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iPadの利用シーンを分析する

掲載日: 2010年07月22日

アップルのタブレット型コンピューター「iPad」への注目度が相変わらず高い。本日は『プリバリ印』連載の【クロスメディア時代の出版印刷 池田 敬二 著】から一部をご紹介したい。

※以下、本文より抜粋

●新鮮な身体感覚
iPadは、Kindle同様に読書端末機であるような報道も見受けられる。しかし、iPadは読書もできるが、ゲーム、動画、ウェブも楽しめる汎用機である。ただ紙の本をデジタルに置き換えて表示するだけではなく、動画、音声、iPadを傾けることによってセンサーが引き起こすギミック(仕掛け)などは、全く新しい読書体験を感じさせる。本稿執筆時点では、入手できる電子書籍コンテンツは限られているが、電子絵本アプリケーション『Alice for the iPad』(不思議の国のアリス)は、iPadがもたらす新しい読書の可能性を垣間見せてくれる。無料のLite版でも十分に楽しめたが、あまりのエンターテインメント性に感動して1000円のフルバージョンも入手してみた。大人でも楽しめるようなギミックが随所に散りばめてある。3ページまで開いてウサギが登場する場面。大きく表示された文頭の「S」の文字に懐中時計がぶら下がっていてゆらゆら揺れている。反射的にiPadを揺らしてみたら、内蔵されているセンサーによって、絶妙にその動作に反応した。この身体感覚は新鮮であった。

〔後略〕

●iPadの利用シーンを分析する
iPadの特長として、ひとつには起動の速さが挙げられる。これはパソコンと比較した携帯電話の優位性でもあるが、スイッチを入れれば瞬時に立ち上がる。iPadは携帯電話とパソコンの中間に位置するデバイスという認識もある。確かに、パソコンを立ち上げるまでもないが、ちょっとだけ時間つぶしに楽しみたい、情報を入手したいというシーンに、ソファーに横たわってリラックスした状態で使われることが想定される。
就寝するまでのわずかな時間に、自分のお気に入りの趣味の世界に没頭したり、世の中の流れをキャッチアップするための情報を収集したり、明日の天気予報を確認するといった、リラックスした状態で楽しめるデバイスとして確固たる地位を占めると感じている。
そしてiPadが提供する情報なり、出版コンテンツなりが、人間の読書という行為をより刺激してくれることになるのではないかと思う。この連載で再三に渡って主張しているが、デジタルコンテンツの刺激を紙の本の需要につなげる訴求が可能である。新刊書籍のプロモーションとして無料でコンテンツをiPadで公開するという手法も、これからますます盛んになっていくであろう。雑誌についても、リッチメディアとして表現の次元が拡がり、また今まで買いたくても買う機会がなかった読者を新たに獲得できる可能性もある。バックナンバーの販売もロングテールビジネスとして大きな可能性を秘めている。
iPadに限らず、これから新たなデバイスが登場して表現技術が進化していっても、エンドユーザーの利用シーンを十分に分析し、顧客視点に立った試みであれば、人々に受け入れられるはずである。「顧客視点」こそが、この変動の波を乗り切る指針になる。

※※※


池田敬二[いけだ・けいじ] 
大日本印刷(株) 市谷事業部 ソリューション推進本部
1994年東京都立大学人文学部卒業後、大日本印刷に入社。入社以来、出版印刷の営業、企画部門を歴任。“混迷の時代こそ面白い”がモットー。趣味はジャズと空手。JAGAT認証クロスメディアエキスパート。日本電子出
版協会 クロスメディア委員会委員長。JPM認定プロモーショナルマーケター。

alice.gif
〔写真〕
Atomic Antelope『Alice for the iPad』 http://www.atomicantelope.com/
iPadを揺らすと、アリスの背が伸び縮みしたり、トランプがバラバラと降ってくる。原作のオリジナル挿絵を、見事に生き生きと動かしてみせる絵本。「ブレードランナー世代のためのデジタル版“ 飛び出す絵本”」というコピーが添えられている。


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