実現できるという特徴がある。インクが紙の中に浸透していく原理を利用しているので、印字品質はインクの物性と紙質にも依存されることになる。印字品質を問わなければ用紙の選択肢は少なくはないが、通常インクジェットプリンター用の用紙には、[6:①表面の平滑性を高める処理が施された ②表面の浸透度が高い ③表面にインク定着用のコーティング剤が施された ④表面に発色剤を施した]専用紙が必要になる。インクジェットを使用した色校正の機会も増えているが、この紙質を考慮したカラーマネジメント対策を行う必要がある。インクの素材は、大きく分けて染料系と顔料系がある。染料インクは、染料が溶剤内に[7:①不溶 ②溶解]しており、光沢を出しやすく、インクの安定性あるので発色が良く色の階調が再現しやすいため、色再現性が高いという特徴がある。一方、顔料インクは顔料が溶剤内に[8:①不溶 ②溶解]しており、光沢は出しにくいが、にじみが少なくキレの良い印刷が可能である。
<解答>
1:④ 2:① 3:① 4:② 5:④ 6:③ 7:② 8:①