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プリント

ゼロベース印刷事業としてのオンデマンド印刷

掲載日: 2010年03月05日

印刷ボリュームの想定より前に、コミュニケーション効率を上げる業務フロー設計を。PAGE2010報告(8)

PAGE2010デジタル印刷デイの「オンデマンド印刷事例 」セッションでは、株式会社SEデザイン取締役社長の篠崎晃一氏が、IT系グローバルカンパニーのO社から2009年に受託してサービス提供が始まったコミュニケーションサービスを例に、ペーパーレスという明確な方針のもとで印刷がどうなったのかを話した。SEデザインは翔泳社の事業局が持株会社の子会社となったところで、外資系のIT企業からのコミュニケーションサービスの受託を専門としている。篠崎氏は仕事の中で印刷の比重が大きいので「印刷機をもっていない印刷業」のような例えをされたが、ここ数年オンデマンド印刷は変わりつつあって、質の異なる競争が始まり厳しさはあるがチャンスでもある。

従来は印刷の上にWebも含めてクリエイティブがあり、さらに上に情報管理の仕事がある。今までクリエイティブが多様になったので、そこで多様なソリューションを提示して仕事を集めることで、印刷関係者は代理店を抜いて直接クライアントに対してビジネスを広げた時代があった。しかしこれからは印刷とクリエイティブの総計もがシュリンクしていく。オンデマンド印刷はクリエイティブの部分を飛ばして情報管理からダイレクトに印刷することでコストダウンしてきたが、それではやはり下降になる。オンデマンド印刷は仕事をとるきっかけであって、情報管理とクリエイティブと印刷を組み合わせていくことで、全体をビジネスにもっていくことがこれから必要であるとの見解だった。

具体的にはクライアントからは「ペーパーレス」の方針が出たが、実質は紙をゼロにするというよりは、先に印刷ボリュームを設定した契約ではなく、必要性が明確な印刷物はその都度オンデマンドでもオフセットでも作成できるように提案しているので、印刷をゼロベースにしたコミュニケーションサービスともいえるだろう。提案内容はクライアントの開発者、プロダクトマネージャ、マーケティング担当から直接情報を集めてマーケティングコミュニケーションを支援するもので、クライアントのデータベースでアセット管理をして、そこからパワーポイント、オンデマンド印刷、オフセット印刷、Webなど販売促進用にいろんなアウトプットができ、販売促進のために最も効率的な情報を引き出せる管理体制をつくることであった。

これには5つほど要点があり、まず部材管理によって在庫を極端に縮小させこと。社内あるいはパートナーから誰もが情報検索・閲覧でき、新しいものを作る必要があるかないか、必要な組み合わせなどが判断できること。これらの業務がデジタルで管理され自動的に申請され処理され記録されるるので合理的なラインが見えてくること。最適な配送という流通も含めてアウトプットの最適な選択ができること。これによる営業機会の拡大・効果の向上が目標である。コストダウンだけを考えると苦しいが、本来の目的は、ある場所、あるイベントでこういう印刷物が欲しいということに応えられることであって、会社全部の情報発信がつながってこないと効果が出ないので、業務フローの改善として提案を行った。

業務フローを変えるということは、クライアントに対してこの部署の人はこちらに移った方がいいというような先方の人事的な要件まで含めないと、全体として有効な仕組みが作れない。これに関していろいろな要求が出て、それをまとめてシステムを開発し、社内のディレクションを決めた。要点は、クライアントの業態や規模、その業界特有の情報の配り方、個別情報の変化率(寿命)、量的にことなど、クライアントのビジネスから読み解くべきことがたくさんある。データベースができればよいのではなくフローの改善や最終的なソリューションをお互いが見つけることが課題である。また部分的なコスト削減では最終的な効果が得難く、ERPやCMSとどれだけ連携できるかも課題である。

一般のシステムの受託はこれをいつまでに完成させるというオペレーションになるが、この件では開発からデザイナ、コンサルなど専門特化したところをつなげ合わせてディレクションを任され、出来上がったモノを納品するところまでアウトソーシング体制をとった。コストの削減からスタートするのではなく、どれだけ総合的なサービスの提供に視点を変えられるかが鍵であるという。価格表を作って単品で受注するよりも年間通したら効果と効率がどうなるとコンサルティングして年間計画としての提案した。

逆説的であるが、脱印刷の全体の事業設計によって、印刷ボリュームはゼロベースでも、必要な時に必要な印刷ができる仕掛けで、しかもデリバリの最適化まで考慮することができるので、印刷の仕事がついてくる。このような新しい切り口のビジネスはいろいろなところに見受けられるようになってきた。篠崎氏もクライアントの業態把握が一番重要で、それをどれだけ深くつかめるかが、新しい事業開発・ソリューション開発の鍵であると締めくくった。