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XMLを活用することでWebやデジタルメディアでのコンテンツ活用、Web to Print など、ビジネス環境のニーズに応えることができる。
出版や印刷の一部でXML を活用する動きが着実に進展している。DTP 制作の効率化だけでなく、Web やデジタルメディアでのコンテンツ活用、Web to Print など、ビジネス環境のニーズに応えることができる。データベース(DB)活用ビジネスについてサイバーテックの小野雅史氏に聞いた。
サイバーテックは、NeoCoreXMS というXML DB 製品とソリューションを提供している。XML DB はドキュメントやコンテンツに適しており、出版・印刷分野の導入事例やWeb to Print も多い。
従来は、カタログ・チラシ、マニュアル、出版物など制作を効率化する組版システムがほとんどであった。最近、そういう話は減ってしまった。エンドユーザーのビジネス環境が変わったためである。つまり、コンテンツはDTP だけでなく、Web など多メディアで使用する。公開する先はWeb サイトや電子書籍などさまざまであり、紙はその中の一部という状況である。紙はいらない、必要ないということではなく、まずは売り上げにつながるとか、顧客を囲い込むために、Web を活用したいということである。
IT 業界では、これまで顧客のニーズや課題が明確で予算が用意されており、それに対してソリューションを考えるというアプローチが多かった。現在は、顧客ニーズが必ずしも明確ではない。予算も取れていないため、大型の開発はあり得ない。DTP で分厚いカタログを制作し、Web でも部品を販売している中堅企業があった。ライバル企業がWeb サイトで売り上げを伸ばしているため、対策が必要になった。聞いてみると、カタログは年1 回しか改版していない。EC サイトに掲載している製品点数は、カタログの半分以下であった。
DB 構築と自動組版、Web とのマルチユースでは、制作フローの大幅変更と大きな費用が掛かる。
そこで、校了のDTP データから最低限必要な情報だけを抽出してDB 化し、EC サイトに渡す方法を提案した。安価に早くスタートできること、紙の制作フローを変更しないことが顧客のメリットなのである。
地域のフリーペーパーを発行しているタウンニュース社は、コンテンツのXML DB 化とWeb 配信、自動組版を実現した。システム化に際して、Webを活用した読者の囲い込み、広告収入増、制作環境改善という目的があった。
記事を入稿すると、裏側でXML になってDB に格納される。DTP の制作担当者が小組単位で記事の校正ができる。校了した記事データは、毎日定時にCMS に配信されるという仕組みである。
記事コンテンツは翌日のWeb掲載も、紙面発行に合わせた公開も可能である。結果的に、Web サイトのアクセス数や新しい広告出稿も増えたとのことである。
METAWORKS オンデマンドは、「月5 万円から始めるWeb to Print SaaS」という印刷会社向けサービスである。名刺、POP・チラシ、フリーペーパー、フォトアルバムなどを個別に受注するのではなく、Web to Print と自動組版を使って新しい顧客を開拓する。そのための仕組みをSaaS として提供したが、十分に受け入れられなかった。
理由は、この仕組みに合う案件がないことであった。Web to Print は、これからどのような形で普及していくのか。出版社やメーカー、通販などではDB を活用したコンテンツ再利用や、Web にもPrint にも展開するような方向に進んでいくのではないかと考えている。
(『JAGAT info』2012年12月号)