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これからの技術・技能系人材育成~職業能力開発教育の現場から~

掲載日: 2008年10月22日

企業が求めるこれからの技術・技能系人材の教育・評価を、職能教育に取り組んでいる立場から講師の永田氏にまとめてもらった。

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職業能力開発総合大学校東京校 デザイン系 講師 永田友博 氏

IT化、自動化、あるいはコスト削減要求によってスキルレス化、非熟練化、非正規社員化が急速に進み、制作・DTP、印刷・製本現場での人材に要求される能力や役割・評価も大きな転換期に差し掛かっている。企業が求めるこれからの技術・技能系人材の教育・評価を、職能教育に取り組んでいる立場からまとめてもらった。

印刷・デザイン業界を目指す若年者の現状

入学時のコンピュータスキルは、インターネット、ワープロ、表計算などの一般的なツールを多少触ったことがある程度である。工芸高校や芸術コース、大学卒の学生は、専門的教育を受けてデジタルデザインツールを若干経験しているが、カリキュラム全体に美術・芸術志向が高く、アナログによる制作が大半を占めていて、商業的方向性による教育訓練は非常に少ないようだ。

デザイン系入学生は機械、電子、情報系列に比べ、コンピュータ基本スキルにかなりの差があり、学生自身も業界とコンピュータが深い関わりがあるという認識は薄いようで、毎年その傾向が強くなっている。デザイン戦略を立てるための調査にはインターネットが主に利用されているが、最近では携帯端末だけで行う学生が増加している。印刷データのネット入稿も身近なもので、Web入稿可能な業者を検索し、該当する業者から印刷見本などを取り寄せ、Web上で印刷・製本の仕様、部数、納品先の入力まで行っている学生もいる。

どのような職業訓練教育がなされているのか

職業訓練の中で技術・技能を習得するため、専門学科+専門実技による実学融合カリキュラムを行っている。民間の専門学校では、DTPコースなどの専門的コースを重点に行っているが、当校デザイン系では分野ごとによる縦割り的考えではなく、分野の垣根をなくし、アイデアをどのようにデザイン提案するかを重要視し、多面性の知識と技術をもった「総合的な教育訓練」を考えている。

「プロダクト分野」「グラフィック分野」の2つの分野を大きな柱・方向性としてカリキュラム内容を設定しているが、総合的スキルを習得するため両方の分野での専門実習・専門学科を学ぶことで、専門分野を限定して物事を捉えるのではなく、幅広く柔軟な考え方を養えるものと考えている。そして、技術的側面のみならず、「表現力やプレゼンテーション能力」「相手に考えを伝えるコミュニケーション能力」を重視している。

制作の基本となるオペレーティング能力は、既に職業訓練の中でも特別なものではなくなっている。これほどデジタル化が進んでいる中、そして何よりも業界では当然のように使われているツールなので使えなければ始まらない。自分が習得した技術から何が提案できるのか、そして何を経験し、それを職業にどのように生かせるかを、職業能力開発教育体系に組み込んでいる。

IT化されている今日のデザイン分野では、コンピュータスキルは必要不可欠である。リテラシーから、DTP、CG、CAD、Webなど各メディアに対する実習訓練にも力を入れ、アイデアを形にするために、クロスメディアでの考え方で展開している。一つのアイデアから複数のメディアに展開できる幅の広い視野とスキル、そして経験を重ねなければ見えてこない領域であり、これからの職業訓練にとって重要である。

クロスメディア対応を実施していく中、最初は「ペーパーメディア」に関する職業訓練で、IllustratorやPhotoshopが中心となる。卒業時には全員使えるようになっているが、実現場を体験するインターンシップ制度によって、実現場での緊張感やスピードを目の当たりにして、デザイン・印刷に関する仕事としての興味や関心、やる気などのモチベーションを高める。また、印刷会社の実務現場で働いている中堅の方に、印刷する際のデータ制作の注意点など、現場で積み上げたスキルやノウハウを講演してもらう。企業側にとっては人を育てていく・教えていく経験となり、学生側は実現場の話を聴講できることから、双方にメリットがあり、今後の人材教育に企業との連携は必要である。

デザイン系の若年者には、アーティスト志向もある。しかし、本来デザインとは、「多くの人が必要としているモノ」「感情に訴え掛け気持ちの良いモノ」や「心地の良いモノ」「利便性を感じられるモノ」そして「低価格であり安心なモノ」、最近では「エコのモノ」といろいろな側面を考えていかなければならない。

「デザインする」ことは「アート」とは違うことを知ってもらうために、企業とタッグを組み、「モノづくり教育」に賛同協力いただいている企業と商品開発を行っている。特に「デザイナーとしての立場」で考えを伝えることを体験できることが非常に重要となる。

今、付加価値とするものは何か

テクニカルスキルは、ある程度そのツールを習得する時間は掛かるが、使いこなし慣れれば熟練に近い領域まで達することができる。学生時代から使い続けているツールをそのまま使え、さらに業界でのより高度な専門知識を習得すると、それ以上の技術スキル向上は難しくなる。そこで、個々の技術・技能向上とは別に、ディレクション能力やプレゼンテーション能力が新たな付加価値となる。

ペーパーメディアでのデジタル処理をベースとし、アウトプットメディアに対応できるディレクション能力を身に着ければ、仕事の幅が広がる。さらに、企画・アイデアをまとめて、その必要性や考え方をアピールする表現力や、クライアントに魅力あるプレゼンテーションができる能力が必要とされる。

オリジナルアイデアを基にしたデザイン企画は、コンセプトから考え、提案を行わなければならない。そのためにはターゲットユーザーに対する情報収集や分析力が必要となり、必然的に物事をひもとき積み上げていく論理性が養われる。

在職者に向けた職業訓練の考え方

若年者に対する職業訓練では、既にクロスメディアへの対応と将来的に付加価値と考えられる内容を盛り込んでいる。しかし、在職者における職業訓練は、技術の進歩つまりデジタル化が加速したことで、従来型の職人による技術といったスキル価値が薄いものとなっている。むしろそれから先の能力開発をどうすればよいかが課題である。

高品質な印刷物を製品として納品することが印刷会社の基本業務となる以上、そしてテクニカルスキルがある水準まで到達している人材において、次の項目が、今最もカスタマイズされるべき事項ではないだろうか。

(1)企業のオリジナルコンテンツ・ソフトの企画開発を行うためのディレクションスキル
(2)クロスメディアに対応した表現スキル、およびプレゼンテーションスキル
(3)クライアントに目を向けるサービスの開拓
どのようなところで印刷が利用できるか、クライアント目線が今後必要となる。サービスとなる企画を思案し、展開していく、また若年者、高齢者に対応したユニバーサル的考え方・サービスを開拓しなければならない時期にきている。
(4)企業側の体制作り(技能継承)
企業内での中堅クラスの若い人材が、スキルも含め、企業が学生を受け入れるインターンシップ制度を担当するなどし、若い時から人材育成の機会を積み上げ、トータル的に人材の確保、技術の継承により技術の流失を食い止めていかなければならない。

次回「印刷会社の人材育成を考える会」勉強会開催
テーマ:「企画営業部門・クリエイティブ部門の人材評価・育成の考え方」
日時:2008年11月13日
16:00-18:00 (後懇親会含む)
講師:石山 晋 氏
(株式会社ルクルート 学びカンパニー営業2部 首都圏2グループ) 
参加:JAGAT会員、人事・教育担当、経営者
お問合わせ
TEL:03-3384-3112 /e-mail: このメールアドレスはスパムボットから保護されています。観覧するにはJavaScriptを有効にして下さい