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新成長戦略を支える産業に ~JUMP2010のひとつの視点
印刷物は減少しても情報やコミュニケーションに関連した仕事が減少することはない。地域と連動した正確な情報は大きな宝であり、地元を再発見し、宝と感じてもらえる人に迅速に情報を運んであげることを地道に積み上げていく。その一端を担える印刷業界でありたい。
新内閣の誕生にともない内閣官房から『新成長戦略~「元気な日本」復活のシナリオ~』(平成22年6月18日)が発表された。失われた20年を払拭するには従来の延長ではなく「強い経済」、「強い財政」、「強い社会保障」を一体的に実現する第三の道による建て直しを目指すとしている。この第三の道へという発想は、過去の反省に立ってのことである。その反省とは、道路、港湾、空港といった公共事業中心の経済政策が一つであり、もう一つは、行き過ぎた市場原理主義に基づき、供給サイドに偏った生産性重視の経済政策であるとしている。
冒頭、「持続可能な財政・社会保障制度の構築や生活の安全網(セーフティネット)の充実を図ることが、雇用を創出するとともに、国民の将来不安を払拭し、経済成長の礎となる。セーフティネットの確立、経済活性化、財政健全化は一体の関係にあり、「強い経済」、「強い財政」、「強い社会保障」の確保が互いに好影響を与える「Win-Win」の関係にあると捉えるべきである」と述べている。先日、JAGAT大会にてデビッド・ブルナー氏の特別講演「21世紀の資本主義社会に向けて――ゼロ・サム・ゲームからの脱皮」 にも通じる思考である。
ただ、政治と経済は理念ではなく結果である。この「新成長戦略」をどのように実行していくか期待と同時にわれわれも時代の潮流をよみ実際のチャレンジをしなければ成果は生まれない。これからは、作戦と実行、経験の積み重ねが重要である。なぜなら誰も経験がない社会に突入しているからである。いままでの経験則では判断できないことばかりである。それにはできる範囲で多くの経験を積むことが成功への道である。ある人の言葉である。『情報収集力ではなく、できることをいくつ経験したかが企業の差となる』と。
さて、「強い経済」の実現として「新成長戦略」では、「グリーン・イノベーション」、「ライフ・イノベーション」、「アジア経済」、「観光・地域」を成長分野に掲げ、これらを支える基盤として「科学・技術・情報通信」、「雇用・人材」、「金融」に関する戦略を実施するとしている。以前から3Kによる成長戦略として、観光・健康・環境が成長分野として注目されていたが今回はそれをより強力に推進しようというものである。
観光といっても一昔前の風光明媚、物見遊山的観光だけでなく、伝統文化からポップカルチャーまで日本文化による地域起しや若者文化のイベント化、ビジネス化に始まり、朝の築地市場といった日常生活の観光化、そして生活と未来を学ぶ、エコツーリズム、グリーンツーリズム、産業遺産・芸術ツーリズム、健康管理のための医療ツーリズムなど新しい観光ビジネスが立ち上がろうとしている。これらを成功させるためには、観光情報のスムーズな流通が前提である。
IT化による情報インフラが整備され、観光の入口、移動、出口、記録、リピートといった情報がユビキタスでなければならない。ところが、観光立国・地域活性化戦略の推進という、国の目標は立派であるが、まだまだそれを実現するには多くの構造改革、整備が必要である。
たとえば、日本観光協会総合研究所内にある自動車旅行推進機構(カーたび機構)という会があり、多様な分野の企業が参集している。企業会員23社、団体会員11団体、公共機関20団体が加盟してクルマを利用した観光について実証実験をしながら新しいたびビジネスの研究をしている。外部から見ると「今更何を!」と思えなくもないが、中に入って聞いてみると意外な実態に驚くことが多い。
一般的に個人観光といえば、鉄道・飛行機、+タクシー・バスが基本で、観光情報はこれら交通機関とリンクして観光情報施設が設置され、コンテンツが流れている。それ自体に課題・問題がないわけではなく、改革も必要だが、クルマによる個人旅行となるとまったく観光情報がシステム化されていないのが実情であるようだ。しいて言うならば高速道路内であればそれなりの情報施設とコンテンツが準備されているが、インターで高速道路を降りたとたんに、カーナビオンリー状態となる。地元情報、イベント、本日のライブ情報はほとんど入ってこない。地元コンビニ、ガソリンスタンドもほとんどリンクしていない。
これからであれば、携帯、モバイル、増えるデジタルサイネージなどを活用することが考えられるが、誰がどのようにして、正確な情報を整理して発信していくのか、紙メディアと電子メディアのリンク、紙メディアの効率的な設置や配布方法など考えるべきこと、やるべきことが山積していると話してくれた。実はこのように成熟化したビジネスのように見えても少し違った視点で捉え直すと実は今がスタート地点であったり、アジアを含めた観光ビジネスを夢見ても「カーたび機構」のような地道な研究、実証実験の先にやっと具体的ビジネスが見えてくるものなのであろう。エンドユーザーと同じ目線で、クライアントとともに学び、行動する姿勢が必要である。
成長分野とはいっても従来とは違ったビジネススタイルであることは確かであり、それはまだ経験のない世界であるだけに、大きな火傷をしない程度の投資であれば果敢にチャレンジすることが金鉱脈発見への近道であろう。また情報、コミュニケーションが社会やビジネスのインフラとなった現代において、印刷物は減少しても情報やコミュニケーションに関連した仕事が減少することはないだろう。とくに、地域と連動した正確な情報は大きな宝であり、地元を再発見し、宝と感じてもらえる人に迅速に情報を運んであげることを地道に積み上げてこそ、観光立国が成立するのではないだろうか。その一端を担える印刷業界でありたいと思う。
このようなことを念頭に、JUMP2010 の各地域での企画を進めて行きたいと考えている。
(JUMP/杉山慶廣)




