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オンラインとオフライン・ネットプリントを組み合わせてMyコミケというのが登場する可能性もあるのではないか?
いろんなデジタルメディアやネットメディアが登場して、人々がそれらを日常的に使うようになったのに、メディアビジネスで儲けているという話はそれほど聞かない。日本でも千万人単位の利用者がいるWebサイトやケータイサイトは広告収入があるのでビジネスが成立しているように見えても、もし有料化すると生き残れるかどうかわからないものが多い。確かに今でも有料化している例もあるが、どんなメリットを出すと情報の有料化が可能なのかは模索中である。
その点、紙のモデルはコストがかかっていることが誰の眼にもわかるだけに、一定料金の課金は行いやすい。しかし紙のメディアは多数の人に届ける方法に金がかかるので、中に含まれる情報以上に費用がかかってしまうのが弱点である。企業内ではWebをプリントして見る場合が増えていると思うが、プリンタがどんどんカラー化しているので、画面で見ているものをプリントした場合の価値は上がっている。
誰でも地図のようなレイヤーが重なった情報を色つきで見るのと、白黒で見るのでは、歴然とした差があることはわかるだろう。このことを良く考えると、カラーの画面は当たり前なのだから、プリントでもカラーを前提にデザインした方がわかり易いものになるはずだということに気がつく。一般に今後のプリンタの需要予測でも、あと数年もするとモノクロプリントよりもカラープリントの方が多くなるだろうといわれている。しかしそれは今の白黒文書のどこかに色をつければよいのではなく、カラー使用を前提にデザインしたものでないと価値はないだろう。
コンビニなどに置かれているカラーの複合機を使ったネットプリントというサービスがあって、利用者はコンビニまで出向かなければならないものの、PDFやjpegなどのハードコピーを買うことができる。これは利用者がプリント料金を払うので、例えばチケットを手に入れるのに何十円かかることになるが、チケットを配る側からすると郵送料がかからないので、その分だけ安く設定すれば利用の障害にはならないだろう。
問題はこのような利用習慣が広まるかどうかである。過去の郵便文化のイメージを変えられない人には抵抗があるかもしれないが、若くて郵便文化に浸っていない人とか、また若い人はパソコンをもたずにケータイやiPhoneだけで済ますようになっている人はプリンタも自宅に置かないので、ネットプリントの対象になる。年末にビッグサイトで行われるコミケのように1日に20万人も集まるイベントの情報などは、いろいろ整理してネットプリントで配っているものもある。
またマーケティング的にはPushとPullの違いがあって、DMはPushであるがネットプリントはPullというすみ分けになり、DMを送った後に資料請求などをコールセンターで受けるよりも、Webやケータイからネットプリントにしてもらって、使用者がPullにかかった負担分を後の購入時のインセンティブ(値引きとかポイント加算)にできると、コールセンター費用を軽減できる。
こういったPullの利用方法が生活者に浸透してくると、プリント実費ではなくコンテンツ課金も含めたメディアビジネスが発達してくるであろう。かつて銀行のATMは生活者の利用習慣ができるまでは無料であったのが、利用の確立以後は振込み料金を取るようになったのと似ているところがあるかもしれない。コミケに出展するような個人のクリエータにとっては、今はblogなどを使って作品を発表することが、コミケへの集客になったり、また仕事をもらうきっかけになったりする。しかしコミケは20万人が殺到しておちおち見て回れない状況なので、オンラインとオフライン・ネットプリントを組み合わせてMyコミケというのが登場する可能性もあるのではないか。
コミックマーケット77インフォメーション
りんかい線に臨時列車まで出るんだって!
ALPS協議会 2009.12