本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
セキュアなアセット管理システムによって、パートナーや得意先を巻き込んだ素材データや進行情報の共有、オンライン校正も実現可能となる。
編集者やデザイナーと印刷会社がネットワーク上で連携しながら編集制作をおこなうことは、既に日常的となっている。しかし、大手企業ではセキュリティ面の理由でメール添付やサーバーへのアクセスを禁止し、そのためCDやDVDをやり取りしていることも多い。セキュアなアセット管理システムを導入することで、社内外のパートナーや得意先を巻き込んだ素材データや進行情報の共有、プロジェクト管理、オンライン校正も実現可能となる。
テキスト&グラフィックス研究会では、印刷会社におけるアセット管理と業務の効率化、クロスメディア展開について取り上げた。
■ActiveAssetsによるアセット管理
ActiveAssetsは、サーバーを使ったソリューションである。Webブラウザ経由で使用するため、いつでもどこでも、すぐ簡単に使える。簡単な操作性とインターフェースを重要視している。
必要なものはインターネットとパソコンだけである。MacでもWindowsでも使うことができる。ActiveAssetsでは、高解像度の大きなデータをスムーズに見ることができる機能が入っており、ストレスなく見ることができる。
ActiveAssetsの利用法は、第1に「オンラインのデータ送受信」、第2に「ファイルの一元管理」、第3が「オンライン校正」である。オンライン校正は、複数の人が同時にアクセスし、画面上で同じ内容を見ながら校正することができる。1つのファイルに対してコメントを書き込むため、誰が何を言っているのか、互いに確認することができる。赤字が反映されているかどうか、複数の関係者が確認することもできる。
ActiveAssetsは、ユーザーのサーバー上にシステムを構築する場合と、インターネット経由のASPサービスとして提供される場合がある。ASPの場合、ユーザーはWebブラウザからログインするだけで、セキュアなサーバーを利用することができる。システム部門のない企業でも導入できる。24時間有人で監視しているデータセンターにて、データを保管し、通信も暗号化されている。サーバー等のハードウエアを導入する必要がないため、初期投資を軽減することができる。
■通販事業とファイル一元管理
ある通販会社では、さまざまな形式のファイルを保存したいという要望があった。
画像だけでなく、アプリケーションデータ、音声やムービーなどのデータが何万点もあり、探すだけでも非常に大変である。データに管理情報(メタデータ)を付加することによって、簡単に検索できるようにしたいという要望があった。
ActiveAssetsを導入したことで、これらの課題を解決することができた。
通販事業では、製品の画像を印刷にもWebにも使う。従来は、どちらかの部門で制作したデータを、メディアで渡して使い回していた。しかし、他部門ではどこに何があるか把握できないため、撮影やデータ加工の作業が重複するなど、無駄が多かった。
現在は、すべてのデータが共通のサーバーに置いてあり、容易に検索できるため、クリエイター、Web制作会社、印刷会社などが同時にアクセスし、同時に使うことができる。
■チラシ制作におけるオンライン校正
印刷会社がActiveAssetsを導入し、チラシのオンライン校正を実現した例がある。
従来は、校正紙をクライアントの複数の担当者に配布し、赤字入れしてもらい、回収して1枚に転記する作業をしていた。校正紙をやり取りすると待ち時間も多く、時間も手間もかかっていた。チラシは、販売価格など印刷直前の修正が多く、限られた時間での校正は発注者と印刷会社の双方の負担になっていた。
オンライン校正をおこなうには、いくつかの課題があった。
チラシを発行する会社の校正担当者は、ITやソフトウエアに詳しくなく、操作の簡単なものでないと使えない。誰が何を指示したか、校正の履歴を残すことも必要である。インターネットのブラウザ越しにデータをやり取りするため、セキュリティが保障された環境でなければならない。
ActiveAssetsを導入することで、これらの課題を解決し、チラシのオンライン校正を実現することができた。関係者全員が1つのファイルを見るため、チェック漏れも起こらず、全体の進行状況を把握することもできる。赤字の履歴が残るため、ブラウザ上で赤字とその後の修正結果を確認することができる。
また、校正紙自体を減らすことができる。例えば、3回、4回校正紙を出していたものを、最初の3回はオンライン校正とし、最後の色校だけを校正紙とするということも可能である。色の確認以外の業務は、ブラウザ越しで済んでしまう。
校正紙のやり取りのための待ち時間が発生しない。インターネット環境さえあれば、自宅でも出張先でも校正や修正確認することができる。
近い将来、このようなオンライン校正が一般的におこなわれる時代となるだろう。
(この続きは、Jagat Info 2008.11月号、詳細はテキスト&グラフィックス研究会会報誌 Text & Graphics No.272に掲載しています)
2008年11月