本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
テキスト&グラフィックス研究会ではデジタル技術の「原点」「根源的なもの」を追求する。
まずCG(コンピュータグラフィックス)だが、テキスト&グラフィックス研究会ではCGを使った画像処理技術に本格的に取り組みたいと考えている。恐らく2、3年のうちにCGができないと画像処理ができるとは言えなくなるはずだ。現実問題としてCG画像から印刷を行うことが急速に増えているのは厳然たる事実なのだ。現在既に印刷会社に入稿されている写真原稿の多くはCGによるものが多いはずである。自動車などの工業製品はもとより、清涼飲料水や化粧品のパッケージはCGと考えたほうがよい。
「そんなバカな?」と思われる方もいると思うが、工業製品やパッケージ類の設計はほぼ100%CADが使用されている。そしてそのCADからCGを起こすのは、InDesignのネイティブファイルからPDFファイルを作るくらいに当たり前のことなのだ。もっと極端な例としてはPhotoshopのネイティブファイルからJPEGファイルを作るという感じだ。同じメーカーがCADソフトとCGソフトを作っているケースも珍しくないくらいなのだから、親和性は非常に高い。
カラーポジからスキャナでスキャニングしていたら、色が不安定で「ああでもないこうでもない」と時間はいくらあっても足りない。それがデジタルカメラになれば、格段に手数は減るはずであり、そういうデジタルカメラの威力を体感された方が印刷業界には少なくないと思うので、今更クドい説明は必要ないだろう。しかしデジタルカメラがCGになれば、クライアントの本当に欲しいアングルで、欲しい階調を自由自在にコントロールできるのだ。天候を待つことも、腕の良いカメラマンを探す手間も省けるのだ。耳を疑うかもしれないが、コストダウンのツールとしての最終兵器はCGなのである。
ハリウッドの現実が論より証拠だ。「ベン・ハー」時代は大型セットを作って撮影されたものが、「インディ・ジョーンズ」時代にはマッド画と言われる絵となり、そのほとんどがデジタル画像との合成で使用されていた。そして「マトリックス」以降はオールCGとなり、現在に至っているという具合だ。わざわざ「これはCGで作った」というのではなく、コストダウンの方法としてCGがごく普通に使用されているのである。
デジタルカメラは納期短縮やコストダウンにつながる有力なツールなのだが、デジタルカメラへの移行はデジタルカメラ推進者も予想していなかったくらいの驚くべきスピードで進んだのは皆さんも目にしたとおりである。しかし、そのデジタルカメラも過去の遺物になろうとしているのも、前述した印刷入稿としてのCG画像の台頭を見ればうなずけるだろう。しかし、すべてがCG画像になるわけではなく、化粧品のポスターなどでは有名女優の美しい姿はこれから先も続くのである(ご心配なく)。
そして最近レタッチャーと言われる職業が幅を利かせ出している。しかし、今までのレタッチャーとは似て非なるものであり、CGレタッチャーというべき人種なのである。こういう人たちに入稿する場合は写真原稿ではなく写真素材なわけだから「RAWデータ」が基本だ。調子や色はカメラマンではなくレタッチャーが決定するわけだから、現像前のデータで何ら問題ないということだ。
印刷業界ではRAWデータ信仰のようなものがあり、これで何でも片付くと思っている節がある。正直な話、RAW現像とはそんな生やさしいものではなく、事故につながる危険なものなのだ。従って今までJAGATでは「RAW入稿はしない」ことを鉄則としてきたが、色を決められるレタッチャーなら自由度の高いRAWデータのほうが理にかなっている。
つまりシャッターはカメラマンではなくレタッチャーが押すのであり(アングルだけはカメラマンが決める)、レタッチ作業の際に調子や色が決められるということなのだ。調子を整えるなどという製版的レタッチのようなお上品なものとは大違いで、小顔にするは、足は細くするは、CG的なイメージのレタッチを駆使する職業がレタッチャーである。原型をとどめないくらいに形も色も変えてしまうのが普通だ。
レタッチャーという商売、今の若者にとってデザイナーやカメラマンよりもあこがれの職業ということである。収入もそれに見合ったようなものが得られる。ということはあくまで蛇足である。
今までのことを整理してみる。CADからのCG画像入稿は色を正確に入稿するというよりも、設計図自体を印刷会社に入稿するということで、製品を作っている工場も設計図に従って作っているし、印刷会社も設計図に従って印刷しているということである。
対してレタッチャーは今までのカメラマンに代わって色に対する責任を一手に引き受けるものだが、正確に色再現しているかは2の次、3の次で、でき上がった画像だけを見て価値があれば十分という代物になる。設計図に沿うもの、絵のように描くものと来たので、次は正確に色をコピーするものということになるが、この中で一番現実性があって骨太なソリューションがスペクトル分布の形状自体を近似させる「分光色再現」である。これについての異論は少なく、コンセンサスが得られた色再現ソリューションでもある。
今まで「PAGE」でも、分光色再現には注目し続けてきた。具体的には6バンドカメラと6バンドCGカラーシステムである。理想的には9バンドが良いのだろうが、実現性を考えると6と9では大違いで、6のほうがハードルははるかに低い。例えば従来の多バンドカメラは複数回露光するか、複雑な光学系を必要としていたが、NTTデータが開発したシステムでは市販の一眼タイプのデジカメに特殊フィルタを装着することで2回露光にもかかわらず6バンドの分光画像を取り込むことを可能にしたのである。JAGATでは6バンドカメラの実機本体を持ち込み、実証実験を交えながらの公開デモ&実験などを複数回行ってきた。
また副次的に生まれてきたソリューションである多バンドCG画像システムも印刷業的には大変興味深いものである。従来のCG画像はデジカメ画像などと同様に色を3バンド(赤、緑、青)で表現するが、NTTデータが開発した「Color Designer」では、通常の倍の6バンドデータで色を表現することで、色の表現能力・計算精度の格段な向上を実現している。さらに画像を観察する際の照明光の色を考慮した信号処理を行うことで、目の前にある色見本・素材サンプルと同じ色の3DCGをモニタ上に忠実に再現することを可能にしたものである。このソフトも、セミナー会場に持ち込み、実際にデモを交えた講演を行ったりした。例えば、市販の蛍光灯もその分光特性は公開されており、その特性を踏まえることで「肌モノ」「肉」「野菜」などの既知の被写体なら分光特性は想像できる。このことだけでも色再現の問題、例えばメタメリズムなどを軽減することには役立つはずだ。
さて、「PAGE2007 」では分光色再現の紹介、「PAGE2008 」では分光入力による広色域印刷実験と続き、「PAGE2009」では医療現場とタイアップして胆管閉鎖症の病理判断に分光色再現と印刷技術を応用していく内容をドキュメンタリータッチで紹介していきたいと考えている。胆管閉鎖症というのは文字どおり胆管が生まれながらに詰まっていて胆汁が腸に届かない病気である(バイパス手術をしないと1年未満で生命の危険がある)。胆管閉鎖症の赤ん坊の便は白く、その症状の度合いによって便の色が異なっている。いち早く病気を見つけるためにお母さんたちが自分で便の色を判断できるカラーガイドを各自治体では配布しているのだが、そのカラーガイドの制作に分光システムを利用したということなのである。
カラーガイド化するためには、それぞれのサンプルをそのまま使用するよりも、一つのサンプルをレタッチして作ったほうが判断しやすくなるので、RGBのレタッチではなく、分光スペクトル自体を調整してレタッチする上記の「分光レタッチ」を使用したことが今回最も特筆すべきことである。分光撮影により、正確な色再現が得られ、メタメリズムの影響も排せ、この手の医療システムには極めて有効な手段なのである。テスト的なガイドが認められれば、広色域印刷でガイドを印刷する予定である。このプロジェクトが成功すれば母子手帳にカラーガイドを載せることも予定されているし、海外からも注目されている画期的なものだと言える。
drupa2008でも注目されたように、デジタル印刷分野におけるインクジェット技術は、生産性・コスト・品質・用紙適性などあらゆる面で技術革新の可能性があり、将来性の高い技術と言えるだろう。デジタル印刷におけるインクジェットの占める割合も、徐々に拡大していくことが考えられる。
最新のインクジェット技術について取り上げ、今後のブレークスルーは何か、今後の可能性を議論する。
チラシやカタログ制作では、下版まぎわに赤字修正が集中する場合が多い。校正業務は印刷会社と発注元の双方の負担となっており、万一の事故を防止する上でも、根本的な対策が望まれている。
インターネット越しに行うオンライン校正によって、時間や距離に制約される校正紙のやり取りを行わずに済む。また、修正指示の履歴が残り、発注者側で修正の最終確認ができるため「見落とし」や「事故」を防止することができ、校正業務の大幅な効率化を実現する。
デジタル化に唯一置き去りにされた校正業務を、どのようにデジタル化し、効率化を実現することができるか議論する。
次がXML利用だが、これもWebの協調路線と位置付けられるべきものだろう。
印刷物製作プロセスとWeb制作を融合する有力な手段の1つに、スタイルシートを利用する方法がある。Webの代表的なスタイルシート技術であるCSSにも、近い将来、日本語組版機能が搭載される見込みがある。そうなれば、Webと印刷のマルチユースのための技術として、広く普及することが考えられる。
このセッションでは、Web上で印刷物レベルの日本語組版を実現する方法と可能性について議論する。
テキスト&グラフィックス研究会