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米国におけるデジタル印刷先行ユーザー調査(サマリー)

掲載日: 2009年07月17日

米国においてもデジタル印刷ビジネスのスタート当初はショートランの利用が主体であったが、商業印刷分野においてはいかに発注元に最大限のROI(費用対効果)を提供できるかが印刷会社の経営戦略にもなる。日本印刷産業連合会では先行事例調査として昨年11月の米国のユーザー8社を訪問調査した。

1990年代後半の印刷産業は労働集約型で非常に古い産業になっていた。そして経済環境の悪化によって1990年代後半から2000年にかけて、印刷業界で大きな再編や合併の波が起こった。当時は多くの経営者が古い世代の人たちであり、考え方も古かった。

この時期、企業の再編やITへの投資によって、より大きな利益を求めようとする動きによって、印刷産業も変化してきた。日本における現在の印刷環境の変化を、米国では10年以上前に経験しているということになる。
視察先では、従来のオフセット印刷の会社から投資をデジタル印刷に向けていたが、生産はほとんどアウトソースをしないで社内で一貫生産することによって、スピードとコストの効率も上げているケースも目立った。

一方で、発注元への提案では、広告代理店などとコラボレーションしている。いずれにしても、発注元が探しているもの(Wants)を提案していることと、紙やWebなどメディアのターゲットを決める。そのターゲットに向けた印刷物は高い生産性と低コストで生産できるような、独自性のある設備を整えることに力を入れている。

デジタル印刷では、ITネットワーク技術が提案力、独自性を支える大きな要素である。そのため、社内にIT部門を置くことは必須であり、教育・提携・M&Aなどあらゆる努力が払われている。具体的には次のような展開である。

(1)ロングランバリアブル(大ロットとバリアブルの両立)
固定データはオフセット印刷の生産性を生かす、そこにバリアブルデータをデジタル印刷で付け加えるというハイブリッド印刷は、「ロングランバリアブル」とも呼ばれていた。これによって量と付加価値の両方を得るように印刷物をデザインする。

冊子体のDMなら中身はオフセット印刷して表紙は顧客との関係性を得るためにバリアブルデータをデジタル印刷して、これらを製本する。セルフメール(DM)であれば、表側は顧客の住所とパーソナルURLと個別PRコンテンツをデジタル印刷して、裏側は固定データをオフセット印刷する。
このような方法によって、物的(量的)な生産性の低いデジタル印刷の部分は最小限に押さえ、高生産性のオフセット印刷で固定情報の部分を刷って組み合わせる。オフセットで量を稼ぎ、デジタルで価値を稼ぐ、大ロットと付加価値の両方を狙うのがロングランバリアブルである。

(2)小ロットを集めるWeb to Print
全ての訪問先で発注元に提案していたのが、小ロットを集めるWeb to Printである。特にB to B型で企業グループを対象にして受注の網を被せる「ハブ&スポーク型」(多数拠点)ビジネスは、Web to Printのカスタマイズによる囲い込みが、大きな収益源となっている。

B to B型のWeb to Printは発注元の営業マンなどが自分の顧客へのコメントを入力して送信すると、自動的に印刷会社から顧客にDMが発送されるなど、原稿作成と印刷発注を自動化する仕組みする。

(3)コンプライアンス支援
B to B型のWeb to Printでは、テンプレート以外は使えないなどの入力制限や、原稿内容がコンプライアンスに反したものでないかどうかのチェックを行うことで、発注元企業に対してWeb to Print、コンプライアンスへの支援機能も併せ持つことも提案されている。

(4)データ・ドリブン・プリント
原稿内容(データ)が更新される度に印刷するという流れを作り、プログラムで自動的に仕事が回るようにした継続性のある仕組みがデータ・ドリブン・プリントである。これによって、顧客のコンテンツデータを管理し、コントロールできるような提案ビジネスが可能となる。パーソナルURLによるOne to one DMからWebサイトへの誘因という、クロスメディア展開も可能となる。

(5)顧客データの開示
発注元が自社の顧客データを印刷会社に開示することを嫌がるのは、日本もアメリカでも同じである。しかし近年、米国では日本よりも一足先に従来型の大量配布型DMの費用対効果の低さを、マーケティング担当者が社内から厳しく問われている。特に経済環境が悪くなる中で、従来型キャンペーンで収益が上がらずに、首になる担当者まで出てくるような状況になってきたという。

そこで発注者も顧客情報を提供してキャンペーンを打って効果測定することを上層部から求められるようになってきた。こうした中で、個人データをもっと販促の活用しようという流れができあがってきた。効果測定ができない今までの大量配布型キャンペーン印刷物に対する効果への疑問から、個人データの開示が進んだということになる。このタイミングに合わせたダイレクトマーケティング提案を行ってきた印刷会社が功を奏している。

(6)提案型ビジネスのポイント
(1)営業マン
営業的には提案型になるので、中規模印刷企業では「デジタル印刷を提案できるチャンピオンを一人でよいから置き」、通常の営業マンに同行する。そのためのチャンピオンを育成するための専門教育には、ベンダーも協力している。

(2)訪問提案先
発注元の繋がりが大事であるが、デジタル印刷の効果の理解が得られるところに提案・提供する必要がある。しかし、顧客は通常の印刷会社を「コスト」を支払わなければならない所と見ている。ルーペなどを持ち出す発注元の総務や調達の担当者の関心事は「価格の安さ」だけなので、このような部署や担当者にいくら通ってもしょうがない。

発注元の経営者やマーケティング役員など上層部に営業提案に行く必要があり、販売部門やマーケット部門など、売り上げを追っている幹部や部門にアプローチしなければ、提案の効果が無い。
提案型ビジネスでは発注元が求めているのは「販促の効果」(ROI)で、これをきちんと提案提供していくことが必要である。提案内容が売り上げアップになることを示して営業展開を行なってく。

(3)広告代理店との関係
広告代理店でもITをからめたマーケティング提案力のあるところとはコラボレーションされている。

(4)ベンダーの側面支援
グローバル企業であるHPやXeroxが、ダイレクトマーケティングの必要性を他のグローバル企業に対して訴えるという側面援助も続けてくれていた。これによって米国では、一般企業に対して費用対効果の高いOne to one DM手法の啓発が進んできた。この側面援助とも言うべき効果が出てきたということができる。

このような状況の中で発注元に対して、印刷会社が上手にダイレクトマーケティング提案を行なうことによって、デジタル印刷機の利用範囲を、ショートラン利用から次の段階であるバリアブルデータ出力ビジネスへの転換を成功させはじめたことになる。

(5)その他
・DMは日本と違いアメリカは大きなボリュームがあった。この大きなボリュームに対してデジタル印刷が活用されている。日本のDMは米国に比べると少ない。ただし、米国の郵便システムは、冊子体や綴じていないチラシの束までも封筒無しでどんどん郵送してくれるという、郵便制度の違いがある。また、車社会で公共交通の利用が多くないため、その分、家庭へのDM発送が多くなることが想像できる。
・各社の経営姿勢で共通しているのは、発注元に対してこうしたい、そこをやるというのがきちんとできている点である。発注元の意見を非常によく聞くということで、発注元に入り込んでいろいろアイデアを出しているという印象がある。デジタルで成功するための重要な条件であることが分かった。
・drupaなどで発表された新しい技術を、どの会社でも消化して利用している。
・市場からの反応によって、戦略をかえてそこに向かって踏襲をしていくということで、「皆さんが来年きたら、また全然違う会社になっているかも知れない」という話はすばらしいなと思う。
・日本だと「どうしたら成功するのか」と考えていくが、米国では「成功するためにどうするか」を考えていくという違いを非常に感心した。
・成功するためにどうするかを考えている。最初に発注元のニーズをきちっと聞いて、市場調査をした後に、戦略を立てて、それに合うテクノロジーを探して最終的に投資をする。
・もちろんリスクは必ずあって、顧客ニーズに合わせて設備投資しても来年も本当にその仕事が来るかわからない。しかしその方向でうまく成功するように、自分たちもいろいろ技術をさらに磨いて、常に魅力的にいけるようにするのだという。
・ソリューションとして進めていくということは大切であるが、その中で各社どこに強みを持っていくのかというところは、それぞれ考えているし、使う設備も考えによって変わる。
・今回はビジネスモデル調査が目的であったが、やはり設備、技術も重要だなと思った。

(日本印刷産業連合会:平成20年版 デジタル印刷新時代のビジネスモデルとITネットワーク技術より)

関連情報:効果の高いDMを生み出すデジタル印刷手法

 

 


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