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試験のキーワードをワンポイント解説 「第1回 インクセーブ(インクセービング)」
インクセーブの仕組みとは?
インクセーブ(インクセービング)は、使用する総インク量を削減してコストを減らす目的とした仕組みである。高濃度インキ、高精細の網点を使用するといった方法があるが、製品として提供されているのが、色分解を利用してデータ自体の総網点%を減らすものがある(GCR)。簡単に説明するとCMY3色で表現されているグレー部分をK1色に置き換え、CMYKの網点%の総和を減らすものである。
グレーは無彩色であり色味がなく地味な色ではあるが、その再現は3色CMYのバランスを適正にとらないとすぐに色味が入ってしまう、なかなか再現の難しい色である。さらにその3色のグレーをk単色で等しい色に置き換えなければならない。その色変換の良しあしには、各社のノウハウが蓄積されており、製品の実力とも言えるのではないだろうか。色変換のテーブルの作成には、測色によって自動的に精度の高い色変換テーブルを構築するものもある。
実践するには何が必要?
データにGCRの変換をかけられるシステムが必要になるのだが、印刷現場でも標準印刷、印刷管理を常に行うことが必要となる。データを変えるので印刷条件を変えず常に一定した印刷環境が求められる。Japan colorのような標準印刷ターゲットを意識すべきで、正確なGCRの変換がされても、印刷が不安定だとそれだけでインクの使用量が変わってしまい、正確な色再現ができなくなる。コスト削減と同時に印刷品質の維持の考え方は、重要であり、インクセーブを行った結果にそのトレードオフに品質が落ちてしまったり、通常の印刷と異なったグレー再現をしてしまったりするのであれば何の意味もない。
削減量はどの程度?
では、どれぐらいのインクが削減できるのか?
概ね数%~20%前後と言われることが多いのだが、どうしてこんなに削減量の差が生じるのであろうか? いくつかの疑問がある。
インク削減量の差は、GCRを使用するグレー部分がどの程度あるのかに関わってくる。グレーが多ければインク削減量は大きくなり、一方、一次色や二次色の純色の部分が多ければ、Kへの置き換えはなく、その削減量は少ない。つまり仕事の選別も必要である。同時にGCRの変換量(強さ)を設定できるので、仕事によってうまく使い分ける必要がある。
どのようにその削減量は求められるのかについては、実際にきちんとした削減量を出すためには、インクセーブ(GCR)をかけた版とかけない版の2つ仕事を一定枚数印刷して、その間にそれぞれの消費されたインキ量を印刷機のインキの流量メーターの差から削減量を求めるといった大々的で実践的な方法が必要となる。一方、シミュレーションでは、GCRの有無のCMYKのそれぞれ分版されたの網点%総量の差を求めて削減率を算出する方法があり、実際の仕事では、削減量の確認のために利用されていることが多い。そういった削減量の算出機能を持つ製品もあるので有効に活用していきたい。
その他の効果は?
もともとインク総量を押えるところから考え出された仕組みなので、コスト削減とともに下記の例題中にもあるような効果が期待できる。印刷工程では、インキ乾燥時間が短縮されるので、印刷の高速化や裏移りの軽減などの効果が期待でき、さらに総インク量が減るので薄紙への可能性が広がる。品質面では、k色単色によるグレー再現が多くなるので安定したグレーバランスとシャドウ部分の階調再現の向上が挙げられる。反面、ロゼッタモアレ(4色の小点が重なって亀の甲のようにモアレ)の発生とか、シャドウ部のボリューム不足(階調再現の向上とは表裏一体のこと)が懸念されるので、仕事の内容あるいはその変換量(かけ方)は十分精査していかなければならない。
以上の基本概念を踏まえた上で出題された例題で再確認してみよう。
例題●グレーバランス
次の文の[ ]の中の正しいものを選びなさい。
印刷のグレーバランスは[1 : ①印刷機 ②印刷用紙 ③印刷インキ ④印刷オペレータのスキル]のほかにも、印刷用紙や印刷条件によっても異なる。RGBからCMYK変換を従来のスキャナのような変換ソフトを用いる場合は、印刷側のデータに基づいて、[2 : ①分解カーブ ②スクリーン角度 ③スクリーン線数 ④RIP]に留意しなければならない。ただしICCプロファイルによる変換の場合は、既にこのグレーバランスに関する部分が含まれて変換される。
一般的な日本のオフセットのCMY分解カーブ(網ポジ)の場合は、Y版M版の網点パーセントに対してC版の網点パーセントは中間部で[3 : ①10%ほど大きくする ②10%ほど小さくする ③±1%以内の差にする]。Bk版は、C=50%付近から網点を入れ、シャドウ部で[4 : ①30%前後 ②50%前後 ③75%前後 ④90%前後]の網点を入れる[5 : ①スケルトンブラック ②フルブラック ③ミドルブラック ④シャドウブラック]が一般的である。理論上の最大インキ総量は、原稿の黒部分ではCMYK合わせて400%近くになり、印刷ではインキの[6 : ①トラッピング ②ヒッキング ③ゴースト ④ダブり]が発生して印刷しづらくなる。たとえばJapan color2007coatedでは、総インキ量は[7 : ①320 ②350 ③380 ④400]%に規定されている。Japan colorweb coatedでは、総インキ量は[8 : ①320 ②350 ③380 ④400]%に規定されている。実際の印刷で総インキ量が400%に近いデータが入稿された場合は、[9 : ①GCR ②UCR ③UCA ④USM]の手法を用いて総インキ量を減らすことが有効である。
GCRは、CMY成分・CMYBk成分をBk成分に置き換えるもので、単色印刷用のように[10 : ①中間調 ②ハイライト ③シャドウ]側からBkの網点が入ってしまうが、通常ある一定の濃度の部分からBk成分に置きかえられるように調整されている。また印刷物の[11 : ①色に深みが出る ②シャドウ部分にボリューム感が不足する ③シャドウ部分にボリューム感が出る]が、[12 : ①グレーバランス ②色再現 ③彩度 ④グレー濃度]が向上する。そのためグレー部分に色浮きが出ては困る黒がメインの商品などの原稿に向いているが、粗いスクリーン線数で[13 : ①ハイライト ②中間 ③シャドウ]部分にロゼットモアレが発生する可能性がある。
GCRは、総インキ量が削減できるといったメリットから単純に[14 : ①インクセーブ ②色再現領域拡大 ③モアレ削減 ④細線再現向上]の目的で[15 : ①枚葉 ②輪転 ③多色 ④高濃度]印刷で使われることもある。このほかにも、トータルインキ量の削減によるインキ乾燥時間の短縮、印刷の高速化の実現、[16 : ①薄い紙 ②厚紙 ③ペットフィルム]への印刷の適正化、安定したグレーバランスを提供などの効果が期待できる。
解答 1:③ 2:① 3:① 4:③ 5:① 6:① 7:② 8:① 9:① 10:② 11:② 12:① 13:② 14:① 15:② 16:①