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人に近づくコミュニケーションメディア
PAGE2010のデジタル印刷DAY「バリアブルプリント」セッションでは、従来のバリアブルの概念を変えるような話し合いがもたれた。誰でも受け取ったことがあるような白黒の文字列の差込印刷や、ノベルティで自分の名前が絵の中に溶け込んでいるものなどが良く知られているが、バリアブルの制御技術は進んだものの、どのような目的のためにそれらを使ったらよいのかというところが見えにくかった。オンデマンド印刷の可能性として期待がされたOneToOneマーケティングは、理屈では時代に合っているようなのに、どこか欠落していたところが感じられていたのではないか。
バリアブルプリントなどの制御技術が先にありきで、DMにどう活かせるかよりも、まずできそうなことをやってみようという取り組みであったように思える。おそらくデジタル印刷が登場した頃のマーケティング論では、購買履歴、性別、年齢、職業、年収、地域などをベースにしたOneToOneマーケティングが考えられたが、実はこの程度の個人属性は対象となる個人をあらわすものではなくて、DMの対象を小分けする程度のセグメンテーションにしかすぎず、それなら通販カタログで行われている「セレクティブ」製本で対応できるもので十分である。
それを無理やりOneToOneにしても、DMなどをもらった方からすれば満足度の得られるものとはならず、どうしてもpush媒体であるDMではむしろミスマッチによる違和感とか、個人情報が勝手に処理されているということで心理的には逆効果にさえなることがある。同一のDMを送る考え方でOneToOneにするのは無神経過ぎたともいえ、カード会社のように情報をもっているところでも慎重になっていった。
富士ゼロックス・研究技術開発本部の小澤一志氏は、「顧客接点モデルをデザイン制作に活用する一つの考え方」というテーマで、今までマーケティングではあまり取り扱ってこなかった心理データをビジネスに取り込むために、人と媒体のインタラクションを研究している例を話された。今日の顧客とのコミュニケーションの問題として、客が多様化して常に変化しているのでレスポンスの予測がつきにくくなっていることが問題で、購買行動を起こす前提となる態度をどう探るかの試みである。
コミュニケーションメディアの側から考えると、コンテンツや表現に絶対的な価値があるのではなく、同じ内容でも相手の価値観によって評価は変わってくる。だから対象の個性に応じた受け止め方がされるように表現を変貌できるコミュニケーションメディアが必要になる。OneToOneが役に立たないという見方になるのは、このようなコミュニケーションメディアのコンセプトができていなかったからであろう。
ゼロックスの取り組みとして一般的な消費行動傾向の調査を基にした、消費者の心理的な心構えの分析と、そこからデザインへの展開の例が説明された。特定のサービスに関した評価や価値観を別にして、一般的な行動特性やパーソナリティは、情報への積極性、行動の積極性、購買意欲、依頼心、情報コスト寛容性、実用性重視などの因子で、だいたい説明できるという。ある人々についてこれらの傾向を捉えて、いくつかのクラスタに分け、例えば「しっかりもの型」「のんびり生活型」「自分らしさ重視型」「人並み無難型」などに類型化するとすると、これに対して配色ならイメージスケール分析への当てはめによって好感を持たれるであろうものを決める。
個々の顧客がどの類型に当てはまるのかを判別するにはいくつかの質問が必要で、これは会員登録とか何かのアンケート調査の際に行っておく。その結果から判別するツールなども用意されていて、DMをする際にクラスタわけして、それにあったデザインの紙面で出せるようにするものである。またデザイナに紙面の依頼する時も、客の心理を先に言葉であらわせるので、デザイナの勝手な解釈で作るのではなく、狙って落とし込むようなデザインができるという。
つまり人それぞれの価値観を捉えて対応するバリアブルプリントが可能になるのだが、応用はプリントに限らないし、また類型化するのにテキストマイニングとか(後で、もしもしホットラインの長谷川浩司氏から「会話マイニング」の話も出たのだが)、今ならソーシャルメディアでのセンチメント分析などいろいろなデータがダイナミックに使える時代になってきた。個人の価値観を捉えるのもアンケートでなくても、コールセンターもmailやtwitterもあるだろう。マーケティングがマスからパーソナルに変わる時代にリアルタイムなコミュニケーションのためにもう一度OneToOneが見直されるようになるのではないか。




