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5月3日の朝日新聞GLOBEの見出しをご存知の方はいるだろうか。
いまや電子書籍云々はネットでも書籍でも花盛りで、本というのはすごく多様性のある世界なので、各自が自分の好き好きのことを言い出しても発散するばかりで、議論は噛み合っていかない傾向にあるのではないか。しかしながら朝日の「電子ブックは紙を超えるのか」という問題の立て方については、どう感じるだろうか? そもそも新たなビジネスというのは旧来のビジネスを超えるものでなければ、やる意味はない。
記事中には中国の例もいくつか採りあげているのだが、その中で、製紙メーカー、デバイス屋、温家宝の読書政策、方正など、なぜ、どのように紙のビジネスを超えようと考えているのかを明らかにしている。中国は従来情報統制の強い国で出版の多様化が進んでいなかったから伸び代が大きいことと、ちょうどこの10数年の開放政策がグローバルなIT化と重なったこともあって、率直にIT化の必然としてデジタルメディアや電子ブックがあると理解していることがわかる。
これと比べると日本の出版界はどうだろうか。リクルートなどの情報誌が登場したときに、あんなものは出版ではないと言った人たちがいた。今日の紙の情報誌の減衰は確かにあるものの、リクルートは収入の40%をネットから得るように変身したのである。つまり出版にかかわるところはどこも紙が減ったら会社が小さくなるだけ、ではなく転進をはかりつつある会社もいろいろある。例えば紙媒体でメインの仕事をしていても会員制とか購読制をとっている場合は、情報提供物の一部を電子化してコストダウンを図るとともに、それらを販促材料としてフリーミアム化すれば、一石二鳥になる。
他に国内の出版でも発展途上にある会社にとっては、中国と似た感じでデジタルメディアやフリーミアムによる販促などを最初から取り組むのが得策であると考え始めている。「作家」とみられている人であっても若いクリエーターは小説・映画・アニメ・ゲームなどのような多メディア展開を最初から構想して筋書きを考える人も増える。旧来の出版に代わることを担おうとするところは、いろんなところから出てこようとしている。フリーミアムは自分でできる最も有効な販促手段だ。ケータイがそうであったように読書端末の登場も自分でやってみたい人々を勇気付けるものとなるだろう。
電子出版の状況整理と無料経済の関係
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