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※ネットで印刷物を発注する印刷通販ビジネスが、24時間受注や低価格、短納期を武器に急成長している。
昨今、ネットで印刷物を発注する印刷通販ビジネスが、24時間受注や低価格、短納期を武器に急成長している。印刷通販は、Web経由で原稿入稿をおこない印刷発注する仕組みであるWeb to Print技術を基盤にしている。テキスト&グラフィックス研究会では、株式会社吉田印刷所の笹川純一氏に、印刷サービスにおけるWeb to Printの役割について話を伺った。
■印刷通販サービスの展開
新潟県五泉市にある吉田印刷所では、2000年より「特売プレス」という名前で印刷通販サービスを開始した。
地元の景気も下降気味で、人的な接点に依存したルート営業だけでは限界を感じていたこと、インターネット環境が普及したことにより、印刷のネットショッピングサイトを開始した。
ネットでの受注により、地域だけでなく新潟県、あるいは全国から広域的な営業が可能になる。また、ネットの発注は、多くても10万円、20万円というような小口の仕事が多い。広く薄く受注することによって、リスク分散が可能となる。また、ネットであれば銀行振込や代引きという形の現金決済である。キャッシュフローが改善し、経営的に安定するというメリットがある。
印刷通販サービスに求められるものは何かというと、QCD、すなわち品質・コスト・納期の3点セットである。どの印刷会社も、この言葉で取り組んでいると思うが、印刷通販の場合、少し違うところがある。
クオリティに関しては、製造と対応の2つが大事である。印刷や製本加工の高品質な製品を製作するのは当たり前だが、毎回、依頼したものがしっかりと仕上ることが重要と考えている。一定の基準、安定した品質で出すということである。
また、印刷通販では顧客の顔が見えない。メールやFAX、電話しかないため、顧客の表情が見えない。それを前提とした対応が求められる。
コストと納期では、情報をオープンにすることが必要である。印刷通販では、Web上で納期やコストの情報を公開しており、顧客は予め、納期とコストを正確な情報を得た上で発注するのが印刷通販である。
吉田印刷所では、印刷通販サービスを行うに当たって、販売・印刷のルールを明確化した。「担当者によって対応が違う」ということでは、顧客から不信感を持たれてしまう。
さらに、顧客用のマニュアルを作成した。印刷通販は顧客と顔を合わせないため、それを前提とした資料作りが必要である。例えば、「PDF変換の手引き」を配布して、顧客にルールを理解してもらっている。
■Web編集システム
印刷通販は、データ入稿を前提としている。データ入稿では、顧客が自分のPC上でデータを作成することであり、ソフトウェアやフォントを購入し、操作することが要求される。また、出力に適さないデータを作成してしまうリスクがある。
Web上で印刷データを編集し入稿するシステムがあれば、ユーザー側ではWebブラウザの環境だけが必要で、ソフトウェアは不要となる。また、テンプレートを使用したデザインであれば制作も容易であり、データの安定性も確保できる。
そのため、吉田印刷所では2007年から一部の顧客に対し、Web上で印刷データを編集し入稿する「Web編集サービス」を提供している。サーバー側ではInDesign Server、ユーザー側はFlashを利用している。InDesign Serverを利用しているため、信頼性の高いPDFデータを出力できる。現在は、必要な機能やデザインテンプレート、より使いやすいインターフェースなどを検討しながら、改善を図っている段階である。
印刷業界においては、今後印刷物を発注する際に、Webの編集機能や発注機能を求めてくるユーザーが増え、Web to Printの重要度が高まってくる。
それにわれわれは対応していかなくてはいけないと感じている。
(テキスト&グラフィックス研究会)